若手社員が「忘年会の幹事」を思わずやりたくなる、デキる上司のすごい戦略

12/4 17:02 配信

ダイヤモンド・オンライン

 リモートワークの導入などにより、働き方が多様化する中で近年、忘年会などの飲食を伴う懇親会は社内のコミュニケーションを活性化する有効な方法の一つです。そんな会を実施する上で欠かせない役割が、幹事です。若手を抜擢したいところですが、昨今は乗り気でない人も多いもの。上司として若手に気持ちよく幹事を引き受けてもらうには、どうすればいいのでしょうか。(ギックス共同創業者 田中耕比古)

● 忘年会シーズン到来! 若手に気持ちよく幹事をやってもらいたい…!

 忘年会シーズンがやってきました。

 コロナをきっかけに常態化したリモートワークによって対面の機会が減ったことで、社内コミュニケーションの悪化が問題視されています。そうした中で、完全リモートワークから週2出社に移行する企業や、リモートワーク完全廃止に踏み切った企業も出てきています。

 こうした状況で、忘年会に限らず、各種懇親会でインフォーマルなコミュニケーションを活性化したいと考えるのは、会社組織としては自然なことだと言えるでしょう。

 一方で、それなりの規模の人数を集めて、懇親会をセットするのは非常に大変です。また、そういう仕事は若手社員にやってもらいたい、と考える人も多いと思いますが、若手からすると、「普段の仕事に加えて面倒なことを押し付けられた」と感じてしまうリスクがあります。

 今回は、そうした若手に、“気持ちよく”幹事に取り組んでくれるためのコミュニケーションについてご紹介します。

● なぜ、みんな幹事をやりたがらないのか 幹事をやるメリットとは?

 そもそも、若手社員は、なぜ幹事をやりたがらないのでしょう。

 いや、若手に限らず、多くの人にとって、やりたくない仕事なのかもしれません。つまり、幹事というのは、「やらなくていい仕事」「面倒な仕事」と位置づけられがちなものなのです。

 このイメージを払拭しない限り、誰も積極的に幹事をしようとはしません。

 反対に、ノリノリで幹事をする人もいます。

 こういう人は

 ・お酒を飲むことが好き
・大勢でワイワイと盛り上がるのが好き
・学生時代から幹事を何度もやってきて、コツが分かっている

 というような特徴があります。

 ただ、そんな人も、全員が全員、人間としての性質が陽キャである・パリピである、ということでもないはずです。「仕事を円滑に回すために、その役割を演じている」ケースも多いのではないかと思います。

 こういう、積極的に幹事を引き受けている(ように見える)人のまねをしてみると、幹事という役割のポイントが見えてきます。

● 「幹事も悪くないな!」 と思わせる5つのステップ

 幹事をすることの意義や意味、そしてメリットを明確にすれば、幹事を引き受ける人は増えるはずです。また、その中に「若手社員ならではのメリット」「若手社員だけが享受できるメリット」があるならば、若手が引き受けるべき理由にもなります。

 そういう観点で幹事という役割を再解釈し、若手社員に伝えてみると、次のようになるでしょう。

 1.開催目的を明確にする

 最初に明確にすべきは、開催目的です。

 「要するに、酒好きが飲んで騒ぎたいだけだろ」と思っている人は、幹事を引き受けるどころか、参加さえもしたくないことでしょう。

 開催目的は、チームや部門の状況によって異なります。

 チームを立ち上げたばかり、ということであれば、チームビルディングをしっかり行う必要があります。そういう目的だと、あまり大人数で開催するのは好ましくないかもしれません。サブチーム単位での開催のほうが適しているのなら、チーム全体での会と、個々のサブチームの会の両方をセットするなどの工夫も必要そうです。

 複数の拠点に分かれているチームが、年に数回集まる場として設定するというのであれば、メールやチャットツールなどのテキストコミュニケーション、電話やウェブ会議などの音声コミュニケーションが中心の相手と、対面で話す貴重な機会です。また、そういうツールを介しているとプライベートな話をしにくいので、こういう場で「仲良くなる」ことはとても大事です。

 営業チーム、企画チームなどの、業務機能で束ねられたチームで忘年会を開催する場合は、活動の振り返りと、来年に向けた意識合わせやモチベーション向上が目的になるでしょう。「仕事のことは忘れて」とか「無礼講で」とかいう建前は置きつつも、MVPの表彰や、来年の抱負発表などが織り込まれるケースが多いと思います。

 こうした開催目的を明確にし、それを伝えれば、「遊びじゃなくて、仕事なんだな」「仕事において重要な会なんだな」ということを、認識してもらうことができるはずです。

 2. 幹事を引き受けることのメリットを伝える

 先ほどは、部門・チームとして得たい効果の話でした。今度は、幹事を引き受ける個人として、どんなメリットがあるのかというお話です。

 幹事をするということになると、いろんな人とコミュニケーションを取る必要が出てきます。

 一斉メールだとしても、若手社員から「忘年会のお知らせ」が飛んでくると、受け取った人は発信者の名前を認識します。人によっては「どういう人だろう?」と社内ポータルを確認したりもするかもしれません。

 また、普段会話しない部長や支店長などの「偉い人」にも、「乾杯のあいさつをお願いします」とか、「大変恐縮なのですが、割り勘費用を多めにご負担いただけませんでしょうか」のような連絡をすることになります。

 当日の現場の仕切りでは顔も見えますし、会費制であれば集金作業などの機会でコミュニケーションを取ることあるでしょう。

 こうした「いろんな人に接触する機会」は、組織が大きくなると、そうそうあるものではありません。周囲に名前と顔を覚えてもらうのは、会社で仕事を円滑にこなしていく上で、非常に重要なことです。特に若手にとっては「困ったときに助けてくれる確率」を上げる効果が見込めます。知っている人からの頼みをむげに断れる人は、そんなにいないんですよね。

 こうして得られる人間関係は、幹事という面倒な作業をやって得られる「対価」として、十分なものではないか、と伝えてみましょう(賛同は得られなくても、理解はしてもらえると思います)。

 3.制約事項を設定する

 相手が引き受けることに前向きになった際に、とても大切なのは「丸投げ」を避けることです。

 まず、最も大切なのが、制約事項を伝えることです。予算や場所、立地などに加えて、個室じゃないとダメとか、貸切じゃないとダメとか、そういった“縛り”を伝えましょう。

 また、それだけ言われても、幹事に不慣れな状態で、場合によっては、その地域のお店情報にもそんなに精通していない若手には手の打ちようがありませんから、過去の開催実績も伝える方が親切です。

 どういうお店で、いくらぐらいのコースでお願いしたといった情報があると、参考にしやすくなるでしょう(なお、「毎年、この店か、あの店でやっているよ」というようなシンプルな話であれば、幹事を引き受けるハードルもグッと下がります)。

 また、会費制なのか、会社負担なのか。会費制だとしても、上司が多めに払う傾斜配分型なのか、均等割りなのか。当日その場で割り勘すればいいのか、事前に会費を設定しないといけないのかなどについても、制約事項がある場合には伝えておいてあげるべきです。

 4.サポート役をアサインする

 上司であるあなた自身がサポート役を担当しても良いのですが、もし可能であれば、面倒見がよくて人当たりの柔らかい先輩社員をアサインしましょう。さらに欲を言えば、ここ数年以内に幹事を経験している人が望ましいです。

 先述した「制約事項」についても、サポート役がフォローすることで抜け漏れがなくなりますし、偉い人との事前調整なども、うまく手伝ってあげることができます。

 また、前年と同じ店にすると文句を言われるとか、一昨年の店はみんなの評判が悪かったとか、そういう「制約事項」には含まれていない、“隠れた縛り”を教えてくれる人の存在は非常にありがたいです。

 あるいは、「○○部長は、レモンサワーがないと不機嫌になる」とか、「■■主任は、普段、遠方にいるから当日のうちに会費を回収しておかないと、振り込みなどになって大変」とか、そういう一見どうでも良い割には、ミスると後で面倒くさいことに関するフォローアップも非常に役立ちます。転ばぬ先の杖、大切です。

 また、一緒に考えてくれる人が居ることは、会社に対する信頼感の醸成にもつながります。幹事に限らず、仕事を丸投げして放置するタイプの組織には、忠誠心の持ちようがありません。伴走してくれる人の存在は、得難いものなのです。

 5. 皆からの感謝を伝えて「主役」にする

 さて、最後の仕上げです。無事に忘年会が終わったところまで時間を進めましょう。

 締めのあいさつをその場にいる中で最も偉い人がするとか、誰かが一本締めの音頭を取るとか、そういうくだりがだいたいあると思います。

 これらが全て終わった際に、上司であるあなた、もしくは、サポート役の先輩がきっかけをつくって、幹事に対する感謝を伝える状況を作りましょう。

 「本日、幹事を務めてくれたAさん。ありがとう。非常に良い会になりました。感謝の気持ちを込めて、みなさんから、拍手をお願いします。」

 という感じでしょうか。

 そうすることで、幹事という裏方作業をしていた人を、表舞台の主役にすることができます。また、最後に名前を呼び、皆にその人を認識させることで、顔と名前を一致させる機会をつくることになります。

 ここまでやり切れば、幹事をアサインする、というあなたの仕事も無事に完了です。

 そんなに至れり尽くせりな状態にしないと、幹事を引き受けてもらえないのか、と思った方もいるでしょう。もちろん、世の中には、幹事が得意な人も大勢います。そういう人をピックアップして依頼すれば、こんなにまどろっこしいことは必要ありません。

 しかし、幹事のアサインを「若手社員が、社内・部内に顔と名前を覚えてもらう機会をセットアップする」という「上司の仕事」として捉えれば、こういう作業に苦手意識のある若手に対して全力のサポートをしながら、うまく仕事を全うしてもらうよう仕向けていくべきです。

 また、幹事のような、非常にウエットで、面倒な仕事をやり切ることには、達成感もあります。そして、うまくやり切ると周囲から「あいつ、仕事できるな」という風な評価を得られます。若手にとってはチャンスであるとも言えます。

 その一方で、本当に幹事に向いていない人、極力そういう仕事は避けたい人もいます。チームの若手がそういうタイプの人ばかりだ、という場合には、「幹事に向いている中堅社員」「過去に幹事経験が豊富な人」にお願いするようにしましょう。無理強いしても、お互いツラいだけですからね。

 ※そういうときにも、育成の観点では、「中堅幹事のサポート役」として、若手をアサインする選択も視野には入れておきたいところではあります(繰り返しますが、無理強いはやめましょう)。

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最終更新:12/4(水) 17:02

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