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新NISAで「S&P500とオルカン」一択はあまりに危険…投資のプロが「素人のパニック売りに備えよ」と警告する理由

4/4 16:17 配信

プレジデントオンライン

新NISAを始める場合、どの投資信託を選べばいいのか。なかのアセット代表の中野晴啓さんは「新NISA開始後、インデックス運用ブームが発生した。投資信託では『S&P500』と『オルカン』に人気が集中しているが、この一択に思想が偏っている人が多い現状は非常に危険である」という――。

 ※本稿は、中野晴啓『ほったらかし投資はやめなさい』(宝島社)の一部を再編集したものです。

■新NISAによってインデックス運用が大人気に

 2018年1月に「つみたてNISA」という制度が導入されたのを契機に、個人投資家の間でじわじわと浸透していったのがインデックス運用でした。

 市場の平均的な値動きを示す特定の指数に連動するインデックスファンドに、毎月定額の積み立て方式で資金を投じていくというものです。

 常に市場の平均的なパフォーマンスを享受できるというわかりやすさと堅実性から、インデックス運用で初めて投資にチャレンジする人も出てきました。もっとも、それでも裾野の広がりは限定的で、もともと投資に少なからず興味を示していた人たちが中心だったといえます。

 強烈なインデックス運用ブームが発生したのは、2024年1月に新NISAがスタートしてからです。

 それまで投資には無関心だった人たちも巻き込み、新NISAの「つみたて投資枠」を通じたインデックス運用が瞬く間に一般化しました。

■圧倒的人気は「S&P500」「オルカン」

 様々な指数に連動するインデックスファンドが存在していますが、圧倒的人気を獲得したのは、米国の主要な株価指数であるS&P500、グローバルな株式市場の全体的な推移を反映する全世界株式(オールカントリー=略称:オルカン)に連動するタイプです。

 これらの指数に連動するインデックスファンドは数多くの運用会社が設定・運用していますが、いずれも当然ながら同じような推移を示すコモディティ(汎用品)であるため、その中で最もコストである信託報酬(=投資信託の保有中にかかる手数料)が安い商品に人気が集中しています。確かにインデックス運用は、誰でも気軽に始めやすいものだといえるでしょう。

 初心者や投資経験の浅い人が最も悩むのは投資信託選びですが、市場全体に投資するインデックスファンドなら、どの指数にするのかを決めるだけで済みます。

 そして、選んだ指数に連動するファンドの中で最もコストが安いものにするのも、非常に合理的な判断でしょう。いずれもその指数に連動する運用実績なら、手数料負担による目減りが最も少ないものを選ぶのが正解です。

 S&P500とオルカンに人気が集中したことも、大いに納得できる話です。米国の株式市場は世界最大で各国から資金が流れ込んでおり、世界経済の成長にリンクした運用成果を期待できるオルカンも非常に理解しやすいでしょう。

 NISAの制度拡充を機に投資を始めた人たちにとって、S&P500やオルカンに連動するインデックスファンドの存在は、チャレンジのハードルを大きく下げてくれる効果があったといえるでしょう。

 さらに、ほったらかし投資が可能なことも、インデックスファンド人気に拍車をかけました。

 運用実績が特定の指数に連動するので運用状況を注視する必要もなく、自動引き落としで積み立て投資を続けながら、そのまま放置しておけることに魅力を感じた人も多く、「退屈だけど着実」という観点から、ほったらかし投資もブーム化しました。

■商品を理解してから投資を始めているか?

 投資に詳しい人やいち早くインデックスファンドへの積み立て投資を実践している人がブログや動画サイトなどを通じて盛んに情報発信したこともあって、S&P500やオルカンに連動するインデックスファンドは一気に人気化しました。

 これからは新NISAの「つみたて投資枠」で選ばれている投資信託で他のファンドを圧倒する支持を獲得していますが、それらの商品性をきちんと理解したうえで投資を始めたのかどうかが疑わしいケースも少なくない様子です。

 たとえば、金融機関の窓口を訪ねて、こんな話を持ちかける人がいるそうです。

 「ユーチューブで○○って人がイチオシしていたオルカンって、こちらで取り扱っていますか? 新NISAを始めるなら、オルカンの一択だって聞いたもので……」

 こうした発言をする人は自分自身で調べてみることもなく、他人の意見を鵜呑みにしてS&P500やオルカンに連動するインデックスファンドを選んでいる可能性が高いといえるでしょう。

■増えている「伝聞投資家」

 私はそういった人たちのことを「伝聞投資家」と呼んでいます。加えて、「伝聞投資家」の中には他人の見解をまるで自分の説であるかのように述べる「受け売り投資家」もいます。

 困ったことに「受け売り投資家」から別の「受け売り投資家」へと話が広まっていくうちに、あたかも伝言ゲームのように、最初の発信者の見解とは少しずつ齟齬(そご)が生じてしまうケースも考えられます。

 その結果、インデックス運用以外はすべて邪道であるかのように、かなり偏った論調が広まっている側面もあります。

 詳しくは本書の中で解説しますが、「アクティブ運用はインデックス運用に勝てない」説を唱えている人たちの中には、偏った方向からしか分析を行っていない(あるいは、単に他人からの受け売りにとどまっている)ケースが数多く見受けられます。

■「S&P500やオルカンなら大丈夫」と思い込んでいる人が多い

 新NISAによって急激に投資家層の裾野が広がり、投資信託という金融商品も身近な存在になりました。ただ、先に述べたように「伝聞投資家」が占める割合が高いのが実情で、私はその点が非常に気がかりです。

 「新NISAがスタートしたから投資を始めたほうがいい」と誰かに言われて、特に自分自身では勉強したり調べたりすることもせず、「それで何を選ぶのがいいの?」と聞き返したところ、S&P500やオルカンを勧められたというのが「伝聞投資家」に見られがちな行動パターンでしょう。

 こうして、「よくわからないけど、とにかくS&P500やオルカンがいいらしい」という人が増えていくのです。

 私が危惧しているのは、多くの「伝聞投資家」が曲解している可能性があることです。

 新NISAがスタートしてからどちらの指数もほぼ右肩上がりを描いてきました。言われるままに積み立て投資を始めてみると好調に推移していったことから、「S&P500やオルカンなら必ず上がる」と思い込んでしまった人が少なくないように思われます。

■偏った思考から「投資をやめるブーム」になる恐れ

 また、私は次のように考えた人のことも心配しています。

 「米国一択ではちょっと怖いし、世界全体に投資できるオルカンが無難だろう」

 世界の株式に投資するという触れ込みのオルカンですが、その国別配分比をチェックしてみると、実は米国は6割以上のウエートを占めています。

 新NISA元年の2024年は米国株の上昇トレンドが続いた一方で、インドやブラジル、中国といった新興国市場は決して好調ではありませんでした。

 つまり、オルカンの右肩上がりは米国株の上昇によって支えられてきたともいえるわけです。

 もしも先々で米国株が下降トレンドに転じたとしたら、S&P500とオルカンがともに右肩下がりで推移していく可能性が高まります。

 それが現実となった場合、「必ず上がる」と信じ切っていた人たちは、「話が違う!」と思うのではないでしょうか?

 そして、「伝聞投資家」からパニック売りが相次ぎ、今度は「投資をやめるブーム」が発生してしまいかねません。

 長年国が旗を振り続け、新NISAの導入によってようやく「貯蓄から投資へ」のシフトが進み始めたわけですが、その逆流の発生が懸念されます。



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中野 晴啓(なかの・はるひろ)
なかのアセット代表
1987年明治大学商学部卒業。セゾングループの金融子会社にて債券ポートフォリオを中心に資金運用業務に従事した後、2006年セゾン投信株式会社を設立。2007年4月代表取締役社長、2020年6月代表取締役会長CEOに就任。2023年6月セゾン投信を退任後、2023年9月1日なかのアセットマネジメントを設立。全国各地で講演やセミナーを行い、社会を元気にする活動とともに、積み立てによる資産形成を広く説き「つみたて王子」と呼ばれる。公益社団法人経済同友会幹事ほか、投資信託協会副会長、金融審議会市場ワーキング・グループ委員等を歴任。著書に『最新版 つみたてNISAはこの9本から選びなさい』(ダイヤモンド社)、『50歳からの新NISA活用法』(PHPビジネス新書)他多数。
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最終更新:4/4(金) 17:11

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