地方で相次ぐ再開発の「ダウンサイジング」、福島駅前でも計画変更に《楽待新聞》

4/17 11:00 配信

不動産投資の楽待

福島駅東口ロータリーに面する駅前一等地で「福島駅東口地区第一種市街地再開発事業」が行われている。

2月末時点で旧ビルの解体がほぼ完了し、今後建設が進められる段階だ。商業施設や公共施設、オフィスなどが入居する複合ビルを予定する。

とはいえ建築費高騰により従来案での計画実行は難しく、直近ではダウンサイジングした見直し案も出ている。テナント誘致にも難航しており、今後さらなる縮小化が進められるかもしれない。

本記事では再開発事業の現状や今後の可能性についてレポートする。

■福島駅周辺の様相

福島駅は東北新幹線・山形新幹線の停車駅であり、東京駅~福島間の所要時間は90分強、福島~仙台間は約30分である。

駅周辺については東口側が市街地となっており、その街並みはまさに地方都市の駅前といった様相だ。駅前には10階前後の中層ビルがいくつか並び、駅から離れると低層の雑居ビルが広がる。

ロータリーから道路を挟んだ目の前には街のシンボルとして10階建ての旧「辰巳屋ビル」があったが、今回の再開発事業で解体されている。

駅周辺の主な商業施設としては駅ビルの「S-PAL福島」がある他、東口から北へ400メートルの地点には「ダイユーエイトメートルAX」がある。

福島県庁は市街地から離れており、駅から南東へ直線距離で800メートル、阿武隈川沿いの場所に位置する。

一方、駅の西口は比較的閑散としている。

アパホテルやリッチモンドホテルなど宿泊施設がいくつかあるのみで、中層マンションや戸建てからなる住宅街が広がる。ロータリーの目の前には3階建てのイトーヨーカドーもあるが、5月6日に閉店する予定だ。

なお道路状況については、駅の南側に線路を陸橋がまたぐ形で県道70号線が通り、東口から東へ300メートルの位置には国道13号線が南北に走る。

■再開発事業の全容は

前述の通り、今回の「福島駅東口地区第一種市街地再開発事業」は東口の駅前すぐそばの場所で進められている。

西側はロータリーの目の前を通る福島飯坂線と、南側は平和通り(県道70号線)に面する地区だ。敷地面積は1万3580平米で、「辰巳屋ビル」とその東側の「平和ビル」の2棟を主とする計16棟が解体された。

今年2月末の時点で解体工事は98%完了している。10階建ての辰巳屋ビルには「ホテル辰巳屋」の他、百貨店「中合福島店」が入居し、7階建ての平和ビルには2017年まで中合福島店の2番館が入居していた。

当初の予定では地区の西側に地上12階建ての複合棟が建てられ、その東側については北側に7階建て・550台の駐車場、南側に13階建ての住宅棟が建てられる予定だった。

複合棟の低層階には商業施設が入り、中層階以上に会議室や大ホールなどの公共施設の他、オフィスやホテルが入るイメージ図が公開されている。

パース図では、駅に面するビルの西側だけが高層階に至るような構造となっている。108戸を予定する住居棟については、再開発事業に参画する野村不動産の分譲マンションができると思われる。

■建築費高騰で見直し

しかし複合棟については、物価高騰で事業費が増えてしまったため見直し案が出ている。今年2月2日にその概要が公開された。

従来案のままで進めた場合、2022年6月の事業計画認可時に見込んでいた事業費は492億円だったのに対し、工事費の拡大で615億円にまで拡大してしまうという。

昨年の段階で事業費の高騰が課題となっていたが、その際は資材変更等によって費用を抑え、新ビルの規模は変更しない計画を発表していた。しかし、それでは費用を抑えきれず、全体的な見直しに至った形だ。

見直し案ではA案とB案の2パターンが公開されているが、いずれも「分棟化」と「ダウンサイジング(縮小化)」が主なテーマである。

従来案の複合棟にはホテル・オフィス・商業施設・公共施設の4施設が入居しているが、これを「権利者棟」と「公共棟」に分ける計画だ。

駅側の権利者棟にホテル・オフィス・商業施設が入居し、公共棟にホールや会議室などの公共施設が入居する。

A案とB案は公共棟内のホールや事務所の位置が異なるのみで、規模を縮小することには変わりない。

見直し案では479億円まで膨らむと想定された工事費を290~410億円程度にまで抑えられるという。ちなみに、現時点で住宅棟の縮小は予定していない。

■さらなる縮小の可能性も?

その上で権利者棟(旧複合棟)のテナント誘致も難航しているようだ。

市はホテル事業者や商業事業者など100社にアプローチをしてきたが、キーとなる入居事業者が見つからないという。事業規模の縮小もこうした背景を反映してのことだろう。

市が公開しているように、福島駅周辺の商圏は縮小している。ホテル需要もコロナ禍以前の水準まで回復していない。

そもそも福島市の人口は2001年にピーク(約29万9000人)を記録して以降は減少が続き、現在は約28万人である。観光資源も豊かとは言えず、駅周辺の商圏が縮小している現状において事業者側のメリットは少ない。

近年、地方では物価上昇により再開発事業を当初案より縮小する動きが目立つ。

今回の福島駅東口の再開発事業においては、財政に加えテナント誘致という課題がある。最終的にはさらに規模を縮小した計画で再開発が進められるかもしれない。

なお、新ビルによる周辺不動産への影響だが、見直し案の場合でもその影響は小さいと言えるだろう。約100戸の住居棟は、その利便性から入居希望者で埋まりそうだ。

しかし、分棟となった複合棟に関しては商業施設の面積が当初案よりかなり縮小している。シティホテルが入居しても、当初期待されていたような賑わい機能を発揮することは難しいのかもしれない。

今後の再開発計画の動向に着目したい。

山口伸/楽待新聞編集部

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最終更新:4/17(水) 11:00

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