膨らみ続ける医療費「49.2兆円」に!75歳以上が全体の4割超「8月改正の高額療養費」上限引き上げと医療保険制度改革を解説
私たちの健康と暮らしを守る公的医療保険制度。実は先月、2026年(令和8年)8月より、ひと月の医療費の自己負担上限を定める「高額療養費制度」の仕組みが一部変更されました。皆さんはご自身の健康保険について、どのような見直しが行われているかご存知でしょうか。
今回は、厚生労働省の最新データをもとに、日本の医療費の現状をひもときながら、2026年8月に施行された高額療養費制度の変更点、そして今後の私たちの生活に直結する医療保険制度の改革について、初心者の方にもわかりやすく解説していきます。
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膨らみ続ける医療費「49.2兆円」に!伸び率プラス2.6%、受診日数減でも総額が増える理由
日本の公的医療保険制度のこれからを考える上で、医療費の全体像とその変動要因を知ることはとても大切です。厚生労働省が公表したデータによると、日本の医療費総額は依然として拡大する傾向にあります。
具体的な集計結果は以下のようになっています。
・概算医療費総額:49.2兆円(前年度より約1.3兆円の増加)
・医療費の伸び率:プラス2.6パーセント
・受診延日数の伸び率:マイナス0.7パーセント
・1日当たり医療費の伸び率:プラス3.3パーセント
この「医療費の伸び率プラス2.6パーセント」の内訳を少し詳しくみてみましょう。実は、人口増加の影響がマイナス0.5パーセント、高齢化の影響がプラス0.6パーセント、診療報酬改定(国が定める医療行為の値段の見直し)などの影響がマイナス0.39パーセントとなっています。一方で、医療技術の高度化や私たちの受診行動の変化など、それ以外の要因がプラス2.9パーセントと大きく押し上げる結果となりました。
ここで注目したいのは、病院にかかる日数(受診延日数)自体は減っているにもかかわらず、1日当たりの医療費が上昇しているため、全体の総額が大きく増えているという点です。つまり、単に病院に行く回数が増えたからではなく、より高度で新しい医療技術が使われるようになったことや、治療単価が上がっていることが医療費増大の大きな理由となっています。公的医療保険というみんなで支え合う制度を未来へ繋ぐためには、医療の費用対効果をしっかり評価していくことが欠かせません。
1人当たり医療費「75歳以上98.9万円、75歳未満26.1万円」75歳以上が全体の4割超
次に、私たちが加入している保険制度ごとの医療費の実態を見てみましょう。令和7年度のデータでは、年代や加入している制度によって、医療費にかかる金額に大きな違いがあることがわかります。
【表2-1 制度別の概算医療費と1人当たり医療費の推移をみる】
制度別の医療費構成と、加入者1人当たりの医療費は以下のようになっています。
・75歳以上(後期高齢者医療制度):20.3兆円(全体の41.3パーセント) / 1人当たり98.9万円
・75歳未満全体:26.5兆円(全体の53.9パーセント) / 1人当たり26.1万円
・被用者保険(会社員など・75歳未満):16.4兆円 / 1人当たり21.2万円
・国民健康保険(自営業者など・75歳未満):10.1兆円 / 1人当たり41.5万円
データを見ると、75歳以上の1人当たり医療費は、75歳未満の約3.8倍となっています。年齢を重ねれば病気やケガのリスクが高まるのは自然なことであり、医療費が増えるのは必然といえます。
また、75歳未満のなかでも、自営業の方や定年退職後の方などが多く加入する国民健康保険の1人当たり医療費は、会社員などが加入する被用者保険の約2倍となっています。少子高齢化という日本の構造的な背景により、現役世代への負担がどうしても大きくなっているのが現状です。制度の持続可能性を高めるため、世代を問わず助け合える仕組みづくりや、公平な負担のあり方が議論されています。
【2026年8月施行】高額療養費の何が変わった?3つのポイント
ここからは私たちの家計に直結する変更点です。先月、2026年8月から「高額療養費制度」が一部見直されました。
高額療養費制度とは、ひと月あたりの医療費の自己負担額が一定の金額(上限額)を超えた場合、その超えた分が払い戻される家計の強い味方となる制度です。今回の見直しには、大きく分けて3つのポイントがあります。
●ポイント1:ひと月あたりの「自己負担上限額」が引き上げへ
医療費全体の伸びなどに合わせて、月ごとの負担上限額が引き上げられました。
たとえば、70歳以上で年収約260万円から約370万円(標準報酬月額20万円から26万円)の方の場合、8月からは以下のように変わっています。
・通常の上限額:これまでの5万7600円から「6万1500円」に引き上げ
・外来特例(通院のみの場合の上限):これまでの1万8000円から「2万2000円」に引き上げ
●ポイント2:長期療養者の味方となる新たな安心「年間上限」がスタート
月額の負担が引き上がる一方で、長期にわたって治療を続ける方の負担を軽くするための「年間上限」という仕組みが新たに始まりました。対象期間は毎年8月から翌年7月の1年間です。
月ごとの自己負担額が積み上がり、決められた「年間上限額」に達した場合は、それ以上支払う必要がなくなるという仕組みです。先ほどの70歳以上の方の場合、この年間上限は53万円に設定されています。
●ポイント3:長期治療を支える「多数回該当」の金額はそのまま維持
過去12か月間で、3か月以上高額療養費の対象となった場合、4か月目以降はさらに上限額が下がる「多数回該当(たすうかいがいとう)」という仕組みがあります。この多数回該当の上限額については、これまで通り引き上げられずに据え置きとなっており、重い病気などで長く治療が必要な方への配慮がされています。
【令和8年成立】暮らしが変わる医療保険制度の改革
さらに、令和8年5月に成立した法律案では、高額療養費の見直し以外にも、私たちの生活に影響する4つの大きな変更が予定されています。
●OTC類似薬の薬剤給付の見直し(公布後1年以内)
ドラッグストアなどで買える市販薬で代用できる一部のお薬(ビタミン剤やうがい薬など)について、病院で処方してもらう際の保険適用は維持されますが、お薬代の4分の1相当が窓口での追加負担となります。ただし、こどもや難病の患者さんなどへの特例措置も検討されています。
●後期高齢者医療における金融所得の公平な反映(公布後5年以内)
これまで、窓口での負担割合を決める際、株の配当金などの金融所得は反映されにくい仕組みでした。この不公平をなくすため、上場株式の配当などの金融所得も負担割合の判定にしっかり反映されるようになります。個人の手続き負担が増えることはありません。
●妊娠・出産に対する支援の強化(公布後2年以内)
出産にかかる標準的な費用を、医療保険から病院などの施設へ直接支払う仕組み(現物給付化)が導入されます。これにより、退院時に窓口で多額の現金を立て替える負担が減ります。
●子育て世帯の保険料負担軽減(令和9年4月1日より)
国民健康保険において、こどもにかかる保険料(均等割)を半額にする軽減措置があります。これまでは「未就学児」までが対象でしたが、この対象が大きく広がり「高校生年代まで」となります。
まとめにかえて
今回は、膨らみ続ける医療費の現状と、2026年8月に施行された高額療養費制度の変更点、そして今後の医療保険制度の改革について解説しました。
ひと月あたりの自己負担上限額が引き上げられた一方で、長期療養者を守る「年間上限」が新設されるなど、制度は時代に合わせて変化を続けています。
公的制度の変更点を正しく理解することは、家計防衛の第一歩です。ご自身の生活防衛資金(いざという時のための貯蓄)や加入している民間の医療保険のバランスを、この機会にぜひ見直してみてください。
参考資料
・厚生労働省「令和7年度 医療費の動向 ~概算医療費の集計結果~」
・厚生労働省「令和7年度 医療費の動向」を公表します~概算医療費の年度集計結果~」
・厚生労働省「高額療養費の見直しについて」
・厚生労働省「高額療養費の年間上限の新設」
・厚生労働省「医療保険制度改正法が成立しました」
菅原 美優
最終更新:




