ロンドンのバンカー、ニューヨーク型の高額ボーナスに近づく

4/22 22:02 配信

Bloomberg

(ブルームバーグ): ロンドンのトップバンカーたちが、ニューヨークの同業者のような高額ボーナスを受け取る日も近いかもしれない。

英当局がバンカーのボーナスを基本給の2倍までに制限していた上限を撤廃してから半年が経過した。現在、国内最大手の金融機関の多くが、優秀な投資銀行バンカーやトレーダーの報酬体系を見直せるよう、内規を書き換える許可を株主に求めている。

HSBCホールディングスとバークレイズが数週間以内に開催する年次株主総会では、この問題に関する議案が討議される予定だ。委任状アドバイザー大手のインスティテューショナル・シェアホルダー・サービシズ(ISS)とグラス・ルイスは投資家に対して両行の提案を承認するよう推奨しており、議案は可決される可能性が高いとみられる。

可決されれば、ロンドンの金融業界の経営陣は、トレーダーや投資銀行バンカーのボーナスを見直すプロセスに入ることができる。ニューヨークなどでは、これらのボーナスは数百万ドルに上り、年間基本給の何倍にもなる。ウォール街の人々は、エリート私立学校、豪華な別荘、プライベートクラブの費用を賄うために、支給の数カ月前からボーナスについて胸算用をする。

英国のボーナス上限廃止で影響を受けるのは、同国の銀行だけではない。JPモルガン・チェースやゴールドマン・サックス・グループなどの米銀も、ロンドン在勤者の報酬方針を見直そうとしている。

法律事務所フィールドフィッシャーズで雇用、年金、移民、コンプライアンス(企業統治)関連業務を率いるランジット・ディンドサ氏は、「次の賃金交渉で人々は手厚い報酬アップを期待するだろう。市場は再び流動化し、人々は転職に自信を持っている」と話した。

バークレイズは2023年分のボーナス上限を維持したが、報酬委員会が適切と判断した場合、将来的に上限を変更できるよう株主の許可を求めている。

HSBCは重要なリスクテイカーのボーナス上限を撤廃し、報酬委員会が適切と考える新たな上限の設定を提案している。

ボーナスの上限は、金融危機に対する世論の反発を受けて、14年に欧州連合(EU)によって初めて導入された。長年にわたる業界のロビー活動を受け、英当局は昨年10月、EU離脱後の英国を金融センターとしてより魅力的な国にするための幅広い策の一環として上限を廃止した。

この上限は、銀行のいわゆる重要なリスクテーカー(投資銀バンカー、トレーダー、リスクマネージャー、コンプライアンス担当者など)が、固定給と同額の変動報酬を得ることができるような仕組みになっていた。株主の承認があれば、ボーナスを最大で基本給の2倍とすることも可能だった。

英国の金融機関の多くが報酬見直しを開始するには、株主の承認をあらためて必要とする。昨年の規制当局の動きで業界全体のボーナス増額がすぐには実現しなかった理由の一つはここにある。

今後数週間のうちに株主総会が開かれ、株主への提案はほぼ可決される見通しであることから、優秀なバンカーやトレーダーの報酬体系を見直す作業がロンドンの金融業界全体で間もなく始まることになるだろう。

多くの銀行が、上限規制への対応で報酬体系を既に変更したため、新しい報酬体系の採用には困難が伴うと銀行側は警告している。

例えば、シティグループは昨年、ロンドンを拠点にトレーディングと投資銀行業務を率いるパコ・イバラ氏に805万ドル(約12億5000万円)の固定給を支給した。そのため、イバラ氏が受け取った報酬総額の2000万ドルはボーナス上限規定内に収まった。

チャータード・ガバナンス・インスティテュートUK・アイルランドの政策・調査ディレクター、ピーター・スウェイビー氏は「ボーナスの上限撤廃は、意図しない結果をもたらす可能性がある」と言う。「基本給を増やすことでボーナスの制限を相殺しようとした組織もある」と指摘し、多くの幹部は確実性を好むことから「固定給を減らすという話は心地悪く感じるかもしれない」と述べた。

それでも、バンカーやトレーダーの報酬を引き上げることが可能になるのはちょうど、金融機関が今後数四半期の成長について投資銀行やトレーディング部門に期待を寄せる時期に重なる。

大手米銀5行の1-3月(第1四半期)債券・株式トレーディング収入はアナリスト予想を上回った。また、債券・株式引き受け業務の収入も予想以上だった。

英国の大手金融機関は今後数週間に第1四半期の決算を発表するが、資本市場活動の回復から恩恵を受けると予想される。これらの収益は、業界が純金利収入の鈍化による打撃を和らげるのに役立つはずだ。

原題:London Bankers Inch Closer to New York-Style Bumper Bonuses(抜粋)

(c)2024 Bloomberg L.P.

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最終更新:4/22(月) 22:02

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