2024年シーズンから、NPB(日本野球機構)2軍公式戦にオイシックス新潟アルビレックスBC(アルビレックスBC)と、くふうハヤテベンチャーズ静岡(ハヤテ)の2球団が参入することとなった。この2球団は1軍戦に出場する資格のあるチームを持っておらず、所属選手は1軍公式戦に出場できない。ただし、2球団には過去NPB球団に在籍経験のある選手が複数所属しており、彼らはシーズン中にNPB球団への移籍が可能である。
2球団が本拠地を置く新潟市と静岡市は政令指定都市だが、人口は新潟市が約80万人、静岡市が約70万人程度と、商圏としてはNPB12球団の本拠地がある都市ほど大きくはない。ただ、両都市ともサッカーJリーグのクラブ運営では実績がある。特に新潟アルビレックスBCと同じ運営母体を持つプロサッカークラブのアルビレックス新潟は、03年から3年連続でJリーグ1位の観客動員数を記録したほどの人気チームだ。
では、野球でも安定した経営が見込めるのだろうか。アルビレックスBCは07年から独立リーグに参入し、12年からは黒字経営を続けている。ただし、これまでの年間運営費は2億円だったが、NPB2軍参入による試合数増加で遠征費用や人件費などのコストがかさみ、年間運営費が最低6億円はかかると見込まれる。
この運営費を賄うのに球団収入のてこ入れは欠かせない。アルビレックスBCの23年シーズンの観客動員数は約2万人だった(図表)。24年シーズンは8万4,000人(平均観客数1,200人×70試合)程度の動員が見込まれるが、チケット収入に換算しても6,300万円(8万4,000人×チケット価格750円)に過ぎない。グッズ売上げを含めてもその収入は1億円に届くかどうかだろう。
それ故、スポンサー収入に頼らざるを得ない。その柱がネーミングライツ(命名権)だ。チーム名に「オイシックス」や「くふう」というスポンサー名が入っているのはそのためだ。
しかし今後、1軍戦参入も視野に入れ、長期的に安定した運営を図るならば、スポンサー収入だけに頼るわけにもいかない。そこで二つの施策を提案したい。
一つ目は、スタジアムビジネスの確立である。近年では、本拠地スタジアムを365日稼働させることで試合がない日でも収益を上げる動きがある。23年に開業した北海道日本ハムファイターズの本拠地「エスコンフィールドHOKKAIDO」では、試合開催日以外は球場見学ツアーを開催しているのが、その好例だ。
二つ目は、観客動員数の増加を目指すため、NPBのドラフト候補選手を、特別にこの2チームに事前に加入させる案である。ドラフト候補選手がプロ相手に試合をする場面をいち早く提供することができれば、観客動員数に大きくつながるだろう。NPBスカウトも選手の能力の最終確認ができ、ドラフト候補選手にとってもアピールの場となる。まさに「三方良し」の施策といえる。(ルートインBCリーグ公式サイト 「週刊金融財政事情」2024年3月19日号より転載)
週刊 金融財政事情
最終更新:3/18(月) 9:30
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