脱炭素とEV化の欺瞞が暴露されつつある~トヨタの先見性と忍耐力は称賛されるべき

3/30 6:02 配信

マネー現代

EV化や脱炭素の「不都合な真実」

(文 大原 浩) 「脱炭素」の「不都合な真実」については、2019年10月9日公開「『地球温暖化騒動』の『不都合な真実』に目を向けよう」から昨年9月30日公開「EVバブルに続いて『脱炭素バブル』も崩壊するのか? とうとうノーベル賞科学者も『気候変動』を否定」に至る多数の記事で解説してきた。

 また、「EV化」の「欺瞞」についても、今から5年半前に、2018年8月27日公開「騙されるな、空前の電気自動車(EV)ブームは空振りに終わる」を執筆したが、昨年9月11日公開「ドイツを見よ!  EV化の惨めな結末~フォルクスワーゲン減産、結局、脱炭素は『三流国』への道?」という状況である。

 「空前の電気自動車(EV)ブームが空振りに終わった」ことは誰の目にも明らかだ。

 私が「人権・環境全体主義者」と名付ける人々のヒステリックなプロパガンダと政治的圧力が、日本や世界の「経済・社会を破壊」しつつあることが明らかになっている。それにも関わらず、このようなプロパガンダを主導した、新聞・テレビなどのオールドメディアはいまだに「EV化」や「脱炭素」を叫んでいるのだ。

 ドイツにおける自動車メーカーの惨状は前記「ドイツを見よ!  EV化の惨めな結末~フォルクスワーゲン減産、結局、脱炭素は『三流国』への道?」で詳しく述べたが、日本メーカーの中でもホンダのように、プロパガンダや政治的圧力に屈して「全面EV化」という誤った方針に舵を切ったメーカーが苦境に立たされている。

 そのように「EV化」が事実上強要されるムードの中で、「EV化に出遅れている」と中傷されながらも、「我が道」を着実に歩んだトヨタのすばらしさについては、ZAKZAK 3月18日拙稿「明らかになってきたEV・脱炭素の『欺瞞』とわが道を貫いたトヨタの『先見性』 日本の生命線は『化石燃料の確保』」や、同1月4日「トヨタの〝本物〟を追求する手法『男は黙って全固体電池』 『騒動』から距離を置き…EVバブル崩壊の痛手なし」において詳しく述べた。

世界がトヨタにひれ伏した!?

 2020年6月16日公開「やはり独り勝ち、世界の自動車メーカーはトヨタにひれ伏すのか?」で述べたことが、おおよそ4年を経て実現しつつあるのは日本人として喜ばしい。

 世界の(大型)旅客機製造業は、現在ボーイングとエアバスの2社寡占体制だが、自動車産業も同じような世界中で数社の寡占体制に向かいつつある。

 トヨタおよびトヨタと資本関係がある日本の自動車メーカーのグループがその中の一つとなるのは明らかと言える。しかし、「EV化で大失敗」したホンダを始めとする「その他」の日本自動車メーカーの今後が大いに心配だ。

 今からでも遅くはないから、彼らに「目を覚ましてほしい」ものである。

 「人権・環境全体主義者」のプロパガンダや政治的圧力を跳ね返し、あるいは「逆手にとって」トヨタ(およびそのグループ)が「世界の覇者」になった。しかしながら、「人権環境・全体主義者」が目の敵にするいわゆる「化石燃料」の供給に関して、日本全体として大きな不安を抱えている。

 日本の経済・社会にとって「脱炭素」が有害であることは明らかだ。むしろ「炭素確保」こそが、日本が直面する緊急課題である。

化石燃料は(経済)安全保障に関わる

 米国は、現在では、ジェトロ 昨年4月5日「米国の2022年の原油輸出量は過去最高を更新、エネルギー情報局発表」のように、原油の輸出国である。

 だが、3月21日公開「化石燃料はこれからも重要だ。そして、インフレは投資家最大の敵だ!」2ページ目「米国のエネルギー自給の重要性」において、バフェットは、1973年の第1次オイルショック後1975年にSPR(Strategic Petroleum Reserve、戦略石油備蓄)が創設されたあたりから「シェール革命」が起こるまでの、「OPECの力を脅威に感じたエネルギー海外依存時代」を忘れるべきではないと警鐘を鳴らしている。

 前記記事でも述べたが、バフェットは「反脱炭素派」ではない。傘下のバークシャー・ハサウェイ(の傘下企業)は、太陽光発電や風力発電などのいわゆるクリーンエネルギーにも大きな投資をしている。

 だが、「30年後も化石燃料は(米国経済にとって)重要なエネルギー源」であると考えてもいるのだ。

 だから、米国内の生産において大きな位置を占めるオキシデンタルペトリアムに対して、「米国エネルギー自給」の観点から積極果敢な投資を行っているのである。

 それでは、日本のエネルギー需給は一体どのような状況であろうか? バフェットが「米国のエネルギー自給の危機」であったと考えている、1975年に米国SPRが創設された頃から比べても、日本の現状は「壊滅的」だと言える。

 いまだに日本は原油の99%以上を輸入に頼り、中東依存度も9割を優に超える。バフェットであればこのような状況をどのように考えるであろうか? 

日本にとっての救い

 救いは、昨年10月19日公開「日本がエネルギー大国になる日~人工光合成と藻類バイオマスに期待」冒頭「原子力は『オイルショック』後に注目された」で述べたように、オイルショックまではあまり普及していなかった原子力発電が発展したことだ。

 ドイツは昨年4月15日に最後の原発の稼働を停止するという愚かな判断を行ったが、日本ではそのようなことは断じて許すべきではない。原子力の安全問題は前記記事2ページ目「水力発電も危険?」や同3ページ目「年間200万人の早期死亡者と原発事故」などで解説したが、原子力に限らずどのようなエネルギーの生産にも「リスク」は存在する。重要なのはその「リスク」と「受益」の「バランス」を上手にとることである。

 またもう一つの救いは、天然ガスの利用が広がった事である。同じ化石燃料でも天然ガスの方が石油よりもクリーンとされることが普及の後押しをした形だが、重要なのはその事実ではない。

 まず、INPEXによれば天然ガスの可採年数は約53年であり原油の約51年と比べて遜色がない。また、この可採年数は現在確認されている埋蔵量や利用可能な技術に基づいて計算されているので、新たな資源が発見されたり「シェール革命」のような技術が進歩したりすれば、増える傾向にある。

 1970年代オイルショック当時の原油の可採年数が約30年とされていたのに、おおよそ半世紀経った現在、その数値が約50年に伸びていることがその典型例であろう。

 だから、天然ガスは従来の化石燃料同様「頼りになるエネルギー源」なのである。

石油開発企業と総合商社

 第2次世界大戦中に「石油の一滴は血の一滴」という標語が用いられたことはよく知られている。

 太平洋戦争勃発後、1942年から(白人のドイツ人やイタリア人にはお構いなく)有色人種の日系人の財産を没収し、強制収容所に押し込んだのが「人種差別主義者」の民主党大統領、フランクリン・ルーズベルトである。

 そのルーズベルトが日本に「手を出させる」ために苛め抜いた。1941年8月の「日本への石油禁輸」措置は、当時米国からの輸入に頼っていた日本にとっては大打撃であったといえよう。そのため、石油確保に苦しんだ日本において、「石油の一滴は血の一滴」という言葉がスローガンとして使われるようになったのである。

 原子力産業新聞 2020年5月20日「二度と戦争の惨禍を経験しないために」によれば、1935年は全輸入量の67.0%を米国に依存していたが、1939年には依存率が90,1%に達している。

 つまり、現在の(原油輸入における)日本の中東依存度が9割以上というのはとてつもなく危険なことなのだ。

 だが、すでに述べたように、幸い原子力や天然ガスによってその影響が緩和されている(天然ガスの輸入における中東比率は2割程度とされる)。原子力については、その安全性に十分配慮しながらスピード感を持った開発を行うべきである。

 天然ガスについては、例えば石油資源開発が新潟県内で開発を行っている。また、南関東ガス田は、関東天然瓦斯開発によれば「600年分の埋蔵量」があるとのことだ。

 そのおかげで99%以上という石油の輸入比率に比べて、約97%とごくわずかだけ輸入比率が低い。

 だが、日本は米国とは違って、結局のところ「エネルギーの海外依存」そのものから脱却することは困難である。だから、原油の輸入の9割以上を依存している中東諸国との「関係維持」に腐心すべきである。さらには、サハリン1やサハリン2などで日本のエネルギー供給に大きな影響を与えるロシアとの「関係維持」も重要である。

 NRI 2022年4月5日「日本政府はサハリン1・2の事業継続を表明も先行きは不透明」という状況が続いているが、日本は原油輸入の3.7%、LNG輸入の8.7%(2021年、財務省貿易統計)をロシアに頼っているから、途絶した場合の影響は決して小さくない。

 幸いにも、QUAD(クアッド、日本、アメリカ、オーストラリア、インドの枠組み)で強い絆を持つオーストラリアにおけるINPEXの「イクシス」LNGプロジェクトは、すでに順調に事業を展開している。

 また、日本経済新聞 昨年9月14日「INPEX、増資せず投資 インドネシア天然ガス開発」と報じられる総事業費3兆円規模の計画が進行している。

 もちろんバフェットが投資した5大総合商社も、日本のエネルギー調達において重要な役割を果たしているのだ。

 商社の経営陣は、全体のバランスの観点からエネルギービジネスに収益を依存することを避けようとする傾向がある。だが、「大株主」であるバフェットが、米国の「エネルギー調達」に強い関心を持っているのだ。当然、総合商社が日本のエネルギー調達に果たす重要な役割も高く評価しているはずだと考えられる。

 日本の将来のエネルギー調達のためにも、総合商社は「エネルギー事業」にもっと注力してほしい。

欧州を「他山の石」とすべき

 二酸化炭素云々ではなく、「限りある資源」を大事にするのは当然である。我々がこれから行うべきなのは「化石燃料を目の敵」にすることではなく、人類に多大な恩恵を与えてくれる「化石燃料を尊重し大事にする」=「省エネ」ではないだろうか? 
 エネルギーの欠乏がどのような影響を与えるのかは、ロシアからの(安い)エネルギー供給が途絶えたドイツを始めとする欧州各国の悲惨な状況を見ればよくわかる。

 改めて、我々が行うべきなのは「脱炭素」ではなく「炭素(化石燃料)確保」であるということを強調したい。

マネー現代

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最終更新:3/30(土) 6:02

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