新築の減少で苦境に…瓦業界トップ企業が東証上場廃止に追い込まれた背景《楽待新聞》

1/12 11:00 配信

不動産投資の楽待

企業の決算から、不動産業界の現状について考える本連載。今回取り上げるのは株式会社鶴弥(つるや)です。

瓦メーカーの最大手企業である同社ですが、2025年12月16日、東証からの上場廃止の申請を行って話題となりました。

2026年2月16日に東証からは上場廃止となり、もう1つの上場先である名古屋証券取引所への単独上場となることが予定されています。

今回は、瓦の大手企業がどのような状況となっていたのか、そしてどうして東証からの上場廃止を決めたのかについて、決算資料を元に見ていきましょう。

■主力はフラットな平板瓦

それではまずは、同社の事業内容から見ていきます。2025年3月期の売上構成は以下の通りです。

(1)J形瓦(丸みのある伝統的な和瓦):26%
(2)F形瓦(F=Flatで平板瓦):60%
(3)陶板壁材:10%
(4)工事:4%

陶板壁材や工事も展開していますが、売上の86%を瓦が占めており、瓦を主力とする企業だと分かります。

ちなみに「J形瓦」は日本の伝統的形状の瓦であり、耐久性が高いというメリットがある一方、耐震性がF形より弱く、重い、というデメリットがあります。

またJ形瓦は、近年増加する洋風住宅のデザインに合いづらいということで、現在はF形瓦が主力となっています。

■三大瓦「三州瓦」でトップシェアを誇る

また、鶴弥は瓦の中でも「三州瓦」という瓦を扱っています。

瓦には産地ごとに三大瓦と呼ばれる分類があり、「三州瓦(愛知県)」「石州瓦(島根県)」「淡路瓦(兵庫県)」がほぼ全てを占める市場となっています。その中でも三州瓦は84.0%を占める最大のシェアを持つ瓦です。

他にも瓦の産地はありますが、そもそも瓦を造るためには良質な粘土が安定的に採れる必要がありますので産地は限定されます。

またそれらの産地の中でも、大量生産や流通網の整備など近代化に対応できた瓦産業は多くありませんでした。そうして三大瓦がほぼ全てを占める市場となり、その中でも三州瓦の寡占が進んできました。

そして鶴弥は、その三州瓦の中でも37.2%のシェアを持つ最大手企業であり、三大瓦を合計した全国シェアでも31.3%を持つトップの企業となっています。

瓦のマーケットは国内ですから、日本の瓦の約3割を取り扱う鶴弥の業績は、日本の住宅市場の動向に左右されると言えます。

また国内の住宅市場では堅調なリフォーム需要はありますが、リフォームにおいて、屋根や瓦は優先順位が低い工事項目です。

多くの場合リフォームでは、水回りや内装といった生活の質がすぐに変わる部分が重視され、屋根は雨漏りなどの明確な不具合が発生しない限り、後回しにされがちです。

さらに、屋根工事は足場設置を伴い、費用も数百万円単位になりやすいため、実施されるケースは多くありません。そのため、リフォーム市場拡大によって瓦の需要が伸びる構造にはなっておらず、新築市場の影響を特に受けやすくなっています。

■売り上げの推移をチェック

事業内容が分かったところで、2014年3月期~2025年3月期までの業績の推移を見ていきましょう。

まず、売上の推移を見てみると、増減はありつつも右肩下がりでの減少傾向となっています。10年前の2016年3月期で90億3000万円ほどあった売上が、2025年3月期には68億2000万円まで減少してしまっています。

(外部配信先では図表、グラフなどの画像を全て閲覧できない場合があります。その際は楽待新聞内でお読みください)

続いて営業利益の推移も見てみましょう。こちらも増減はありつつ、2014年3月期をピークにその後は停滞傾向となり、ここ数年は赤字や1億円台の黒字を行き来しているなど、低迷傾向にあることが分かります。

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では、どうしてこのような推移になっているのでしょうか?

第一に、国内市場で住宅建設が停滞しており、その影響を受けています。都心部では高価格帯の物件も増えていますが、瓦は高付加価値製品を販売することが容易ではありませんし、都心部の小型住宅であれば使われる瓦の量自体が少ないです。

そのため、都心部の住宅高価格化の恩恵を受けられるような構造にはなっておらず、低調な新築建設の影響を直接受けています。

さらに、屋根材に関しては金属屋根やスレート、軽量屋根材といった瓦の代替材も数多く存在します。こういった市場環境の中で縮小傾向になっているということです。

今後も人口減少に伴って新築の件数は伸びにくいでしょうし、建設費高騰や空き家の増加が起きる中で、地方部でも中古住宅と新築住宅の価格差が広がっています。地方でも中古住宅へのシフトが進む可能性は十分に考えられます。

■上場廃止の背景は?

ただしもちろん、瓦の需要が完全になくなるということは考えられませんし、業界最大手の鶴弥には競争優位性もあります。

一定の売上が維持されることは期待できるものの、鶴弥の自社の努力では解決が不可能な全体のマーケット環境による影響は避けられませんから、売上規模の拡大や維持は容易ではないと考えられます。

さらに、利益面は低収益化しており、2023年3月期には赤字転落するなど苦戦をしています。これは、資材費含め物価上昇やエネルギーコストの上昇といったコスト高の影響を受けたためです。

業界トップの鶴弥には一定のブランド力はあるものの、それでも屋根材はコモディティ化しており、価格競争となるケースが多いため、値上げは容易ではありません。

2021年3月期に385名いた人員を2025年3月期には321名まで減らすなどの人員削減、歩留まり向上を含めた生産効率の向上を進めたことで、2024~2025年3月期では一定の利益面の改善が進みました。

しかしそれでも、2025年3月期の営業利益は1億9000万円、営業利益率は2.8%という水準にとどまっており、今後どのようにコストを最適化し収益性を高めていくかが重要な状況だと言えるでしょう。

そして、その取り組みの1つとして行われたのが、今回の東証からの上場廃止だと考えられます。

実際同社は上場廃止の理由として、上場維持コストや長期的な目線での事業運営、経営の安定化・合理化などを挙げています。

上場維持コストの削減による収益性向上を図りたいのはもちろん、市場の縮小を受け、成長よりも事業の維持と最適化が重要で、短期的な利益変動が避けられない状況では、短期目線での利益追求も求められやすい東証での上場環境そのものが負担になっていると考えられます。

鶴弥は歴史の長い企業で、これまで長期的に利益を積み上げてきたことで、財務余力も大きいです。

資金調達の必要性も薄いですし、東証では株主還元の圧力が強まっている点を考えても、長期的な事業継続という目的に対して上場維持はデメリットが大きいと判断したと考えられます。

今後はこのような取り組みを1つ1つ進めることで、どこまで収益性を改善させられるかに注目です。

■直近の業績

それでは最後に、直近の2026年3月期の2Qまでの業績を見ていきましょう。

売上高:32億円(▲9.6%)
営業利益:0.7億円(▲54.3%)
経常利益:1.6億円(▲55.1%)
純利益:2.8億円(+14.4%)
▲はマイナス

純利益こそ土地の売却益という一時要因によって増益となりましたが、売上や営業利益は減少しており、本業の停滞は続いています。

市場環境としては、建築コストの上昇による住宅需要の減少だけでなく、建築基準法改正に伴う建築確認申請の遅延の影響もあり、持家の着工戸数が15%以上減少するという状況だったとしています。

そんな市場環境の中で、鶴弥も需要減少を受けて減収となりました。利益面では人員の適正配置や生産効率化などを行ったものの、物価上昇による原料費や設備維持・更新の修繕費など幅広い製造原価が押し上げられ、利益面も押し下げられたとしています。

鶴弥としては収益性改善の取り組みは継続して続けているものの、新築市場の低迷とインフレによるコスト増が両面から進んでおり、こういった市場環境の悪化の中で業績の改善はやはり容易ではなさそうです。

そんな中で売上に関しては業績の下方修正も行っています。利益面は収益性の改善の取り組みを進める事で改善する事を見込んでいるものの、容易な状況ではなさそうですからその点には注意が必要そうです。



鶴弥の事例は、瓦業界特有の話というよりも、人口減少・建設費高騰という変化の中で、新築住宅に関連する事業が直面する状況を象徴しているとも言えます。

都心部の一部の不動産価格の高騰、大規模再開発などは起きていますが不動産業界の中でも、どの領域が伸び、どこが維持・縮小フェーズに入っているのかをしっかり分けて考える重要性は増していると言えそうです。

妄想する決算/楽待新聞編集部

不動産投資の楽待 編集部

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最終更新:1/12(月) 11:00

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