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サム・アルトマン氏の暗号資産プロジェクト・ワールドコイン、イーサリアムレイヤー2を今夏ローンチ予定

4/18 15:25 配信

CoinDesk Japan

オープンAI(OpenAI)の創設者サム・アルトマン(Sam Altman)氏が手がけ、網膜スキャンで話題になった暗号資産スタートアップ、ワールドコイン(Worldcoin)は、現在独自のブロックチェーンを構築している。


今夏リリース予定のイーサリアムレイヤー2ネットワーク「ワールドチェーン(World Chain)」では、眼球をスキャンし、「ワールドID(World ID)」と呼ばれるデジタルパスポートを手に入れたユーザーには優遇措置がとられる。ワールドチェーンの根底には、ワールドコインのローンチ当初からの旗印である「認証済みの人間」のためのネットワーク、換言すれば、ますます不気味さを増すAI時代にボットを排除するように設計されたエコシステムというアイディアがある。

人間のためのブロックチェーン

これまでワールドコインのワールドIDプロトコルは、単に分散型アプリケーション、つまりはイーサリアム上の一連のスマートコントラクトとして運営されてきた。しかし独立したブロックチェーンの構築に舵を切ることで、開発者はより大きなコントロールと多くの選択肢を手に入れ、ユーザー手数料は減少する可能性がある。


「認証済みの人間のユーザーには、ボットよりも優先的にブロックスペースが割り当てられ、一部のガス(手数料)も無料になる」と、ワールドコインの開発チームであるツールズ・フォー・ヒューマニティ(Tools For Humanity)は声明で述べた。


「開発者にとって、ワールドチェーンは実用性に焦点を当てたアプリを何百万人ものユーザーに届けられる場となるだろう」


ワールドチェーンは、独自ブロックチェーンの構築を目指すプロジェクトに人気の開発ツール「OPスタック」で開発される。コインベース(Coinbase)がBaseの構築に活用したのもOPスタックだった。「ロールアップ」と呼ばれる他のレイヤー2と同様に、ワールドチェーンはユーザーのトランザクションを束ねてからイーサリアムに記録する。これにより、直接イーサリアムにすべてのトランザクションを記録するよりも手数料が安くなる。


「ロールアップはすべて、アクセス性向上を目指してガスの引き下げに多くの労力を費やしているが、それが実現すればボットの活動も増加してしまう」と、ツールズ・フォー・ヒューマニティの製品・エンジニアリング・デザイン責任者ティアゴ・サダ(Tiago Sada)氏は語る。


「その結果、人間のユーザーが支払う手数料が超高額になり、送金詰まりが起きてしまう」


「オンチェーントランザクションの50~90%が自動化されていることは明らかだ」とサダ氏は説明する。


「ワールドチェーンはオープンでパーミッションレスなネットワークになるため、ボットを含め、誰でもトランザクションを実行できる。しかし、認証済みの人間によるトランザクションには優先的にブロックスペースが確保されるため、より速く処理されることになる」


ワールドコインの名声(見方によっては悪名)を支えているのが、ボーリングボールのようなクロームの球体で、眼球をスキャンするレンズが入ったデバイス「オーブ(Orb)」だ。オーブは、アカウント取得者がロボットではなく人間であることを保証し、同一人物が2つのアカウントを所有する可能性を排除することで、ワールドコインを他のインターネットサービスと差別化している。


「人間であることの証明」を重視するプロジェクトの姿勢は、AIアプリケーションの普及によって生まれる潜在的なユースケースと結びついている。


ツールズ・フォー・ヒューマニティは、カンファレンスやイベント、ポップアップショップなどにオーブを持ち込み、対面スキャンを実施してきた。ワールドコインによると、すでに167ヶ国以上で1000万人以上のユーザーがネットワークに参加しているという。

ユーザーベースのさらなる拡大

今日のワールドコインの体験は、主にワールドアプリ(World App)と呼ばれるウォレットの中で完結する。ワールドアプリは、複数の人気プロトコルと連携しており、オーブでのスキャンを終えたユーザーには特別機能を提供している。現在ワールドアプリは、OPスタックを生み出したイーサリアムレイヤー2「OPチェーン(OP Chain)」に接続されている。


ワールドコインはOPチェーン上のプロトコルの中で2番目のトランザクション量を誇り、ワールドコインのトークンWLDの時価総額はイーサリアム(ETH)とネイティブトークンのOPを除くと、OPチェーン最大だ。


ワールドコインが独自のブロックチェーンに移行することで、「現在の規模でユーザーを獲得し続けることができる」とサダ氏は述べる。


「既存のユーザーには、トランザクションの実行がより速く、安くなるというメリットがある」


当初ワールドコインは、ユニバーサル・ベーシック・インカムの実現を謳っており、特定の地域(米国と他のいくつかの国を除く)で網膜をスキャンした人には、WLDトークンと、認証されたワールドIDアカウントが付与された。しかし時を経て、AIがインターネットを再構築し始めたことで、ワールドコインの金融的な野心は、デジタルIDに関するより広範な目標の陰に隠れつつある。


独自のブロックチェーン構築を目指すうえで、ボット審査はワールドコインの中核的なアイディアとなった。将来的にはワールドアプリ以外のウォレットアプリもワールドIDを活用できるようになる。またワールドチェーンは、WLDをETHと並ぶ通貨と捉え、両資産がネットワーク手数料の支払いに使えるようになる。

批判を糧に成長

2021年のデビュー直後から批判にさらされたワールドコインの波乱の1年を経て、ワールドチェーンのアイディアは生まれた。一部の暗号資産信奉者からは、プライバシーに関する懸念が表明された。眼球をスキャンするオーブには不気味な要素があることから、ワールドコインは生体データを厳密に暗号化すると主張したにもかかわらず、懸念を払拭するのに苦労した。


また『MITテクノロジー・レビュー(MIT Technology Review)』は、ツールズ・フォー・ヒューマニティが、テスト運用時にサインアップと引き換えに無料のトークンをちらつかせ、貧しいコミュニティの人々を実質的に搾取していたとする、不名誉な暴露記事を掲載した。その記事によると、ワールドコインは「欺瞞的なマーケティング活動を行い、ユーザーに明示したよりも多くの個人データを収集しており、十分な説明をした上での同意をユーザーから得ていない」という。


AIがブームとなり、暗号市場が上昇傾向にある中、ワールドコインのチームは一連のアップデートを実施し、他サービスとの連携を広めてきた。ワールドコインは眼球をスキャンせずとも使えるようになり、プロジェクト開始以来悩まされてきたプライバシーに関する懸念を解消するための新しい暗号化技術も生まれた。


このような改善により、ワールドコインは多くの否定的な意見にもかかわらず成長し、最新データによれば総トランザクション数は7000万件を超えた。ブログにワールドコインの詳細な批判を掲載していた、イーサリアムの創設者ヴィタリック・ブテリン(Vitalik Buterin)氏でさえ、3月にXのポストで「プライバシー批判を真摯に受け止め、保有データを最小限にするようシステムを設計したことは、非常にすばらしい」とワールドコインを称賛している。


|翻訳・編集:行武 温|画像:Worldcoin's iris-scanning technology is being questioned by regulators (Danny Nelson/CoinDesk)|原文:Worldcoin, Sam Altman's Crypto Project, Is Building a Layer-2 Chain

CoinDesk Japan

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最終更新:4/18(木) 15:25

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