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開業110年、近鉄大阪線の「ザ・ターミナル」大阪上本町の貫禄 本社・百貨店・ホテルが集中、バス乗り継ぎも改善へ

5/2 4:32 配信

東洋経済オンライン

 近畿日本鉄道は日本一の路線長を持つ私鉄として知られる。なかでも大阪と名古屋・伊勢志摩方面を結ぶ特急が走る大阪線は長さ108.9kmに及ぶ大動脈。その路線の起点となるのが大阪上本町駅だ。

■2024年で開業110年

 大阪上本町駅は2024年4月30日に開業110周年を迎えた。百貨店のビルと一体となった駅で、頭端式の地上ホームはいかにも私鉄のターミナルの雰囲気が漂う。

 所在地は「大阪市天王寺区上本町六丁目」。略して「上六(うえろく)」という呼び名も周辺のビルや店舗の名称に見ることができる。平坦な地形が多い大阪中心部では珍しい坂道のあるエリアにある。高校が多く学習塾が目立つのも上本町の特徴だ。

 上本町駅は1914年、近鉄の前身の大阪電気軌道(大軌)が奈良と最短距離で結ぶ生駒トンネルの難工事の末、現在の奈良線を開業させたときに誕生した。近鉄創業の地ともいえる重要拠点だ。

【写真】現在の大阪上本町駅の様子。普段は入れない、駅長室から眺めた地上ホームの様子も(60枚)

 その後、大軌は途中駅の布施から南へ分岐する路線を桜井方面へ延ばしていく。1931年までに系列の参宮急行電鉄(参急)によって桜井―宇治山田間が開通、大阪と伊勢が直通列車で結ばれるようになった。1941年の大軌と参急の合併により、上本町―伊勢中川間が大阪線と名付けられた。

 大阪万博開催の1970年に難波線(当時の駅名は上本町―近鉄難波間)が開業、同線と一体的に運用する奈良線の電車や、名阪間などの特急列車は地下ホームに発着するようになった。

 さらに2009年の阪神なんば線の開業で、近鉄奈良―神戸三宮間直通の快速急行が運行開始。駅名も現在の大阪上本町に変更した。名阪特急「ひのとり」や「アーバンライナー」などに乗って遠方から訪れた人にとって大阪上本町は地下駅というイメージが強いかもしれない。

■近鉄グループの本拠地

 現在の地上ホームは、日中は高安行きの普通から五十鈴川行きの急行まで、行き先と種別のバリエーションに富んだ大阪線の一般用車両が中心となる。特急の発着は朝夕の一部のみだが、「伊勢志摩ライナー」のほか、土休日は2階建ての「ビスタカー」も入線する。団体専用臨時列車の乗り降りに使われることもある。

 大阪上本町駅の水本安彦駅長は1981年の入社。2020年のひのとりの運行開始時には大阪難波駅長として出発式で合図をした。大阪上本町駅には2023年11月に着任。「大阪の中心部にありながら、学校が多い文教地区でもあり、どっしりと落ち着いた雰囲気がある」と話す。「地上ホームの各線が電車で埋まったときは壮観」というターミナルならではの光景もある。

 近鉄百貨店上本町店やシェラトン都ホテル大阪、近鉄本社ビルなど近鉄グループの拠点も集積する。これらは同社関連施設を多く手掛けた建築家、村野藤吾が残した作品でもある。かつての近鉄劇場跡地は、2010年に大阪新歌舞伎座が入る複合ビル「上本町YUFURA(ユフラ)」に生まれ変わった。ユフラのオフィスフロアには近鉄不動産や近鉄リテーリングといったグループの中核会社が本社を置いている。

 大阪上本町駅はほかの交通手段への乗り換え拠点としての利用も多い。駅の西側には大阪メトロの谷町線と千日前線の谷町九丁目の駅がある。谷町線は東梅田や天満橋、天王寺といった主要エリアを結んでいてビジネス・観光両面で利便性が高い路線だ。大阪上本町と谷町九丁目は駅名が異なるが、両駅は地下通路でつながっており雨天でも濡れずに移動することができる。

 1階のシェラトン都ホテル大阪前にはあべのハルカスと結ぶ「あべの上本町シャトル」、関西国際空港行きリムジンバスの乗り場がある。駐車場の間を百貨店の「送迎サービスカー」が走っている2階には大阪(伊丹)空港行きのバスが発着する。

 大阪上本町駅は地上の改札口は1つだが、地下には地下中央改札口、地下西改札口、近鉄百貨店改札口がある。大阪メトロとの乗り換えや、居酒屋などの飲食店が集まるビル「ハイハイタウン」へは地下西改札が便利。近鉄百貨店改札口はその名の通り近鉄百貨店の専用改札だ。

■地上ホームは改良工事中

 2025年の大阪・関西万博を巡っては、大阪上本町駅から会場を結ぶシャトルバスの運行を予定しており、現在、バスターミナルと駅の改良工事が進んでいる。

 2階のバス乗り場を改良して万博シャトルバスなどの発着場として運用。駅には新たに改札口を設け、地上ホームとバスターミナルを行き来しやすくする。一番北側の3号線を廃止して新設する通路には待合スペースやトイレを整備。大阪線沿線から伊丹空港へのバスの乗り継ぎ利便性向上も期待できる。

 歴史あるターミナルとしての貫禄を備えた大阪上本町駅。地上ホームの改良工事を経て、交通結節点としての真価を改めて発揮することになりそうだ。

東洋経済オンライン

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最終更新:5/2(木) 14:56

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