大画面iPadが9万円安く買えるようになる キーワードは「ディスプレー」「AI」「操作性向上」

5/9 12:21 配信

東洋経済オンライン

 アップルは日本時間5月7日23時からオンライン発表イベントを開催。iPad Pro、iPad Airのラインナップを刷新し、それぞれ11インチ、13インチモデルの展開となった。また新しいアクセサリーの追加、そして第10世代のiPadは1万円の値下げとなった。

■イギリスで初めてのイベント開催

 今回、アップルのイギリス・ロンドンの拠点である「Apple Battersea」でプレスイベントが開かれ、最新のiPad製品が披露された。ストリーミングに先駆けて舞台挨拶に立ったアップルのワールドワイドマーケティング担当シニアバイスプレジデント、グレッグ・ジョズウィアック氏は、アップルのイギリスでの40年間の歴史の中で、初めてのイベント開催であるとし、30カ国から集まったプレスを歓迎した。

 発表された新製品と日本での価格は次の通り。いずれの価格も税込み、iPad Airは128GB Wi-Fiモデル、iPad Proは256GB Wi-Fiモデルの価格。

 ・ iPad Air 11インチ 9万9800円~

 ・ iPad Air 13インチ 12万8800円~

 ・ iPad Pro 11インチ 16万8800円~

 ・ iPad Pro 13インチ 21万8800円~

 ・ Magic Keyboard 11インチ(M4モデル向け) 4万9800円~

 ・ Magic Keyboard 13インチ(M4モデル向け) 5万9800円~

 ・ Apple Pencil Pro 2万1800円~

 なお、iPad(第10世代)は5万8800円~に値下げ、iPad miniは8万4800円~に値上げされた。

 iPadはiPhoneから派生したタッチ操作を可能とする、スマートフォンよりも大きな画面サイズを持つデバイスだ。アプリを追加し、さまざまな用途で活用することができるが、小中学生に1人1台のデバイスを持たせる文部科学省の取り組み「GIGAスクール構想」でも、3分の1のシェアを獲得する重要な存在となった。

 世界のタブレットPC市場を見ると、iPadはカテゴリーを牽引する代表的な製品で、40%のシェアを誇る。しかしながら直近の四半期決算(2024年第2四半期)では、新製品投入の遅れもあり、55億5900万ドルの売上高は前年同期比16.7%減という結果だった。

 今回の新製品で、iPadラインナップ、ひいてはタブレットPC市場そのものへのテコ入れを図りたい狙いがアップルにはある。そのキーワードは、ディスプレー、AI、そして操作性の向上だった。

■iPad Airに待望の大画面サイズ

 iPadの代表的なモデルであるiPad Airは、これまでのM1チップがM2チップに刷新され、処理性能15%、グラフィックス性能25%、メモリーの帯域幅50%がそれぞれ向上し、AI処理を司るニューラルエンジンも40%高速化され、毎秒15兆8000億回の処理が可能となった。

 そのiPad Airに、これまでのモデルを踏襲する11インチに加えて、画面を拡大した13インチモデルが登場した。これまで大画面モデルはiPad Proにしか用意されておらず、最高の性能と大画面がセットで、もちろん価格もその分高くなっていた。

 今回iPad Airに大画面モデルを用意することで、iPad Proの13インチを選ぶ場合と比べて、9万円安い選択肢を提供できるようになった。Proほど先進的な性能は必要ないが、大画面のiPadがほしい、というニーズに応えるようになった。

 ※ただしiPad Airは128GBストレージ、iPad Proは256GBストレージの違いがある。同じ256GBストレージに合わせると、価格差は7万4000円に縮まる。

 ニュースが多かったのは、最上位モデルとなるiPad Proだ。

 13インチモデルはアップルの製品の中でこれまでで最も薄い5.1mmを実現し、前モデル6.4mmだったことから、1.3mmも薄くなった。重さも682gから579gと、100g以上軽量化された。持っただけで薄さ、軽さを体験できるほどの変化だ。

 なお11インチの新モデルは、前のモデルに比べて、0.6mmの薄型化、22gの軽量化にとどまっている。

 今回の大きな進化のポイントは、新しいチップであるM4搭載と、ディスプレーを「Tandem OLED」という技術を用いたUltra Retina XDRへと進化させた点だ。これまでミニLED方式だったiPad Pro 12.9インチのディスプレーにはバックライトが存在し、その分厚みが必要となっていた。

 有機ELはバックライトが不要となってディスプレーが薄型化され、配線など内部構造の大幅な再設計を伴って、5.1mmという薄型化を実現したという。

 Tandem OLEDは、2枚の有機ELパネルを重ねて、反応速度と輝度の向上を狙う技術で、これを用いたUltra Retina XDRディスプレーを13インチモデルだけでなく11インチのiPad Proにも採用した。

 これまで11インチモデルは大画面モデルのような高輝度・高コントラストに対応しなかったため、小型モデルのユーザーにとっては待望の高品質ディスプレーとなる。通常は1000ニト、最大輝度は1600ニトに引き上げられた。

 引き締まった黒と明るさ、発色を見ると、新しいディスプレーは非常に魅力的に映る。しかしこのディスプレーを実現するためには、Appleシリコンの再設計から出発しなければならなかった点には、アップルのエンジニアリングへのこだわりを強く感じさせる。

■M4チップ投入で過激化するAI性能

 今回のサプライズは、iPad Pro向けに最新のアップル自社設計のチップとなるM4が搭載されたことだ。

 第2世代3nmプロセスを採用し、これまで100GB/秒だったメモリー帯域幅が120GB/秒に向上。M3で搭載したレイトレーシングなどのハードウェアアクセラレーションといったグラフィックス性能、そしてオンラインビデオの規格であるAV1のサポートなどが盛りこまれた。

 Macにもまだ搭載されていないM4をiPad Proに搭載した理由は、新しいディスプレー技術であるTandem OLEDを搭載するためだという。これまでより複雑なディスプレーを、低遅延、低消費電力、正確な色と明るさの再現で制御する設計が盛りこまれた。明言はされなかったが、将来の有機EL搭載Macへの布石ともなるだろう。

 加えて、機械学習、AI処理を司るニューラルエンジンも高速化され、M2で毎秒18兆5000億回だった処理性能は、M4では毎秒38兆回にまで引き上げられている。

 iPad上で、画像やテキストの処理、画像解析、映像や音声のリアルタイム処理などを行うアプリケーションが揃いつつあり、同等のパフォーマンスを発揮できるライバルが存在しない状態をアピールすることで、生成AIとは異なるより幅広いAIの活用において、「iPadの圧倒的な差」があることを強調している。

■新アクセサリーにも「驚き」が

 薄くなったiPad Pro向けには新しいMagic Keyboardが用意された。キーボードのパームレスト部分の素材がアルミニウムに変更され、耐久性が向上している。

 またキーボードには、画面の輝度や音声入力、再生コントロールなどを行うことができるファンクションキーが新たに搭載され、操作性が向上している。

 それ以上に注目すべきは、大幅な軽量化だ。特に13インチモデルとMagic Keyboardの組み合わせは、13インチMacBook Airと同等の重さになるよう目指しており、可搬性でMacを選択していたユーザーにとっては、iPad Pro 13インチモデルという選択肢が広がることになる。

 もう1つの新しいアクセサリーが、Apple Pencil Proだ。これは、新しいiPad ProとiPad Airで利用できる。

 新たに感圧センサーと感触フィードバック、そしてジャイロセンサーが内蔵された。軸を押し込むと、ペン先がある画面に筆先や色の選択ができるツールチップが表示される。また、操作の取り消しを行う際に感触フィードバックがあり、操作がわかりやすくなっている。

 これらはアプリに合わせた機能の割り当てが可能だ。開発者によって、Apple Pencil Proの活用方法が広がる道筋を付けたことで、iPad向けのアプリ開発競争が激化することが期待できる。

 2017年以降取り組んできたデバイス上でのAI処理の大幅な性能向上に加えて、そもそものタブレットの操作性向上や活用範囲拡大に取り組んだiPadの新ラインナップは5月15日に発売される。

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最終更新:5/9(木) 12:21

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