IDでもっと便利に新規取得

ログイン

初回購入限定、アプリで使えるお得なクーポン

【現地ルポ】大阪・関西万博、深刻トラブル多発した「波乱含みの開幕」に 市民は万博よりも”グルメ”に関心

4/15 11:02 配信

東洋経済オンライン

 ここ1週間ほどのメディア報道では逆風一辺倒だった「EXPO2025 大阪・関西万博」が、いよいよ開幕した。

 4月13日の開幕初日を訪れると、あいにくの雨模様のなか、大阪メトロ・夢洲駅そばの東ゲートは会場1時間前にはすでに大行列。警察や会場警備員の拡声器を使った大声が響いていた。

 開場時間の午前9時になると、入場口ごとのセキュリティとモバイル認証自動ゲートを通った観客が続々と入場。ひとりずつのゲート認証のため、大勢がどっと流れ込むこともなく、静かな人の流れになった。

 ようやくゲートを通過した観客も慌てる様子はなく、万博の開幕を噛み締めながら写真を撮ったり、奇抜な建築物などの景色を楽しんだりと、和やかな雰囲気に包まれる。目立った混乱もなく、スムーズな開場となった。

 入場の混雑もそれほどではなかった。開場時間の9時に東ゲートの列にならんだ夫婦は、45〜50分ほどの待ち時間で入場。予約のシャトルバスで西ゲートに11時に着いた家族連れは、ほぼ待ち時間なく流れで入場したという。2組とも予想以上に速やかに入れたことに驚いていた。

 開場後の会場内は、しばらくすると人気パビリオン(展示館)に行列ができるも、ほとんど予約制のため混乱はなく、大屋根リングのエスカレーターはならぶことなく乗れる。会場全体に人が散らばっている印象でそれほどの混雑感はない。国民的大型イベントとしては想定内の混み具合だろう。

■ひと休みする施設は充実している

 会場施設を見ると、大屋根リングの下をはじめ、至るところに木製ベンチや椅子があり、休憩するところには困らない。トイレも同様。大屋根リングの展望デッキのほか、場内のあちこちに設置されており、男性用はほぼならぶことはない。女性用は場所によって列ができるが、それでもイベント規模にしては少ないほうだろう。

 食事は人気店には人が集中するが、店舗の数は多くキッチンカーもあるので、ランチは11時台であれば数分待ちほど。とくにテイクアウトは早いし、座って食べられるベンチも多い。

 一方、未来型万博店として出店された「スシロー」は、午前10時半の時点で295組、3時間待ち。隣の「えきそば」は同時刻で1時間弱ほどの待ち時間。その近くのリングサイドマーケットプレイス西の店舗は午前11時半の時点で20分待ちくらい。店を選ばなければ、それほど困ることはなさそうだ。

 ただ、午後に入って雨が強くなると、状況が一転した。雨をしのげる大屋根リングの下は一気に人が集まり大混雑。さらに、横風が吹くと、そこも風雨が吹きさらしになる弱点を露呈。同時に人が向かったのはレストランなど食事店舗。荒天のなか、各店舗にもトイレにも行列ができた。

 また、午前中の入場ゲート付近で携帯電話の通信環境が悪化し、入場用QRコードが表示できなくなり、一部で入場が滞るトラブルがあった。博覧会協会は対策に取り掛かっている。

 そして、この日最大のトラブルになったのは、観客の帰途時間の集中による大混雑だ。雨足がより強くなった夕方、その時間から入場する観客と帰途につく観客で混乱する夢洲駅が規制され、駅に向かう大勢の観客が東ゲート周辺を埋め尽くした。会場を出るまでに2時間かかったという声もあり、海の会場への線の細さが改めて大きな課題として浮き彫りになった。

■184日間の会期への波乱含みの船出

 万博はいくつもの課題を抱えており、開催前もネガティブな報道が目立っていた。

 とくに厳しい視線が向けられているのが、会場建設費の高騰だろう。当初の予算より1000億円を超える増額となる一方、前売り券販売は4月11日時点で約900万枚と、目標の1400万枚の65%ほどにとどまっている。損益分岐点とされる1800万枚の半分の水準となり、会期中に黒字化できるかは疑問が残る。赤字になれば、国や市の負担が増えることになる。

 また、昨年3月にメタンガスによる爆発事故が起きている区画で、基準値を超える濃度のメタンガスが4月6日に検出されたことも伝えられている。博覧会協会は対策を強化し、直ちに危険はないとするが安全への不安は残る。

 パビリオンの建設遅れは、かねて話題になっていた。158カ国・地域、7つの国際機関が参加し、会場には180以上のパビリオンが出展するが、そのうち5つのパビリオンの建設が間に合わず、開幕日にオープンできなかったことが伝えられている。

 大阪・関西万博は、10月13日までの184日間にわたって開催されるが、初日のトラブルとあわせても、波乱含みの船出になったことがうかがえる。

■万博よりも身近なグルメイベントへ

 「大阪・関西万博」と同時開催の連動イベントとして、大阪市は「大阪グルメEXPO2025」(4月12日〜10月13日)を大阪城公園 太陽の広場で開催している。万博期間中に来阪する観光客に向けて、大阪観光の主要な魅力である「食」を楽しんでもらうことを目的にする「食の祭典」だ。

 その初日を訪れると、こちらも開場前から行列ができる盛況ぶりだった。会場内はあっという間に家族連れや若い世代のグループ、外国人観光客などであふれ、有名グルメガイド掲載店や、大阪で愛され続けるソウルフードの人気店などのグルメに舌鼓を打った。

 来場者に話を聞くと、大阪城公園に花見に来た市内の家族連れ4人や会社員の女性2人組のほか、グルメEXPOのために寝屋川市から来た家族連れ3人、お笑いイベント目当てで堺市から来た会社員と大学生の20代女性2人組など、大阪市内および近隣から週末にグルメを楽しもうと気軽に来場している人が多かった。

 彼らに共通するのは万博への関心の低さだ。グルメEXPOが万博の連動イベントと知る人は少なく、万博へ行く具体的な予定がある人もほぼいない。ふだんの会話にも万博関連の話はほとんど上らず、ネットニュースなどの報道にも触れていなかった。

 「万博は何があるのかよくわからないから、興味が湧かない。でも、気になるといえばなるかも(笑)。わざわざ行く予定はいまのところないけど」(20代会社員)という声もあがるように、ハードルの高い万博よりも、自分たちの生活に身近で気軽に足を運べるグルメイベントのほうに興味が向くようだ。

■万博の成功に欠かせない要素

 一方、訪れた万博とグルメEXPOで共通するのは、大阪のお笑いをはじめエンターテインメントが来場者を盛り上げていたことだ。

 万博では、予約不要のオープンスペースで行われる「よしもと waraii myraii 館」のお笑いステージが、パビリオン周辺まで国内外の来場者に取り囲まれる盛況ぶりで異彩を放っていた。

 グルメEXPOは、2カ所の食事テントにそれぞれステージが設けられ、漫才などのお笑いライブや吉本新喜劇、プリンセス天功イリュージョンショー、音楽ライブなどバラエティに富んだパフォーマンスが予定されている。初日は漫才や大道芸人のノンバーバルショーが会場をにぎわせていた。

 そうした盛り上がりを目にし、「大阪の笑いこそ、関西のエンターテインメントの華であり、それは世界に誇る関西現代文化でもある」ことを感じた。食や文化など関西のさまざまなイベントにエンターテインメントが混在するのは、そのためだろう。

 グルメEXPOで話を聞くと、お笑いイベントを見るために堺市から来た前出の女性2人は「万博にも行きたい」と語っていた。また、寝屋川市から来た家族連れの女子中学生は「万博に興味ある。楽しそうだから行ってみたい」と話す。

 万博の成功に向け、動員を伸ばすカギになるのは、若い世代を中心にした“万博に無関心のノリの良い関西人”であり、そのフックになるのはエンターテインメントかもしれない。

東洋経済オンライン

関連ニュース

最終更新:4/15(火) 11:02

最近見た銘柄

ヘッドラインニュース

マーケット指標

株式ランキング