スマホやパソコンで酷使? 不調を感じる人が増加中! 目の健康を守るために医師がすすめる《生活習慣改善3つのポイント》
人生100年時代と言われる中、年齢を重ねるごとに不安が増す目の病気。近年はスマートフォンやパソコンで目を酷使する機会が増え、目の不調を日常的に感じている人も増えています。
栃木県で眼科医院を営む山口康三医師のもとには緑内障や白内障、加齢黄斑変性など、さまざまな目の病気に悩む患者さんが全国から訪れています。山口医師は治療の一環として食事や運動、心の持ち方など生活習慣の改善に重きを置いているのです。
「目の病気も生活習慣病」「生活改善で目の病気を根本から治す」という山口医師の指導とはどのようなものでしょうか(本記事は山口医師の著書『緑内障・白内障は血流の改善でよくなる 黄斑変性・糖尿病網膜症・ドライアイにも効果』より一部を抜粋したものです)
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■目の病気は全身状態の改善から
長年、私は目と全身の関係を重視し、生活習慣の改善によって目の病気を体全体から改善する治療に取り組んできました。この治療法を私は「目の綜合(そうごう)医学」と呼んでいます。
西洋医学と東洋医学の両者の考え方を融合した、新たな概念です。目だけを診るのではなく、体全体を診て行う医療です。
東洋医学は、局所的な病気であっても、体全体を診て体質を変えることで病気の改善を目指します。そのような方法よりも、目薬をさしたり、レーザー治療をしたり、手術をしたほうが早く治せるのではないかと思うかもしれません。
急性の病気はそうかもしれませんが、慢性の場合は、体質を変えることのほうが近道になることも多いのです。
私は眼科医として、患者さんの体質改善の補助に漢方薬を用い、必要に応じて西洋医学的治療を行っています。
体質改善の中心は、毎日の生活習慣の改善です。そのため患者さんには、医師任せの受け身ではなく、患者さんに参加していただくこと(患者さん参加型の医療)が大切であるとお話しして、日々の診療にあたっています。
緑内障になった人に生活習慣をうかがうと、食べすぎ、甘いもの好き、夜更かし、ストレスがあると答える方が目立ちます。また、慢性的な便秘や肩こり、首のこりがある方も多くみられます。
生活習慣の偏りにより血流障害が起きたり腸の働きが低下したりして体調が悪くなり、それが目に現れて緑内障になっているということです。
これは白内障や黄斑変性など、ほかの目の病気でも同じことがいえます。目の健康度は、体の健康度を超えることはありません。全身を不健康なまま放置して、薬や手術で目だけを治療しても対症療法(原因でなく症状に対する治療法)にとどまります。
目の病気を根本から治し視力を回復するには、病気の元になっている生活習慣を改善することが重要です。その大前提があってこそ、西洋医学の治療効果も得られます。
たとえ、一時的に治ったとしても、病気になる体質が治っていなければ、また再発してしまいます。あるいは、別の病気になって出てきます。生活習慣を改善することで、体質を元から治し、病気にならないようにすることが大切です。
「目の綜合医学」では、東洋医学や食養の考え方も取り入れながら、食事や運動、睡眠、心の持ち方などを見直す方法を指導しています。生活改善は、いわば全身に働きかける根本療法です。
■生活改善のポイントは少食、運動、腸の正常化
皆さんに取り組んでいただきたい生活改善のなかで、ポイントとなるのは、①少食、②運動、③腸の正常化の3つです。
①少食の効果
*血流がよくなる
生活改善の第一歩は「食べすぎ」をやめ、「少食」を心がけることです。具体的には、まず間食・夜食をやめ、慣れてきたら食事は腹八分目にします。それができたら、「朝食を抜く」というのが理想です。
少食の最大の効果は、「血流の改善」です。食事の全体量を減らせば、食べ物はあますことなく消化されます。余分な栄養や老廃物が血液中にないので、血液がサラサラになって、全身のすみずみまでスムーズに流れるようになります。当然、目の血流もよくなります。
*修復に必要なホルモンの分泌が高まる
食べすぎは、組織の修復に必要な成長ホルモンや副腎皮質ホルモンなどの分泌低下を招きます。反対に、少食は、これらのホルモンの分泌を高めます。
成長ホルモンは、睡眠中に多く分泌され、傷ついた組織や細胞を修復します。また、副腎皮質ホルモンは、炎症を抑えたり、体を異物から守る免疫のしくみを支えたり、ストレスを軽減したり、糖の代謝を正常に保ったりするなど、生命活動の維持に大切な働きをしています。
甲状腺ホルモンは、代謝を活発にする作用があり、組織の修復を円滑にしたり、細胞分裂を促進したりして、新しい細胞が作られやすくなります。
これら組織の修復作業は、多くは睡眠中に行われるので、ほどよく空腹にして眠ることが大切なのです。
「病気が治るのは、寝ているときとおなかがすいているとき」と覚えておきましょう。
*細胞を修復するしくみ「オートファジー」が活性化する
少食にして空腹時間が長く続くと、オートファジーが活性化して体の修復が効率よく進みます。オートファジー(自食)とは、細胞内の使い古されたたんぱく質や老廃物、病原体などを分解・再利用するしくみです。このしくみによって、細胞の修復や新陳代謝が促され、細胞は元気を保ったり、老化や病気を防ぎやすくなったりします。
目の眼底に出血や白斑が起こったり、水晶体のたんぱく質が変性したりすると、オートファジーが、無駄な血液や異常なたんぱく質を処理して病気を改善します。
オートファジーは空腹状態のときに活性化します。反対に、食べすぎるとオートファジーが抑制され、目の傷ついた細胞や老廃物の処理が進まなくなります。
食べすぎは、自己修復力を低下させ、白内障をはじめさまざまな病気の予防・改善を困難にします。
*老化を抑制する
近年の研究では、老化を遅らせ、寿命を延ばすSir2(サーツー)という遺伝子(長寿遺伝子)の存在が明らかになりました。
この遺伝子は、細胞の修復や細胞を破壊する活性酸素の除去、動脈硬化や糖尿病の改善などの働きをもつことで知られており、空腹状態で活性化し、食べすぎで機能を低下させることがわかっています。
■運動は少食とセットで行うことが重要
②運動の効果
*血流がよくなる
運動不足は血流を低下させて、目の病気を引き起こしたり、症状を進ませたりする原因になります。
血液は心臓のポンプの力で押し出され、動脈を通って酸素や栄養を組織に届け、体の末端まで流れたら、静脈を通って老廃物を回収しながら心臓へ戻ります。この往路と復路で血液がスムーズに流れていれば、全身の血流がいいということになります。
血液が足から心臓に戻る復路は、心臓より遠く、低い位置にあります。静脈には血液を運ぶ力はほとんどないため、足の筋肉が収縮と弛緩を繰り返すことによって、血液を心臓に向かって押し上げています。
運動不足が続くと、筋肉の動きが少なくなるうえ、筋肉量が減るため、血液を送り出すポンプ作用が弱まります。そうなると全身の血流が悪くなり、目の血流も低下してしまいます。
ウォーキングなどの運動を行うと、足の筋肉が収縮するたびに、筋肉の間にある血管が締め上げられ、血液を心臓に押し戻すことができます。散歩ペースのウォーキングを日課にすれば、全身の血流がよくなり、目に栄養と酸素が潤沢に届くようになって病気も改善していきます。
*オートファジーを促進する
運動は少食とセットで行うことが重要です。筋肉量を維持するとともに、オートファジーがより効率よく起こります。眼底の出血や白斑は、オートファジーによって消せることが多く、目の病気の改善が期待できます。
■腸内環境は全身の健康を左右する
③腸の正常化の効果
*血液がきれいになる
腸内環境は全身の健康を左右するといわれています。腸内環境の良し悪しは、腸内細菌(善玉菌・悪玉菌・日和見菌)のバランスで決まります。健康を損ねるのは、悪玉菌が優勢になって腸内環境が悪化したときです。腸内環境の悪化を招く大きな原因は食べすぎです。
胃腸の許容量を超えて食べすぎると、腸内には消化しきれなかった食べ物のカスがたまります。悪玉菌はこれらを腐敗させて、有害物質を作り出し、腸の働きを低下させます。また、肉や甘いものをとりすぎると、悪玉菌はこれをエサにして増殖します。
日和見菌も悪玉菌に加担するので、腸内環境はいっそう悪くなります。
悪玉菌が増えると、腸のぜん動運動が低下して便秘になります。腸に停滞した宿便は腐敗・発酵し毒素が生じます。この毒素に悪玉菌が作るインドール、スカトールなどの物質が加わって、腸の汚染が進みます。
これらの毒素は腸から血管へ再吸収され、汚れた血液が全身を巡ります。目の細胞が汚れた血液を取り込めば、活力を失って正常に機能しなくなり、目の病気の引き金になります。
ですから、食べすぎをやめて血液を汚す便秘と宿便を解消し、腸内環境を良好に保つことが、目の治療には大切なのです。
*免疫が高まる
腸には全身の7割の免疫細胞が集中しています。善玉菌は免疫細胞を活性化させ、免疫力を高める働きがあることが知られています。善玉菌が優勢な腸内環境をつくることが、目を含め全身の健康を保つことにつながるのです。
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東洋経済オンライン
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最終更新:6/17(火) 9:32