Apple Intelligenceの処理と非接触充電が追い打ちとなる懸念 暑さが本格化する前に確認しておきたいPhone発熱リスクとその対策
みなさんのiPhoneは熱くならないだろうか? 筆者は一昨年、iPhone 15 Proから急速に熱くなっているように感じている。iPhone 16 Proも同様の傾向が続いている。温暖化の進行もあるが、特に日本の都市部の暑さは常軌を逸するものになってきている。3Dグラフィックスの多用、生成AI処理など、負荷の大きな処理も増えているし、非接触充電も熱を発する。熱くなるのも当然だ。
■気温がiPhoneの「動作時環境温度」を超えつつある
そもそも、iPhoneに使われているAシリーズチップは、処理能力に対する消費電力の少なさ、つまり処理の割に熱を発生しないことで知られている。しかし、熱を発しにくいiPhoneでさえも、熱で動作しなくなるケースが増えている。別にiPhoneの性能が低下しているわけではない。原因は3つ。温暖化と、iPhoneの高性能化、非接触充電の普及だ。
みなさんもお気付きかと思うが、日本の都市部の夏は特に暑くなっている。
たとえば、最高気温が35度以上の日を猛暑日というが、気象庁によるとiPhoneが発売された2008年には東京の猛暑日は1日だったが、2022年は16日、2023年と2024年は22日となっている。そりゃ暑いわけだ。
もう日本には猛暑日にならない都市を持たない都道府県はない(35度を超えない場所自体はある)。2024年には40度さえも超えた都市を持つ都道府県が8つある。
対して、そもそもiPhoneの仕様を見ると、動作時環境温度は0〜35度と記されている。つまり、四角四面に考えると「真夏の日中、屋外ではiPhoneは使えない日が多い」ということになる。これは別にiPhoneが悪いわけではなく、多くの電子機器の動作温度は0〜35度となっている。つまり、温暖化が進みすぎているほうが問題なのだ。
人間の体温を超える日も多いのだから、iPhoneが熱くなるのは当然だ。
■何をしたらiPhoneは熱くなるのか?
続いて、iPhone自体の処理の高度化による、発熱である。
コンピュータというのは、ご存知のように、回路に電気を通して処理を行う。回路の微細化により、ひとつの処理に消費する電力は減ってはいるが、それでも回路が増えて、複雑になると処理にかかる電力は増える……つまり、発熱が増えるというわけだ。
昔のiPhoneと違って、画面も高精細になっているし、多くのグラフィックが3D処理になっている。たとえば、ポケモンGOやドラクエウォークのようなアプリも画像が3Dになっているので、ゲームの間中GPUで空間での表示位置や各種エフェクトの演算を続けねばならない。
また、おもてに表示している以外にも、バックグラウンドで動作しているアプリが数多く存在するから、それらの発熱も無視できない。バックグラウンドアプリでも奥のほうのものは、スリープ状態になるなど、消費電力を少なくして、発熱を下げる工夫も行われているが、時折行儀の悪いアプリがあって、バックグラウンドでも激しく電力を消費する。
バッテリーの消費状況は、「設定>バッテリー>バッテリー使用状況を表示」で確認するといい。
……と、偉そうに書いているが、筆者も設定を開いてみると何年も使用していないアプリが、着々とバッテリーを消費していて驚いた。動作していないアプリでも、設定で位置情報や通知をする設定になっていると、バッテリーを消費してそれらの動作を行うようだ。そう考えると、完全に使用しないアプリは、削除してしまったほうが良さそうだ。
これらを削除しただけでも消費電力を下げられる、つまりバッテリーが持つようになるし、発熱も減る。
■今年の夏は、Apple Intelligenceの発熱が不安
さらに、今年の夏に問題になりそうなのがApple Intelligenceだ。
実は、まだ開発途上ということもあるだろうがApple Intelligenceを使うとiPhoneはかなり発熱する。
クラウド側で処理するChatGPTなどと違って、Apple Intelligenceは個人情報保護の観点から端末ローカルで動作する部分が多い。生成AIはNeural Engineで大量のベクトル演算を行うので、当然のことながら非常に大きな熱を発する。
今年の夏は、Apple Intelligenceにとって初めての夏だ。多用した時の熱が問題になるのではないかと思って心配している。
■充電中は、発熱するアプリを使わないようにしよう
もう1つ原因になるのが、充電時の熱だ。
バッテリーというのは化学反応なので、充電時にも給電時にも熱を発する。
そのうえに最近はMagSafeという非接触充電も行うから、これも熱の原因になる。非接触充電というのは、充電器とスマホ側両方にコイルを内蔵して、その間の電磁誘導で電力を伝えるものなので、当然抵抗が大きい=発熱する。初期のQiなどに比べて最近のMagSafe 2は供給できる電力も大きいので、その分発熱も大きい。
夏に屋外で、MagSafeで充電しながら3D画像を扱うゲームをしたりすると、気温の高さに相まって、3枚重ねの構造になっているチップセットとバッテリーとMagSafeがそれぞれに発熱するのだから、もはやヒーターを持っているようなものである。
■冷やすのはいいが、内部的な結露はNG
夏に、スマホが熱くなったからといって、やってはいけないのはクーラーの吹き出し口に直接当てたり、氷や保冷材に当てたり、冷凍庫に入れたりすること。
先に書いたように、iPhoneの動作時環境温度は0〜35度なので、それを下回ってしまうという危険もあるが、もっと危ないのは結露だ。
iPhoneは防水構造ではあるが、スピーカーやマイク、気圧調整のために空気が通る構造になっている。iPhoneが急激に冷やされると、この空気の中の水分が結露して水滴になる。チップセットは密閉されているとはいえ、iPhoneの中にはさまざまな電気回路がある。そこに水滴が付くと当然のことながら電気がショートして壊れる。
先に温度の件で触れたiPhoneの仕様表の動作時環境にも、「結露しないこと」という条件が入っている。筆者が、風呂でiPhoneを使ったり、エアコン通風口に装着するタイプのスマホホルダーを絶対に使ったりしないのはこれが理由。水に濡らさなくても、内部的に結露したら故障につながる。
■「充電中の使用」「高温になる状況」などは避けよう
というわけで、今年の夏はiPhoneの放熱を考えつつ使っていただきたい。
一番の対策としては、暑い屋外では、上記の発熱する理由となる原因を重ねないこと。
例えば「充電しながら使う」のは避ける。特に非接触充電を行いながら発熱の大きなアプリを使うことは避けたい。発熱すると電流量を下げたり、充電を止めたりする制御が入ってしまうので、さらに効率が悪くなる。思い切って使用を止めて、まずは涼しい状況下で有線接続で充電し、充電を止めてから使うほうがいいだろう。ポケモンGOやドラクエウォークなどをプレイしている時も、充電しながら歩きがちだが、充電は休憩時にすることにして、プレイ中は充電を止めたほうが良い。
バッテリーは熱で劣化するので、あまり高熱にさらし続けるのは良くない。
もちろん、日なたに置かない方がいいし、熱のこもる場所に置かないように心がけたい。初夏以降の停車中のクルマの中に置いたままにするようなことは、絶対に避けたい。
iPhoneケースは、ものによっては熱がこもると言われている。エビデンスはないが、黒くて風通しの悪いものより、明るいファブリック地のもののほうが良いのではないだろうか? この傾向が続いたら、放熱フィンや、冷却ファンのついたiPhoneケースなどが流行るかもしれない。もっとも冷却ファンは、そのモーターの発熱や駆動するバッテリーの熱などが伝わったら元も子もないが。
筆者がデスクで使っているMagSafe充電器は、冷却ファンが備わっており、一定以上に温度が上がると、冷却ファンが回るようになっているが、実際に夏場の充電時でも温度は上がらず高温で充電が止まることはなかった。MagSafeを使うならお勧めだ。
もうすぐ夏がやってくる。これらのことを意識して、涼しいiPhoneライフを送りたい。
東洋経済オンライン
関連ニュース
- 崖っぷち楽天モバイル「最強プラン」の破壊力
- 月収16万、1000万貯めた彼女の「リアルな生活費」
- 赤字縮小の楽天G、三木谷氏に迫る「悪魔シナリオ」
- グーグルの新Pixelが「日本市場」を意識した理由
- 楽天、3700億赤字でも「状況は意外に悪くない」訳
最終更新:5/14(水) 5:32