新しい年が始まり「今年こそ生活や働き方を整えたい」と考えている方も多い時期ではないでしょうか。来月2月13日は年金支給日で、老齢年金・障害年金・遺族年金を受け取っている方々にとって大切な日です。筆者は現役のファイナンシャルプランナーとして、さまざまなFP相談を受けてきましたが、その中で、社会保障制度のうち「障害年金」と「障害者手帳」の違いが分かりにくいと感じている方も少なくありません。
「精神障害者保健福祉手帳とは、どのような方が対象なのだろう」「所持するとどのような支援を受けられるのだろう」と気になっている方もいらっしゃるかもしれません。今回は、厚生労働省の最新の調査結果をもとに、手帳のしくみや所持者の動向、そして雇用の広がりについて、わかりやすく解説します。
※編集部注:外部配信先ではハイパーリンクや図表などの画像を全部閲覧できない場合があります。その際はLIMO内でご確認ください。
精神障害者保健福祉手帳、制度の目的「どんな障がいが対象?」
障害者手帳とは、身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳の3種の手帳を総称した一般的な呼び方です。いずれも、障がいのある方が日常生活や社会活動をより安心して送れるように、必要な支援や配慮につなげるための制度として位置づけられています。手帳を取得することで、障がいの種類や程度に応じた福祉サービスや各種支援を受けられるようになります。
●精神障害者保健福祉手帳
精神障害者保健福祉手帳は、精神疾患によって生活や社会活動に一定の影響がある状態の方を対象としています。具体的には、統合失調症、気分障害(うつ病や双極性障害など)、てんかん、発達障害、高次脳機能障害を含む器質性精神障害、中毒性精神障害など、さまざまな精神疾患が含まれます。
手帳の運営は自治体ごとに異なり、例えば横浜市では従来の紙様式に加えて「カード様式」も選択できるなど、生活スタイルに合わせた形態が選べるようになっています。
手帳の有効期限は2年間と定められているため、継続して利用するには期限の3か月前から行われる更新手続きを忘れないよう注意が必要です。2025年からはオンライン申請を導入する自治体も増えているため、お住まいの地域の最新の申請ルールを事前に確認しておきましょう。
●「どんな支援を受けられる?」手帳を持つことで受けられる支援
精神障害者保健福祉手帳を取得すると、全国共通の制度として税金の控除や公共料金の割引などを利用できます。これに加えて、自治体や事業者ごとに、交通機関の割引、携帯電話料金の優遇、公営住宅の入居支援など、独自のサービスが用意されている場合もあります。
こうした支援は、精神障害のある方がより安定した生活を送れるようにすることを目的としています。また、手帳を所持していることで障害者雇用枠での就職活動が可能となり、職場での配慮を受けながら働く選択肢が広がります。就労移行支援事業所などを通じて、職業訓練や就職後の定着支援を受けることもできます。
次は「精神障害者保健福祉手帳」の所持者について詳しく見ていきましょう。
精神障害者保健福祉手帳、所持者154万人超「5年連続増加!1年で約10万人も増えている!」
精神障害者保健福祉手帳の交付状況は「交付台帳」によって管理されています。厚生労働省の「令和6 <2024> 年度衛生行政報告例」によると、手帳の所持者数は2020年度から2024年度まで5年連続で増加しました。
2024年度末時点では、前年より10万9340人増え、154万7433人に達しています。この数字は有効期限が切れていない有効な手帳の所持者を集計したものであり、手帳が2年ごとの更新制であることも踏まえた実数です。
●等級別にみると「2級」が最多
手帳の等級は1級から3級までに分かれており、2024年度末時点で最も人数が多いのは2級で、89万7292人と全体の過半数を占めています。一方で、前年からの増加率が最も高かったのは3級で、10.0%増と大きな伸びを示しました。
●等級は何を基準に決まるのか
精神障害者保健福祉手帳の等級は、精神疾患の状態と日常生活・社会生活への影響を総合的に評価して決められます。
・1級:日常生活のほとんどにおいて、自力で行うことが困難で、常時の介助や支援が必要な状態
・2級:日常生活に著しい制限があり、日常の多くの場面で継続的な支援や配慮を必要とする状態
・3級:日常生活や社会生活に一定の支障があり、状況に応じた支援や配慮が必要となる状態
この等級制度は、個々の状態に応じた支援を設計することに役立つ仕組みです。適切な支援につなげるためにも、制度を正しく理解しておくことが重要です。
精神障がい者の雇用、過去最高「前年比で15.7%の増加」
厚生労働省の「令和6年 障害者雇用状況の集計結果」によると、民間企業における障がい者雇用は、雇用人数・実雇用率ともに過去最高を更新しました。法定雇用率(2.5%)のもとで、企業による雇用の取り組みが広がっています。
※実雇用率とは、法定雇用障がい者数の算定の基礎となる労働者数に対して、企業が実際に雇用している障がい者の割合
2024年時点での雇用者数
・身体障がい者:36万8949.0人(対前年+2.4%)
・知的障がい者:15万7795.5人(対前年+4.0%)
・精神障がい者:15万717.0人(対前年+15.7%)
と、精神障がい者の増加率が最も高くなっています。
●手帳と就労支援が雇用拡大を後押し
精神障がい者の雇用が大きく伸びている背景には、精神障害者保健福祉手帳を活用した障害者雇用枠での就職活動や、就労移行支援事業所などによる継続的なサポートの存在があります。こうした支援が、企業と働く人の双方にとって安心できる環境づくりにつながっていると考えられます。
福祉制度と雇用の仕組みが連動することで、精神障害のある方が自分らしく社会と関わる機会は確実に広がっています。精神障がい者の雇用が過去最高の伸びを記録したことは、日本社会の受け入れ体制が少しずつ進化していることを示す重要な動きと言えるでしょう。
精神障害者保健福祉手帳、制度の正しい理解と活用が「将来の安心」につながる
今回は、精神障害者保健福祉手帳の制度内容と、所持者や雇用の最新動向について解説しました。手帳の所持者は154万人を超え、特に精神障がい者の雇用者数は前年比15.7%増と、社会全体での受け入れが大きく進んでいることが分かります。
手帳は単なる証明書ではなく、税の控除や就労支援など、自分らしい生活や働き方を守るための大切なカギとなるツールです。制度を正しく理解し活用することで、将来の安心につながるでしょう。
参考資料
・厚生労働省「障害者手帳」
・厚生労働省「令和6 <2024> 年度衛生行政報告例の概況・精神保健福祉関係」
・厚生労働省「令和6年 障害者雇用状況の集計結果」
・神奈川県横浜市「精神障害者保健福祉手帳の交付」
村岸 理美
最終更新:1/14(水) 13:05