トヨタ、北米で仕入先が人手不足 部品逼迫で停止する工場も=関係筋

5/17 16:05 配信

ロイター

Maki Shiraki

[東京 17日 ロイター] - トヨタ自動車が、今年2月から3月にかけて一部の北米工場を頻繁に停止していたことが分かった。現地の人手不足などにより仕入先が部品を十分に生産できなかったことが主な背景で、現在も複数の仕入先工場でぎりぎりの稼働が続いている。トヨタは仕入先と問題の解消に取り組んでいるが、ハイブリッド車(HV)を中心に需要が旺盛な北米で部品不足がアキレス腱になる可能性がある。

事情を知る関係者4人が明らかにし、トヨタが仕入先に宛てた文書をロイターが閲覧した。トヨタが掲げる2025年3月期(今期)の生産計画1000万台に向けて仕入先と足並みをそろえることの難しさを浮き彫りにした形で、今後立ち上げる電気自動車(EV)の北米生産も万全な態勢を整えるために計画を一部見直している。

関係者2人によると、稼働を停止したのはピックアップトラック「タコマ」を生産しているメキシコ・ティファナの工場などで、同工場は19日間止まった。タコマは23年に米国販売の約1割に相当する23万台超を売り上げており、「RAV4」や「カムリ」に次ぐ規模だった。今春からはタコマとして初めてのHVモデルも発売している。

関係者2人によると、トヨタは4月下旬、北米で部品を生産する仕入先の本社宛てに文書を送付。ロイターが閲覧した同文書の中で、トヨタは「弊社北米工場の頻繁な稼働停止によりご迷惑やご心配をおかけしている」と謝罪するとともに、仕入先の「人員・設備・材料供給課題などにより、残業や週末を含む生産余力が減少している」「従業員が頻繁に入れ替わりスキルが低下している」などと指摘している。

また、トヨタは仕入先の北米拠点で直面している課題を5月中旬までに回答するよう各社本社に要請。北米拠点に適切な支援を検討することも求めている。

北米トヨタの広報担当者は、稼働停止などの詳細については言及を控えたが、「北米工場では、サプライチェーンの混乱により断続的な生産遅延が続いているが、この影響を最小限にとどめ、お客様へのご迷惑を軽減すべく、仕入先様とも緊密に連携して可能な限りの努力をしている」と述べている。

強い景気と賃金上昇が続く北米では、より良い労働条件を求めて転職する人が多く、人材が定着しにくい状況にある。ある仕入先の関係者は「インフレを起点に人件費がどんどん上昇しており、その結果、高い給料を求めて従業員が頻繁に転職する。人員の確保が難しくなり、必要な生産量を維持できなくなっている」と語る。

別の仕入先の関係者は「従業員が本当に集まらず、生産が進まない」とし、文書で求められた課題を回答するに当たり、「必要な量を納入できるかどうか懸念があるが、本音を伝えるとトヨタに発注を断られる可能性がある。どこまで正直に答えるべきか悩んでいる」と話す。

関係者2人によると、トヨタは25年12月からのEVの北米生産開始計画も見直し、26年6月に延期した。一部のEVは生産開始時期を先送りしたほか、生産台数も当初の予定から減らした。グループ企業で認証不正が相次いだのを受けて、人手不足などの課題を現状抱える仕入先を含む開発・生産現場の負荷を低減し、品質と安全性を徹底する。

トヨタの前期の営業利益全体は初の5兆円超と過去最高だったが、24年1─3月期の北米事業については275億円の営業赤字(前年同期は253億円の黒字)だった。稼働停止が具体的にどの程度、収益に影響したかなど詳細は不明だが、宮崎洋一副社長・最高財務責任者(CFO)は5月8日の決算会見で、赤字の背景について「部品メーカーを含めた稼働の問題があり、生産が思ったほど出なかった」こと、モデルチェンジに伴い生産ラインやサプライヤーなどの切り替えで「一時的な費用が重なった」と説明していた。

トヨタは今期、約2割の営業減益を予想している。仕入先や販売店の労務費負担、デジタル化などを通じた職場環境の改善などで3000億円、自社向けを含む人的投資として計3800億円を投じる。

佐藤恒治社長は決算会見で、「グループ各社の不正や余力不足の問題に正面から向き合う足場固めが最優先事項」と述べ、「サプライチェーンの基盤をしっかりと守っていくことにまずはしっかりと向き合っていく必要がある」と話した。

ロイター

関連ニュース

最終更新:5/17(金) 16:05

ロイター

最近見た銘柄

ヘッドラインニュース

マーケット指標

株式ランキング