「仮定法未来」を英語ネイティブ並みに使うワザ 仮定法未来の公式は「成り立ち」から理解する

3/21 14:02 配信

東洋経済オンライン

「なぜ現在進行形が未来を意味するの?」「be going to~との違いは?」。英文法にはこういった使い分けが難しいルールがたくさんあります。これらをネイティブのように使い分けるには、英文法を成り立ちから学ぶことが重要です。英語講師の渡辺雄太氏に、「仮定法未来」の成り立ちについて解説してもらいます。
※本稿は『英文法は語源から学べ!』から一部抜粋・編集したものです。

■未来の仮定should/were to――shallの「未来」が弱まり、「万一の仮定」につながった

 shouldとwere toを使うことで、未来についての仮定を表すことができます。しかし、shouldでは助動詞の過去形を使わないことも多々あります。また、shouldは可能性の低い仮定の話をしますが、were toは実現可能性を問わない仮定の話をすることができます。

 なぜそのような使い分けや意味の違いが出るのでしょうか。shouldをメインに考えていきたいと思います。

 助動詞shall/shouldで見たように、shouldはshallの過去形です。shallには「運命として未来は〜だと決まっている」という含みがあります。shallが過去形になり、意味が弱まったものがshouldです。過去形なので可能性が落ちているのがポイントです。

•shouldを用いた仮定法
If S′ should 原形, S would 原形 / S will 原形 / 命令文
「(未来)万一〜なら、…だろう/してください」
※would以外の助動詞過去形(couldなど)も可
 「可能性は低いと思うけど……」という未来の仮定の話をすることができます。ただ、話者に「現実に起きてもおかしくないだろう」という意識があるときは、文の後半部分でwouldではなくwill、命令文などを使用することも多いです。

 こちらが例文です。命令文がpleaseとセットで使用されています。非常によく見る形です。

If you should require further information, please contact us.
「もしさらに情報が必要な場合は、ご連絡ください」
 一方、実現可能性を完全に無視し、未来の仮定をするような場合、were toを使用します。実現可能性を無視した完全な仮定の話なので、文の後半部分ではwouldが使用されます。

•were toを用いた仮定法
If S′ were to 原形, S would 原形
「(未来)もし〜なら、…だろう」
※would以外の助動詞過去形(couldなど)も可
 「完全にありえないこと」から「ありうること」まで、仮定の内容はさまざまです。実現可能性を無視して、頭の中で仮定の話をしています。例文はこちらです。上は「完全にありえないこと」、下は「ありうること」が仮定の内容になっています。

If time travel were to be possible, would you go to the past or the future? 

「もしタイムトラベルが可能になったら、過去に行きますか? 
それとも未来に行きますか?」
If the experiment were to fail, we’d have to start over from scratch.
「もし実験が失敗すれば、最初からやりなおさねばならないだろう」
 なお、生徒からたまに「仮定法現在とshould/were toの違いはなんですか?」という質問を受けます。仮定法現在も未来の出来事に触れているので、違いがわからないという質問です。仮定法現在の例文を見てみましょう。

She suggested that he work harder.(米)
She suggested that he should work harder.(英)
「彼女は彼がもっと一生懸命がんばるよう提案した」
 たしかに「一生懸命がんばる」は、これから起こる出来事です。未来の出来事に言及しているといえます。ここで思い出していただきたいのは、仮定法現在が「命令を表す仮定法」であることです。「今後そうなってほしい」という感覚が流れているのが仮定法現在です。

 一方、should/were toを用いた表現には、そのようなニュアンスはありません。単純に「未来にこうなったら」という頭の中の気持ちを表現しているだけです。

■さまざまな仮定法表現――助動詞を中心に、さまざまな仮定法マーカーが誕生した

 昔の英語には仮定法専用の動詞の活用が存在していました。その衰退とともに、助動詞が仮定法に入り込みました。両者には「話者の主観」という共通点があったからです。

 また一方では、I wishやas if/as thoughなどの仮定法とセットで使用する表現を発達させていきました。これらの表現が前後にあれば、十中八九、仮定法だと判断できます。

 助動詞の過去形やI wishなどの表現は、仮定法の存在を知らせる重要な手がかりです。仮定法のマーカーとでも呼べる表現です。よく使われるものはある程度決まっているので、主要なものを簡単に紹介していきたいと思います。これまで同様、時制に注意を向けつつ確認していきましょう。

 If it were not for〜は、過去形を使っているので、(いま)に対する仮定になっています。If it had not been for〜は、過去完了形を使っているので、(過去)に対する仮定になっています。

•If it were not for〜「(いま)もし〜がなければ」
•If it had not been for〜「(過去)もし〜がなかったら」
→どちらもWithout〜/But for〜で置き換え可
→With〜を使えば逆の意味を表現可
If it were not for music, my life would be very dull.
「(いま)もし音楽がなければ、私の人生は非常に退屈だろう」

→実際は音楽があるので、退屈ではない
If it had not been for your help, I would have failed the exam.
「(過去)もし君の助けがなかったら、試験に落ちていただろう」
→実際は助けがあったので、落ちなかった
 どちらもWithout〜やBut for〜で書き換え可能です。例えば、Without our helpやBut for musicのようにできます。また、Without〜ではなくWith〜を使えば、逆の意味を表現することも可能です。

With your help, I could have passed the exam.
「(過去)君の助けがあったら、試験に合格できただろうに」
→実際は助けがなかったので、合格できなかった

■but「〜を除いて/〜以外に」の語源

 butは「〜を除いて/〜以外に」という意味を持ちます。But for musicもこれに近い意味で使用されています。「音楽がなければ」は、「音楽がある場合を除いて」くらいの意味に解釈できます。

 butの語源はby「そばに」+out「外側」です。外側にあるので、「除外」する意味につながりました。「しかし」という意味もここからきています。

 but「〜を除いて/〜以外に」は、現代英語でも見かける表現です。下に例文を示しておきます。

Everyone but me was promoted.
「私以外みんな昇進した」
He does nothing but complain about his job.

「彼は仕事の愚痴ばかり言う(=何もしない、文句を言う以外)」
 I wish SVとIt is time SV、as if SV/as though SVです。全く別の表現ですが、共通する部分もあるのでまとめて紹介します。

●I wish SV「〜ならなあ」
※Vの時制を1つ過去にずらす(助動詞を使用しないこともある)
●It is time SV「〜してもよい頃だ/する時間だ」
※Vの部分は過去形を使用(助動詞を使用しないのがふつう)

●as if SV/as though SV「まるで〜のように」
※Vの時制を1つ過去にずらす(過去にずらさないこともある)
 例文を見てみましょう。上の例文は助動詞の過去形couldを使って(いま)に対する仮定をしています。下の例文はcould have Vp.p.を使って(過去)に対する仮定をしています。

I wish I could stay longer.
「(いま)もっと長く滞在できればいいのに」

→実際は長く滞在できない
I wish I could have attended the meeting.
「(過去)会議に出席できたらよかったのに」
→実際は出席できなかった

 注意すべきは次の例文です。「若い」「寝る」「知っている」が現実に反するので、全て過去形になっています。ただ、助動詞の過去形がどこにも見当たりません。

I wish I were younger.
「(いま)もっと若ければなあ」
→実際は若くない

It is time you went to bed.
「(いま)そろそろ寝る時間だ」
→実際はまだ寝ていない
He talks as if he knew everything.
「(いま)まるでなんでも知っているかのように、彼は話す」
→実際は知らない
 仮定法にもかかわらず、助動詞の過去形がありません。例えばIt is time SVは、Vの部分に助動詞の過去形を使用しないのがふつうです。しかし、仮定法のマーカー表現It is time SVがあるため、仮定法だと気づくことができるのです。

 「そろそろ〜してもよい頃だ」は、見方を変えれば「まだ〜という行為を実行していない」ということでもあります。現実は違うことを示すため、It is time SVのVは過去形になっているのです。助動詞は使用されていませんが、現実から一歩引く仮定法の感覚は生きています。

 ただ、これらはあくまで例外的な表現です。助動詞の過去形が仮定法のカギであるという基本スタンスは、変えないようにしてください。なお、as if SV/as though SVに関しては、「可能性が高そうだ(仮定の話ではない)」と判断されれば、仮定法を使用しないこともあります。仮定法は話者の主観的な仮定です。最終的には話者の気持ちで、仮定法を使うかどうかが決定されます。

He is talking as if he is drunk.
「まるで酔っぱらっているかのように、彼は話している」
→実際酔っぱらっているようだ
→現在の「事実」とみなしているので現在形を使用

■倒置

 WereやHad、Shouldなどがifの前に移動すると、ifが省略されます。これを倒置と呼び、かたい響きを持ちます。

If he had taken my advice, he wouldn’t have made that mistake.

Had if
he taken my advice, he wouldn’t have made that mistake.
「(過去)彼が私の助言を聞いていたら、
(過去)そのミスを犯さなかっただろうに」
→実際は助言を聞かなかったので、ミスを犯した

 倒置によるifの省略は、疑問文に由来するという説があります。「〜だろうか。もしそうならば…」という感覚で理解できますね。なんでもかんでも倒置できるというわけではなく、倒置はWere/Had/Shouldに限られる(稀にMight/Couldも)ので注意してください。

 文頭の倒置は比較的見抜きやすいです。カンマがあるので、文の切れ目がわかります。また、助動詞の過去形が使用されているので、仮定法の存在にも気がつくことができます。

 一方、次のパターンは、慣れるまでは厄介です。

Please contact the manager should you have any problems.
 ifの省略に気がつくことができるでしょうか。また、文の切れ目がどこかわかるでしょうか。この英文は、次のような構造をしています。

Please contact the manager if you should have any problems.

Please contact the manager should if
you have any problems.
「万一問題があれば、マネージャーにご連絡ください」

 ifのカタマリが後半にきているため、文の切れ目が見えにくくなっています。また、shouldのもう一方(Please contact〜)は、助動詞の過去形を伴わないことも多いです。

 このパターンについては、「文中でshould S’という語順を見たらif省略の可能性を疑う」とあらかじめ認識しておくのが大切です。同時に、「〜だろうか。もしそうならば…」という感覚を持っておくと、文中の倒置にも反応できるようになるでしょう。

■その他

 最後にその他のパターンをリストで簡単に示します。「もし〜ならば」がさまざまな箇所に潜んでいます。各パターンを丸暗記するというよりは、全て助動詞の過去形に注目することが大切です。さっと読み流し、「このようなパターンがあるのだな」と軽く認識するだけで十分です。

●不定詞to V「〜すれば」
To hear him talk, you would think he was a genius.
「彼の話を聞けば、君は彼が天才だと思うだろう」
●副詞句「副詞句ならば」
In your place, I would accept the offer.
「あなたの立場ならば、私はその申し出を受け入れるだろう」
●otherwise「さもないと」
You should apologize; otherwise, she might not speak to you

again.
「あなたは謝るべきです。そうしないと、彼女はもうあなたに話し
かけてくれないかもしれません」
●名詞 and「名詞をすれば」
One more mistake and you would be fired.
「もう一回ミスをしたら、あなたはクビになるだろう」
●主語「主語ならば」
An honest politician would not break their promises.
「誠実な政治家ならば約束を破らないだろう」

 なお、表現によっては「もし〜ならば」を直接的には含まないものもあります。例えば次のような場合です。

Couldn’t be better.
「絶好調」
→「より良くなれなかった」ではない
I couldn’t agree more.
「大賛成」
→「もっと賛成できなかった」ではない
 どちらも言外に「他のどんな状況と比べたとしても」という意味を含む表現です。「これ以上良くはなれないくらい最高だ」「これ以上賛成はできないくらい賛成だ」ということです。

 「良くなれなかった」「賛成できなかった」ではないので要注意です。主要な表現をあらかじめ確認しておくとともに、「助動詞の過去形が単純な過去の意味で使用されることは少ない」という傾向を改めて認識することが大切です。

東洋経済オンライン

関連ニュース

最終更新:3/21(金) 14:02

最近見た銘柄

ヘッドラインニュース

マーケット指標

株式ランキング