ユニクロ柳井正の「日本亡国論」は正しかった…!それでも、経済評論家が考えた日本人が生き残るための「最後のチャンス」

9/25 6:30 配信

マネー現代

柳井正の「日本滅びる」発言、私はこう考える

ユニクロを運営するファーストリテイリングの柳井正CEOが問題提起をした「日本は滅びる」発言が話題となっています。

前編『「日本人は滅びるんじゃないか」ユニクロ柳井正の「亡国論」を経済評論家が検討した結果…やっぱり「日本はヤバかった」!』でお伝えしてきたように、柳井氏はアジアの若者をたくさん育てているのですが、勉強をした彼ら彼女たちが自分のキャリアを花開かせる場所として、日本ではなく他の国を選んでいる状況を憂えています。

そして、柳井氏はテレビのインタビューで、「少数精鋭で仕事するということを覚えないと日本人は滅びるんじゃないですか」と発言しました。

権限移譲が不十分な伝統的な日本企業は、自分が決めて責任をとらされるのが嫌な人が多いため、なかなかそのような機動的な組織は多くはありません。ところが、国際競争となるとそれでは後手にまわってしまい、柳井氏は少数精鋭で仕事をすることを覚えない日本人は滅びると指摘したのです。

さて、実はこの話、もう少し根深いものがあります。というのは、この現象はふたつの要因で変化していくと予測されるのです。

ひとつはこの現象は伝統的な日本企業だけの話ではなく、世界的に蔓延する組織の病的な症状である要因であること。そしてもうひとつはAIの出現です。

では、世界的にまん延する組織の病的な現象とは何か、また、AIの出現でそれがどのように変わるのか。

詳しく見ていきましょう。

「クソどうでもいい仕事」が増えたハリウッドの落日

まずはひとつめの世界に蔓延する問題の話です。ブルシットジョブという言葉を聞いたことがある方は多いのではないでしょうか。最近は日本語で「クソどうでもいい仕事」と訳されています。

定義は、

「自分の仕事が何の役にも立たない仕事であることを本人が自覚している仕事」

とされます。

こういった仕事は大組織で、何やら偉そうな肩書をつけている人がやっていることが多いのです。「シニアエグゼクティブ・アドバイザー・フォーなんちゃら」みたいなポジションで、給料がいいだけでなく、それなりにその肩書から本人は自尊心を得られる。しかし本当はその仕事が役に立っていないことは、本人が一番よく理解しているというものです。

このような仕事が増えているのではというコラムに刺激をうけて、ヨーロッパのメディアが本格的に調査をしたところ、広範な業種のさまざまなホワイトカラーの仕事の中には一定数、このような仕事が含まれていることが判明しました。

推定でいえば、全仕事量の3割から4割を占めるのではないかといいます。

たとえば映画産業の中心地といわれるハリウッドでは、このような肩書のひとたちが激増しているそうです。そのため新しい映画の企画を作ろうというひとたちは、このひとたちに翻弄されます。

本来はプロデューサーと脚本家、監督の3人で決めればいいストーリーも、周囲の何十人といるエグゼクティブなんちゃらの意見を聞いているうちに、どんどん角がとれてつまらない映画が出来上がってきます。

この状況に目をつけて成長したのが、ネットフリックスという会社です。

くだらない肩書の仕事を廃して、現場の責任者にすべての権限移譲をします。するとスタジオに活気がでて、どんどんいい作品が生まれます。結果として力量のあるクリエイターたちはどんどんネットフリックスを訪れるようになるという、好循環が生まれています。

ユニクロの柳井氏が問題提起したことは、この例でいえば日本企業はハリウッドのようになりたいのか、それともネットフリックスを目指したいのかということです。

より少人数で仕事をすることを覚えなければいけないというのは、後者でなければこれからは生き残っていけないという意味なのです。

AIで「超少数精鋭チーム」が台頭

もうひとつの世界的なトレンドが、仕事への生成AIの導入です。2023年に一大ブームを巻き起こした生成AIは、2025年から2026年頃までには仕事のツールとして確実に定着していきます。

物凄くシンプルな想定として、ビジネスパーソンが仕事をする際にパソコンでは有料版のChatGPT製品を、スマホではiPhoneならアップル・インテリジェンスを使うようになると想定します。書類を作成するWordやパワーポイントにも、スケジュールやメールを管理するOutlookにも、マイクロソフトのコパイロットが標準装備されるとしましょう。

この状況が意味することは、チームとか部下といったリソースがほぼほぼ不要になるということです。

仕事を進めるにあたってあなたが仮にチームリーダーだとして、部下たちに、

「〇〇について調べておいてくれ。現地に行って情報を集めて、一週間後に報告してほしい」

とか、

「さきほどの会議の議事録をまとめたうえで、うちのチームがやるべき今後のアクションを列挙して報告してくれないか」

といった作業が、部下の代わりに生成AIが瞬時にこなしてくれるようになります。

「生成AI時代」に組織に起こる大変化

この変化の結果、近い将来、超少数精鋭型の経営チームが生まれると予測されています。巨大企業が非常に大きな仕事をこなしていくための本社機能が数千人の組織を必要とせずに、数十人の超少数精鋭の組織にとって代わられるという予測です。

そのような未来で必要なことは、その組織に所属する人材が非常に高い能力を持っていることと、同時に、その能力が高い人材に権限移譲を行えるかどうか。

このふたつです。

日本企業の場合、前者についてはある程度乗り越えられそうです。というのも基本的に高学歴で高い能力を持つ人材を新卒から採用する下地が存在するからです。

一方で日本企業ができていないのは、そのような人材に権限を与えることです。組織として心配だということから、その人材が何かをしようとした際に、それを承認する人々や、根回しをしてもらってあらかじめ知らされていないと邪魔をする人々が伝統的な日本企業には山ほど存在するのです。

その状況は、AI搭載のグループウェアを用いれば簡単に少人数組織へと移管できます。あとは、それをやるかやらないかです。

そこで「日本は滅びるのか」という冒頭の議論を考えてみましょう。

世界中の企業が同じチャレンジに直面し、海外ではおそらくかなりの数の企業がそのチャレンジを乗り越えていくでしょう。そうなった場合に、それを乗り越えられない企業は滅んでいきます。

そのとき、日本企業にはITやAIをよく知らないし、触ることもしないひとたちが組織の上のほうにたくさんいます。そういったひとたちは全員参加型の経営でないと嬉しくない。だから抵抗勢力になります。

となると多くのJTC(Japanese Traditional Company)と揶揄される伝統的日本企業は、柳井氏の危惧のように滅んでしまうのではないでしょうか。この議論、未来予測のテーマとしてはひときわ背筋が冷たくなる予測だと私は思うのです。

仕事が無くなってしまうのか…?

ちなみにこのような未来について、

「そんなことをしたら自分の仕事がなくなってしまう」

という意見はよく聞きます。

ここは正直予測が難しいところではありますが、仮に、世の中にユニクロのようにどんどん権限移譲をして少人数で回る会社が増えてくると、そうではない会社も同じようにしていかないと生き残れなくなります。

そうすると生き残っていく会社の中では必然的に人が余るようになります。しかも日本ではそのようなひとたちを解雇することが簡単にはできません。一見、これは大問題です。

ところがAIが使える世の中になってくるとわかるのですが、そういったあぶれたひとたちは経営者がその気になれば少人数のチームを作ることで、会社の中で新たな事業を起業できるのです。

超少数精鋭チームが無数にできて「成長する未来」

これがシュンペーターが提唱したイノベーションの本来の姿です。

AIというイノベーションが起きて、これまでよりも少ない労働者数で同じ仕事がまわるようになる。すると組織の中で失業したひとたちのリソースを新しい事業に投入できるので、結果として会社はさらに成長し、社会全体としてはGDPが増加するわけです。

転換点になるのは生成AIが実用化される2026年頃でしょう。ここで論じてきたような未来が必ずやってくると予測されます。

さらに連載記事『トヨタもセブンも時価総額でみんな惨敗…!それでもなお、20年後も一流であり続ける「日本唯一の巨大企業」の名前』でも、日本経済の未来予測について解説しています。

マネー現代

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最終更新:9/25(水) 6:30

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