「中国人の“爆買爆旅”は全てここから始まる?」3億人以上が利用する中国最大の口コミ型SNS「RED(小紅書)」の知られざる真実
バイデン政権下の時にTikTokがアメリカで一時的に利用禁止となった際、多くのユーザーが代替プラットフォームを求め、「RED(小紅書)」がアメリカの無料アプリランキングで1位となった。
「RED(小紅書)」は中国国内でも急速に注目を集め、新たなマーケティングトレンドとしても定着しつつある。とくに若年層の消費行動に大きな影響を与え、ブランドの認知拡大や商品プロモーションに不可欠なツールとなっている。
中国市場は世界最大級の成長市場であり、その動向を理解し適応することは、日本企業にとっても今後のビジネス戦略において重要な要素となるだろう。
本連載では、北京で広告会社を経営し、北京大学MBAにも通う岡俊輔氏が、「RED(小紅書)」の持つ影響力や日本企業がとるべきアクションについて詳しく解説する。
■中国で今最もホットなマーケティングツール「RED」
ここ数年、中国市場を狙う企業やインバウンド需要を取り込もうとする業界では「RED(小紅書)」というワードが急速に注目されています。
「RED(小紅書)」は日本国内ではまだ知名度こそ高くありませんが、中国本土のユーザーの間では、買い物や旅行情報の収集に欠かせない存在です。
コスメや食品、ファッション、家電、さらには旅行や飲食店情報まで、あらゆるカテゴリで「まずRED(小紅書)で調べる」という流れが定着しつつあるのです。
私は北京に住んでいますが、この数年でこの「RED(小紅書)」というSNSは存在感を大きく増しました。
特に若い女性は、何か物を買うときや、どこかのお店や観光スポットに行くときは、ほぼ必ずこのSNSを見ます。
私が通っている北京大学MBAの同級生には、私のように広告会社を中国で経営している友人が何人もいるのですが、中国現地において今最もホットなデジタルマーケティングは「RED(小紅書)」だと皆言います。
私自身も北京で広告会社を経営している身として、中国で「RED(小紅書)」を活用した広告案件を多く経験してきましたが、今後の日本においても、この「RED(小紅書)」の活用が、特に訪日中国人観光客向けのマーケティングツールとして間違いなく活用されることを確信しています。
またMBAの課外授業の一環で「RED(小紅書)」の上海本社に訪問するプログラムが組まれていたり、超有名IT企業から「RED(小紅書)」に転職を決意したクラスメイトもおり、北京大学MBA内においても、とても注目されている企業です。
本稿では、なぜ中国国内で「RED(小紅書)」がここまで必須のマーケティングツールになったのか、そして日本企業にとってどのようなインパクトがあるのかを紹介します。
さらに、すでに日本企業が「RED(小紅書)」を活用して成果を上げている事例も交えながら、その可能性と戦略のポイントを解説します。
■日本企業にとって「RED(小紅書)」活用が必須な理由
中国市場ではFacebookやInstagramなど海外のSNSが規制されていることから、中国発の独自SNSが圧倒的影響力をもつ構造があります
「WeChat(微信)」や「Weibo(微博)」「抖音(Douyin)」といった大手SNSが知られていますが、近年とりわけ台頭しているのが、この「RED(小紅書)」です。
中国では、生活関連のあらゆる情報を「RED(小紅書)」で検索し、口コミを頼りに購買や旅行プランを決定する人が急増しています。
「RED(小紅書)」は、中国の若年層・女性ユーザーを中心に圧倒的な影響力を持つソーシャルコマースプラットフォームです。
ユーザー数は2024年11月に3.3億人に達し、2025年1月には、アメリカでの日間アクティブユーザー数(DAU)が1日で約300万人増加しました。
このプラットフォームでは、ユーザーが商品やサービスのレビュー、体験談を投稿する「種草(シードプランティング)」文化が根付いており、「RED(小紅書)」で話題になった商品が中国市場でヒットするという公式が、いま中国市場で成り立っているのです。
こうした潮流を踏まえると、「中国でのマーケティング=『RED(小紅書)』をどう活用するか」とも言えるほど、「RED(小紅書)」の存在感が増しています。
実際、コスメ・ファッション・食品・家電など多彩な分野で、「RED(小紅書)上でバズった商品がヒット商品になる」というケースが相次いでおり、中国の若い消費者を取り込む際には不可欠なチャネルと見なされています。
■信頼性を支えるのは「厳格なコンテンツ審査」
「RED(小紅書)」が急速に影響力を拡大した背景には、「徹底したコンテンツ審査」による高い信頼性があります。
運営側は、低品質な投稿や不正なマーケティングを厳しく取り締まり、「プラットフォーム全体の健全性」を維持することに注力してきました。
たとえば旅行分野では「写真詐欺」への対応も話題となりました。
ユーザー投稿の写真と実際の景色が大きく異なることが問題視された際、「RED(小紅書)」運営は公式に謝罪し、「避けるべき観光地ランキング」の導入を発表しました。
このような取り組みを通じて、ユーザー体験を守る姿勢を示しています。
これらの施策により、「RED(小紅書)」は他のSNSと比べても情報の信頼度が高いと評価され、結果的にプラットフォーム上の企業マーケティングも消費者に受け入れられやすくなっています。
こうした徹底したガバナンスが「RED(小紅書)」の「購買に直結する信頼性」を支えているのです。
すでに多くのグローバル企業が「RED(小紅書)」に公式アカウントを開設し、KOL(インフルエンサー)とのタイアップやキャンペーンを展開しています。
カバーする業種も美容から飲食、旅行、家電、ライフスタイル系まで幅広く、公式アカウント数は数年前の倍以上になりました。
■国外企業も続々参入、一方で日本企業は出遅れ?
一方で、日本国内ではまだ、「『RED(小紅書)』とは何かわからない」「中国版Instagram程度に思っていた」といった声が多いのも事実です。
しかし、中国マーケットを狙う以上、このプラットフォームの攻略は必須です。
むしろ、早い段階でアカウントを開設し、コンテンツの最適化やKOLとの連携を始めることで、中国人ユーザーの信頼と共感を得られる可能性が高まります。
中国のZ世代やミレニアル世代にとって、商品選びや旅行先の検索は「まず『RED(小紅書)』が当たり前」になりつつあります。
「WeChat」や「Baidu」検索(中国版Google)ではなく、「RED(小紅書)」の口コミ投稿を優先してチェックするのです。
これは、「RED(小紅書)」が写真や動画、テキスト情報を組み合わせた「実体験ベースの口コミ」を豊富に持つからです。
たとえば美容・コスメ分野では、「RED(小紅書)」での口コミや評価が購買の決定打になります。
ユーザーは「使ってみてどうだったか」をじっくり読み込み、共感できればすぐにECサイトで購入するか、「RED(小紅書)」内のショップ機能でそのまま買ってしまう。
こうした「情報検索から購入までの流れ」が「RED(小紅書)」内で完結していることが大きな強みです。
■「RED(小紅書)」を外すと、競合に遅れをとる
中国国内企業が「RED(小紅書)」を駆使している理由は、「ユーザーがそこにいるから」という極めてシンプルなものです。
中国のコスメブランドの「完美日記(Perfect Diary)」は、「RED(小紅書)」でのクチコミ拡散戦略を徹底することで、創業から数年でロレアルや資生堂と肩を並べるトップブランドへ成長しました。
飲料の「元気森林」やおもちゃの「泡泡瑪特」も、「RED(小紅書)」でのバズを起点に大ブレイクしています。
このように、多くの中国ブランドが「『RED(小紅書)』で種をまき、消費者の需要を喚起してから、ECで爆発的に売る」という手法を確立してきました。
もしここで海外企業が「RED(小紅書)」を活用しないとなれば、すでに「RED(小紅書)マーケティング」に慣れた中国ブランドに対して大きく不利になります。
ユーザーに製品情報を見つけてもらえなければ、そもそも比較検討の土俵に上がることすら難しくなるのです。
次の記事では実際の活用事例を紹介しながら、日本企業がどう対応していくべきかなどについて解説していきます。
東洋経済オンライン
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最終更新:3/16(日) 17:32