「毎日同じことの繰り返し」から部下を救うには 仕事に区切りをつけるための「正しい労い方」

4/19 7:02 配信

東洋経済オンライン

昨日やっていた仕事の終わりも見えず、今日も同じ仕事をただ続けていただけという感覚を持ったことのある人はいないだろうか。
過去に決めたことをやり続けるだけの「続行」モードに入ってしまった人を救い出すためには、「労う」ことが大切だと、米海軍の原子力潜水艦「サンタフェ」の艦長を務めたマルケ氏は述べる。
では具体的にどう労えばいいのだろうか。マルケ氏がまとめた、リーダーの言い方についての指南書『最後は言い方』から紹介しよう。

■なぜ「労い」が大事なのか

 私たちの仕事には、意思決定(青ワーク)と実行(赤ワーク)の2つがある。

 同じ作業をいつまでも続けるということは、状況の変化にかかわらず、過去の意思決定に従い続けるということだ。そうなったら、仕事に「区切りをつける」必要がある。

 区切りとは、実行(赤ワーク)から脱して、意思決定(青ワーク)に向かう瞬間を指す。区切りをつけることは、過去の意思決定から頭を切り替える役割を担っているのだ。

 そこで重要になるのが、「労う」ことだ。労いがあることで、これまでの活動が終わった、つまり区切りをつけてよいという実感が生まれ、次の段階へ進めるようになる。

 また、意思決定(青ワーク)においても、労いは重要だ。

 いかに作業を中断させずに生産活動を続けるかが重要視された産業革命期とは異なり、今日の職場では、考えること、新しいものを生み出すこと、イノベーションを起こすこと、決断を下すことが非常に重視されている。

 しかし、意思決定(青ワーク)の際に、十分なアイデアや意見を生み出したかどうか、持てる知識を惜しみなく共有したかどうかは、生産作業の結果がわかりやすい赤ワークと異なり、本人以外にはわからない。

 最善を尽くしたフリをするのは簡単で、リーダーにはそれを見破る術がない。だからこそ、全力を尽くしてほしいなら、望ましい言動をとったことへの報酬が必要だ。

 この報酬が「労い」というわけだ。

■外からではなく、一体となって労おう

 では、労う際には、どんな言い方をすればいいだろうか。

 あるチームのメンバーが、やり遂げたことを上司に見せて、「素晴らしい!」と言われたとしよう。

 だがすぐに、こういう言葉が続く。「ところで、ここをこう変えたいと思うんだけど……」

 こんなせりふを聞いたことはもちろん、自ら口にしたことがある人は多いのではないか。この種の典型的な労いにはいくつか問題がある。

 まず、何かを達成したと実感させる効力がない。

 形だけ労ったところで、やり遂げた人が苦労話などをする機会が生まれないし、次のステップへ移るタイミングだと気づかない恐れがある。それでは、今後役に立つことが何も掘り出せない。

 形だけの労いは、協力関係からではなく、上の立場から生まれる。それは下の立場の人を外から称えるだけのものであり、彼らと一体になって達成を喜んでいるのではない。

「よくやった」と言うだけの褒め方はよくない
 労いは、「称えること」と同義ではない。

 外から褒め称えることが労いだと自動的に考える人はあまりにも多い(その原因は両親のせいであることがほとんどだ)。

 昔ながらの称賛を送ったところで、職場では何の意味もない。称賛された人は、称賛した人に対して、支配的で身勝手で、恩着せがましいと感じるからだ。

 ◆「よくやった」

 ◆「すごい!」

 ◆「本当に頑張った」

 こうした言葉は、外から褒め称える労いの典型だ。

 なぜ「外から」になるかというと、褒める人は、褒めることで自分がいいことをしている気分になり(親が子供を褒めるときも同じだ)、達成したことの良し悪しを判断する立場になっているからだ。

■「外から」ではない褒め方の例とは

 「すごい」といった褒め言葉は、褒めた当人が、すごいと感じている自分がすごいという心理的な報酬を得ているのだ。

 いい気分になるのは褒めたほうであり、褒められた相手には、内発的ではなく外発的な動機づけが生まれる。

 その結果、達成することそのものではなく、親や上司を満足させるという外的な要因で満足を得ようとするようになる。

 この種の発言は、マネジャーや責任者に良し悪しを判断する権利があると言っているようなものだし、発言の目的は明らかに、褒めた行動の頻度を増やさせることにある。

 これは人を操る行為であり、他者の言いなりにしていればいいというメンタリティを誘発する。

 では、「外から」ではなく、一体となって労うとはどういうものか。

 それは、相手の言動を評価することなく感謝を伝えることであり、良し悪しを判断することなく見たままの感想を伝えることであり、褒め称えるのではなく相手の言動を尊重することである。

 自分が見たままを描写し、それに対する感謝の意を表すと、労いは次のような言葉になる。

 ◆「プレゼンを3つのセクションに分けたのか。なるほど、そうした意味がよくわかる」

 ◆「予定どおりに製品を発表できそうだね。君のチームはあらゆる部署と連携をとってきた」

 ◆「例の提案を昨日送ってくれたんだな。ありがとう。おかげで週末までにクライアントに目を通してもらえそうだ」

 相手の言動を描写するときは、「なるほど」「~だとわかる」「~になりそう」といった言葉を使うことを心がけるとよい。

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最終更新:4/19(金) 16:36

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