年金を繰り下げ受給するのに、向いている人って?
老後のお金や生活費が足りるのか不安ですよね。老後生活の収入の柱になるのが「老齢年金」ですが、年金制度にまつわることは、難しい用語が多くて、ますます不安になってしまう人もいるのではないでしょうか。そんな年金初心者の方の疑問に専門家が回答します。
今回は、年金の繰り下げ受給に向いている人についてです。
◆Q:繰り下げ受給に向いている人って?
「年金はできるだけ遅くもらったほうがお得ではないかと思っています。どんな人が繰り下げ受給するのに向いているんでしょうか?」(57歳男性)
◆A:年金受給開始までの生活費を賄うだけの収入を得ることができる人、金融資産を保有している人等です
現在、老齢年金は、65歳で請求せずに66歳以降、最長75歳までの間で、申し出た時から繰り下げて請求できます(※)。
※昭和27年4月2日以降生まれの人、受給権発生日が平成29年4月1日以降で、老齢年金の受給権を取得した日から起算して5年を経過していない人が対象。それ以外の人は最長70歳まで
繰り下げ受給の請求をした時点に応じて、ひと月あたり0.7%の年金額が増額されます。つまり、増額率は、繰り下げ月数×0.7%(0.007)と計算しますので、75歳まで繰り下げると、65歳時点の年金額より84%増額された年金額を受け取れます。増額された年金額は一生涯続きますので、老後生活の安心材料となります。
ただし、繰り下げしている期間は年金がもらえませんので、日々の生活費を賄うためには、年金受給開始までは働いて収入を得る、もしくは貯金を取り崩すことになります。また、老後の生活費をダウンサイジングすることも必要になるでしょう。
まとめると、下記のような人は、繰り下げ受給が可能です。
【1】年金受給開始まで、働いて収入を得ることで生活費を賄える人
【2】勤労収入は少ないけれど、保有している預貯金を補えば、年金受給開始までの生活費を賄える人
【3】多額の金融資産を保有していて、年金受給開始までの生活費を賄える
逆に、上記のような人以外は、繰り下げ受給をすることは難しくなります。
なお、繰り下げ受給をした結果、受け取る年金額が多くなりますので、所得税や住民税の負担が重くなることや、国民健康保険料や介護保険料の負担が多くなる可能性も高くなります。さらに年金収入が現役並みの所得に該当してしまうと、医療費の自己負担額が3割負担、介護保険サービスの利用も、2割もしくは3割負担になる可能性もありますので注意しましょう。
監修・文/深川 弘恵(ファイナンシャルプランナー)
都市銀行や保険会社、保険代理店での業務経験を通じて、CFP、証券外務員の資格を取得。相談業務やマネーセミナーの講師、資格本の編集等に従事。日本FP協会の埼玉支部においてFP活動を行っている。
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最終更新:11/11(月) 8:10