負債総額15億円で「住宅王」が自己破産、建設会社の倒産相次ぐ背景《楽待新聞》

4/16 19:00 配信

不動産投資の楽待

収益用不動産の建設・販売を手がける「住宅王」(東京都港区)が、3月15日に東京地裁へ自己破産を申請し、同日破産手続き開始決定を受けた。債権者は一般債権者を中心に257人、負債総額は約14億9700万円にのぼった。

同月29日には、東京都内を中心にRCマンションの建設を行う「暁(あかつき)建設」も事業停止を発表し、破産申し立ての準備に入った。負債は2023年7月期末時点で約55億円。建設業者の相次ぐ破綻の背景には何があるのか―。

■賃貸用不動産「King house」を企画販売

住宅王は、先代の創業者が建築工事および不動産売買を目的として、リーマン・ショック後の2010年9月に設立された。

当初は、不動産を仕入れて建物を建築して販売するという、デベロッパー的なビジネスモデルで事業を展開。不動産オーナーや個人の資産管理会社を主力得意先として、賃貸用不動産「King house」の企画や販売を行ってきた。

東京23区内を営業エリアに、収益用物件の規模としては数千万円から5億円超の大型案件まで扱い、コロナ禍前の2019年5月期には年売上高21億9900万円を上げた。

翌2020年5月期は新型コロナ下で従業員の安全を最優先する方針を打ち出し、施主と交渉して現場の大半をストップさせたことで、工事の進行は計画を大きく下回った。

主力の工事事業が減収となり、同期の年売上高は前期比28%減の15億6700万円にとどまった。

その後は、大型の長期案件を複数受注したこともあり業況は回復。2022年4月には常務取締役が新たに代表取締役に就任して経営体制を刷新し、同年5月期の年売上高は過去最高となる30億3300万円にまで伸ばした。

その後は不動産を仕入れるプロセスを止め、共同住宅の建築施工に注力。新体制への移行後、立て続けに約10件の案件を受注した。

新たなビジネスモデルは奏功したかに見えたが、住宅王を取り巻く外部環境の悪化が当初の計画を少しずつ狂わせていった。この間、業績が拡大する半面、管理体制の不備も指摘されていた。

加えて、コロナ禍に拍車がかかった原材料費や人件費の高騰で、各種建築費用が嵩んだ結果、赤字工事が相次いだ。

業容拡大を見越して新規の採用活動も積極的に実施したため、関連する販管費も増加。2023年5月期の業績は、年売上高は前期比2割以上の減収となる23億9200万円にとどまり、当期純損益は1億6400万円の赤字計上を余儀なくされた。

■取引先の間で信用不安、下請けトラブルも

「(住宅王からの融資打診に対して)取引金融機関が消極的なスタンスを示しているらしい」―。この頃になると、取引先の間でこうした風評が流れはじめた。

さらには都内の大型工事案件で、外注業者との間でトラブルが発生。昨年秋、下請け業者が不採算を理由に契約関係から離脱し、すでに同社が発注済みであった建築部材(2億円)について、元請けである当社が立替払いを強いられ、資金繰りが急速に悪化していった。

このため、既存の取引金融機関のひとつに資金繰りの相談を行ったところ、昨年末、返済期日を2024年1月末日とする「超短期」のつなぎ融資(2億円)が実行された。

だが、他の現場においても計画通りの資金繰りとはならず、同じ取引行に相談を続けた。すると、取引金融機関の担当者との間で「いったん2億円の約定返済がなされれば、同じ日に3億5000万円の融資を行う」旨の口約束が交わされたという。

「なんとか資金繰りをつなぐことができた」―。会社側はおそらく安堵したはずだ。1月末は、複数の現場で下請け業者に対する代金支払いが予定されていたが、この言葉を信じてこの取引金融機関の口座に入金が行われた。

しかし、「(金融機関内での)決裁が下りなかった」として3億5000万円の追加融資は実行されず、当座の資金繰りのメドが立たなくなった。この影響もあって多方面で支払遅延が発生し、取引先の間で一気に信用不安が高まった。

2月上旬、中小企業活性化協議会への相談を開始し、複数の金融機関との間で借入金の返済期日変更(リスケジュール)の交渉を進めた。

あわせてスポンサー企業への事業譲渡による再建の道を模索したものの奏功せず、この間に施主から請負契約を解除された結果、なんとか完工した工事現場を除いて施工現場を失うなど、「時すでに遅し」の状態だった。

そして迎えた3月15日、従業員に対して解雇を予告するとともに、東京地裁へ自己破産を申し立てた。

■「暁建設」と「住宅王」の共通点

足元で建設業者の倒産が急増している。2023年度(2023年4月~2024年3月)の建設業倒産は1749件発生し、前年度(1291件)に比べて35.4%(458件)の大幅増加となった。その大半が小規模企業だが、年度末にかけて地場上位クラスの倒産も発生している。

2011年創業の新興の建築工事会社「暁建設」(埼玉県戸田市)は3月29日に事業を停止し、自己破産申請の準備に入った。負債は2023年7月期末時点で約55億1800万円だが、大幅に変動している可能性がある。

同社は積極的な営業姿勢とM&Aで業容を拡大させ、2018年7月期に約6億7300万円だった年売上高は、2023年7月期に約53億1700万円まで伸ばしていた。

しかし急成長を続けた一方で、業容の拡大に内部管理体制が追い付かず、資金繰り破綻したのは今回紹介した「住宅王」と同様の構図だった。



資材高による収益悪化に加え、人手不足による工期延長などを背景に、一定の受注を確保しながらも資金繰りに行き詰まる「黒字倒産」に引き続き注意が必要だ。

内藤修/楽待新聞編集部

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最終更新:4/16(火) 19:00

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