婚活で苦戦するバリキャリ女性に共通する切実な「問題」 理想の結婚と現実のギャップが埋められない

4/11 9:21 配信

東洋経済オンライン

ジェンダー平等という言葉を最近よく耳にするようになった。SDGs目標の1つで、1人ひとりの人間が性別に関係なく、平等ということだ。
テレビのワイドショーやトーク番組のMCも、男女の性差を伝えるような言葉は避ける傾向になっている。こうした世の中の動きは、婚活シーンでも、如実に反映されるようになった。しかし、家庭内でのイコールな立場を主張しすぎる女性は、婚活に苦戦しているのも事実。
仲人として婚活現場に関わる筆者が、婚活者に焦点を当てて、苦労や成功体験をリアルな声とともにお届けしていく当連載。男女はもちろん平等なのだが、結婚において平等の先にある“大切なもの”とは何かを考えてみよう。

■「美味しいご飯を作って」はダメ? 

 お見合いを終えたみきお(65歳、仮名)が、お相手女性のかなこ(55歳、仮名)について、こんな感想をもらした。2人ともシニアだが、お互いに初婚同士だ。

 「彼女は、上場企業の部長さんで収入もしっかりある。なんで今さら婚活をしてまで結婚をしたいと思っているのかが、わからなかった。お見合いの席で、シニア婚の理想論を語っていましたが、私はそんな彼女にちっとも魅力を感じなかった」

 彼女が考えるシニア婚とは、お互いがこれまで生きたうえで培ってきた経験や、価値観を認め合いながら、共有できる時間を一緒に楽しく過ごすということだそうだ。60歳の定年までは働くので、「それまでは家庭生活よりも仕事を優先させたい」とも言った。

 「ニコリともせずに雄弁に語るんです。その後に、『あなたの理想の結婚とは、どんなものですか?』と聞かれたのですが、『奥さんには、美味しいご飯を作ってほしいです』なんて言ったらバカにされそうで、答えに詰まってしまいました(苦笑)」

 昭和30年代生まれのみきおにとっての結婚生活とは、男性が経済的な主軸を担い、女性は専業主婦か簡単なパートをして子育てを担う、というのが一般的なスタイルだった。また、そういう親に育てられて大人になった。

 子どもの頃に流行っていた昭和歌謡やテレビドラマも、恋愛や家庭生活における男と女の役割は、明確に分けられていた。男は男らしく、女は女らしくという言葉がまかり通っていた時代を経て、大人になったのだ。

 一方、そうした時代背景の中で、かなこは男と肩を並べて会社で仕事をし、今のポジションを勝ち取ってきたのだろう。彼女の中には、夫のために尽くす妻の写像はないし、そうした結婚生活は望んでいない。

 そんな彼女に、「結婚したら、美味しいご飯を作ってほしい」と言えなかったみきおの気持ちは、筆者もわかるような気がした。

 ただ、彼女がこの調子でお見合いをしていたら、成婚はかなり難しいだろう。同世代の男性たちは、これまでの伝統的な価値観のもとで役割を担うパートナーを選ぶ傾向にあるので、彼女を結婚相手としては魅力的に感じない気がするのだ。

■確かに男女平等なのではあるが

 一方で、かなこのような“男女がイコールな立場で結婚生活を送る”という結婚観を持った女性たちが、今の若い世代には増えてきている。

 男性も自分が平均的な年収なら、一家の経済を1人で担うのではなく、フルタイムで女性にも働いてもらう共稼ぎ婚を望むようになった。そうした男性たちは、自己PRの欄に「家事育児はサポートします」ではなく、「分担します」と記す。

 また、結婚相談所のプロフィールにおいて、女性が年収を公開するかしないかは任意で、数年前までは非公開にしている人がほとんどだった。

 “たいして稼いでいるわけではないのだから、あえて公開する必要がない”という考え方がある一方で、“高すぎる年収だと、男性が引いてしまう”という理由も、そこにはあった。“できる女”は隠していたほうが、お見合いが組める傾向にあると思われていたのだ。

 それが近年は、女性も年収を公開する傾向になってきた。

 デートで食事をした時の支払いも、“払える男がカッコイイ”という考えは、いまだ残っているものの、“男が払うのが当然”ということをSNSなどで主張する女性には、非難の声が集まるようになった。そして、若い世代には、割り勘デートも浸透しつつある。

 単なる言葉としての“ジェンダー平等”ではなく、社会がジェンダー平等に変わりつつあるのだ。それは、本当に素晴らしいことだ。結婚生活においても、妻と夫はイコールな立場でいるべきだと、筆者も思っている。

 しかしながら、それを言葉や態度で全面的に打ち出している女性は、婚活市場の中では苦戦を強いられているというのも、現実である。

■ワンオペ家事、育児はゴメン

 やよい(40歳、仮名)は、婚活を始めて2年になる。都内の企業に勤めていて、年収は700万円。地方出身で、大学時代から一人暮らしを始め、一人暮らし歴は、かれこれ22年になっていた。

 婚活を始めたのは、40歳という年齢が見えてきた時に、「できることなら、最後のチャンスで子どもを授かりたい」という気持ちが芽生えたからだ。

 「結婚したいとは思っていたんです。ただ私は、どちらかというと、結婚よりもキャリアを優先してしまった。仕事を頑張れば、周りが評価してくれる。その達成感が心地よかったし、仕事を頑張ることが自己成長にも繋がっていました」

 人一倍努力家で、頑張り屋。ただそうした自分が基準になっているので、婚活をする時の男性の見方もとても厳しかった。

 「お相手に求めるのは、真面目に仕事に取り組んでいることと清潔感」と言っていたのだが、プロフィール検索をする時の条件に、年収が700万円以上、大卒も加えていた。

 それでしばらくは活動をしたのだが、数人とお見合いをして、こんなことを言い出した。

 「これから実家暮らしの男性は、対象から外そうと思います。これまでお見合いしてきた方を見てみると、実家暮らしの男性はパートナーを母親がわりにしようとする傾向にある。精神的に自立していない人が多かった気がします」

 また、お見合いを組んでも、相手のスケジュールがなかなか出てこないと、こんなことを言った。「仕事が忙しいと言って、成立したお見合いを先延ばしにするのって、どうなのでしょうか」。

 そして、その理由についてこんなことを話していた。

 「目の前にやることがあったとしても、約束が決まったらその時間を作り出すことを考えないと。こんな方と結婚したら、仕事が忙しい時はそれで頭がいっぱいになって、家のことは妻任せになりますよね。私も仕事を続けていきたいので、ワンオペ家事、ワンオペ育児になるのは困ります」

 これはやよいに限ったことではない。

 男女イコールな立場での結婚を望んでいる女性ほど、男性への見方が厳しくなるし、要求が高くなる。そして、その傾向は、社会に出て荒波に揉まれ、辛酸をなめ、そんな中で自分磨きも忘れずに年を重ねてきた30代後半以上の自立した女性に多く見られる。

■理論武装する前にやるべきは? 

 これまで頑張ってきた自分を安売りできないし、仕事では認められてきたのだから、結婚でも周りからの賛辞を得たい。

 そうした女性たちが、実家暮らしの食事や家事を親まかせにしている“子ども部屋おじさん”や、結婚したら家のことを妻に任せようとしている“昭和存続男”にお見合いで遭遇すると、自分の結婚への理想論を滔々(とうとう)と語った後に、彼らを叱り飛ばしてしまうのだ。

 男性と女性が家庭内で、イコールな立場でいることはとても大切だ。男性が働き、女性は家を守りながら子育てをするという昔のスタイルが、変わってきている現代であるからこそ、一つ屋根の下で暮らす結婚とは何なのかを、もう一度考えてみるといい。

 婚活に苦戦している人たちは、結婚の形にこだわったり、理想論に走ったりしすぎていないか。夫と妻が平等であるという関係が成り立つのは、そこに互いへの尊敬があるからだ。

 理論武装をする前に、相手を許容する懐の深さを備える。そして、相手に優しさや思いやりを与えられる人間になることが、大切なのではないだろうか。

東洋経済オンライン

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最終更新:4/11(木) 9:21

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