季節の変わり目の体調不良には意外な要因が春のだるさ、眠さを一発解消する「非常識な食習慣」とは?

5/6 6:32 配信

東洋経済オンライン

「やたらと眠い、だるい、気力がわかない」のは春だから?  「その不調は内臓が疲れているせいかもしれません」と語るのは、生活習慣病の専門医で「16時間断食」ブームの火付け役として知られる青木厚氏。青木氏によれば、胃腸や肝臓を休ませるためには“ものを食べない時間”を作ることこそが重要だという。
日ごろ当たり前のように思っている1日3食の食生活が、実は「食べすぎ」になる医学的根拠を、青木氏の著書『新版「空腹」こそ最強のクスリ』より一部抜粋・再構成して解説します。

■その疲れやすさは「春バテ」のせいかも

 むかしから「春眠暁を覚えず」といいますが、春になると昼間も眠くてしかたないという人は少なくありません。実際、冬から春への季節の変わりめは多くの人が心身の不調を訴えます。

 春は、1日のうちの寒暖差が大きく、気圧も変動しやすい季節です。スギ・ヒノキの花粉シーズンでもあります。また、年度末・新年度にあたり生活が大きく変化してメンタル面でもストレスを感じやすい時期です。

 こうしたさまざまな環境の変化に対応しようとして頑張ったあげく、完全に「春バテ」で毎日がしんどいという状態の人も多いのではないでしょうか。

 こんなとき、いつもの食生活を見直してみるのがおすすめです。ここで、「そうだ、1日3食、きちんと食べよう」と考えた人は、ちょっと待ってください。もしかしたら、その「1日3食」のせいで、慢性的な「食べすぎ」になってしまっている可能性があります。

 春バテの「すぐに眠くなる、疲れやすい、気力が出ない」などの主な症状は、実は、「食べすぎ」でも起こります。

 そんなにたくさん食べているつもりがないという人でも、1日に3回規則正しく食事をとるだけで「食べすぎ」になってしまっていることがあるのです。

■24時間365日、胃腸には「休むヒマ」がない

 私たちが食べものを口に入れたあと、胃腸は何時間も働き続けます。

 食べたものが消化されるまで、胃の中に滞在する時間は平均2~3時間、脂肪分の多いものだと4~5時間ほど。次の小腸では5~8時間かけて水分と栄養分の8割を吸収します。最後に、大腸が残りの水分を15~20時間かけて吸収します。

 1日3回、食事をとると、朝食から昼食までのインターバルは4~5時間、昼食から夕食までは6~7時間程度です。つまり、前の食事で食べたものが、まだ胃や小腸に残っているうちに次の食べものが運ばれてきてしまうことになるのです。

 健康に気をつかう人ほど、1日3食しっかり食べなきゃと思って、それを毎日続けていると思います。ですが、このように1日3回食事をする時間割では、内臓は休むヒマがなく、疲れがたまっていくばかりなのです。

 胃腸が疲れて、消化機能が衰えると、体にさまざまな不調が現れます。

 消化機能が衰えると、まず、食事から十分な栄養分を摂ることができなくなります。1日3食きちんと食べているにもかかわらず、エネルギー不足になってしまうのです。そうすると、疲れやすくなったり、体がだるくなったり、肌や髪のコンディションが悪くなったりします。

 消化に時間がかかり、食べものがいつまでも胃に残っていると、胃もたれが起こります。胃の消化機能が落ちてしまったら、食欲もなくなります。

 腸が疲れ、働きが鈍くなると、食べものが消化しきれずに残ります。それらはやがて腐敗し、腸内でアンモニアなどの有害物質を発生させます。

 腸の中には、善玉菌、悪玉菌、日和見菌(体が弱ると悪玉菌に変わる)がいて、健康なときは善玉菌が優勢です。しかし、老廃物や有害物質などがたまって腸内環境が悪化すると、悪玉菌が優勢になり、便秘や下痢などになりやすくなります。

 さらに、腸で発生した有害物質は、血液に乗って全身にまわります。このせいで、肌荒れがひどくなったり、体臭がきつくなったりします。ときには、がんなどの病気になったりすることもあるのです。

 一方、腸には、体内に侵入しようとするウイルスや毒素などの異物を排除して体を守る「免疫機能」も備わっています。

 腸が疲れて腸内環境が悪くなると、免疫力も低下してしまいます。すると、風邪などの感染症にかかりやすくなったり、アレルギーが悪化したりします。

■1日3食は「肝臓」までも疲弊させてしまう

 1日3食の食生活で疲れるのは胃腸だけではありません。肝臓だって疲れます。いや、肝臓の疲れは、胃腸以上と言ってもよいかもしれません。

 肝臓は、腎臓とともに「沈黙の臓器」と呼ばれ、ふだん、その存在が意識されることはほとんどありません。それなのに、肝臓は非常に働き者です。

 肝臓は、さまざまな役割を一手に担っています。食後、体に入ってきた栄養を、体内で必要なエネルギーに変えたり、余分なエネルギーを蓄えたり、食べものに含まれていたアルコールやアンモニアなどの毒素を処理したり、脂肪の消化吸収を助ける胆汁を作ったりしています。

 そのため、食事と食事の間隔が短く、次から次へと食べものが入ってくると、肝臓はフル回転で働かなければならず、どんどん疲弊していきます。

 肝臓が疲れて機能が衰えると、本来肝臓で解毒されるはずの毒素や老廃物が体内に残ったり、作られるエネルギーの量が減ったりするため、体が疲れやすくなります。もちろん、肝炎や脂肪肝、肝硬変、肝臓がんなどの病気や障害になる恐れも出てきます。

 このように、1日3食の食生活によって、胃腸や肝臓はどんどん疲れていきます。内臓をしっかり休ませるために「空腹の時間(ものを食べない時間)」を作りましょう。

 内分泌代謝や糖尿病を専門とする医師として私がおすすめしているのは「16時間断食」です。

■健康だけでなく、美容にも効果のある「16時間断食」

 最後にものを食べてから10~12時間ほど経つと、肝臓や血液中のブドウ糖がなくなり、脂肪細胞中の中性脂肪が分解されてエネルギー源として使われるようになります。16時間が経過し、細胞が飢餓状態になると、体に備わっている「オートファジー」という仕組みが活発に働き始めます。

 オートファジーとは、細胞内の古くなったタンパク質が、新しく作り替えられること。古くなったり壊れたりした細胞が内側から新しく生まれ変わります。

 16時間の空腹の時間を作るだけで、疲れた体をリセットする効果が期待できるのです。

・内臓の疲れがとれて、内臓機能が高まり、免疫力もアップ。
・血糖値が下がり、インスリンの適切な分泌が促され、血管障害が改善。
・脂肪が分解され、肥満が引き起こすさまざまな問題が改善。
・細胞が生まれ変わり、体の不調の改善や老化の進行を食い止める。
 「16時間断食」は、健康のみならず美容やアンチエイジングにも効果があります。食べすぎで疲れた内臓が16時間の休息でリセットされる。その恩恵は、まずは便秘や下痢の改善など、「腸で実感」できるはずです。

 前述したように、腸が疲弊して腸内環境が悪化すると、免疫力が低下して風邪や肺炎などの感染症にかかりやすくなる、アレルギーがひどくなる、がんが発生する、肌の不調を引き起こし、体臭もきつくなる、など、健康と美容に大きく影響します。

 体内の免疫細胞や抗体の6割以上が、腸に存在しているといわれています。免疫細胞とは、外部から入ってきた異物(ウイルスや毒素など)や発生したがん細胞などを排除するもの。空腹によって免疫力を上げれば、いつまでも元気で若々しい体をキープしていけるのです。

 せっかく美容のためにサプリメントなどでビタミンやミネラルなどを摂っても、胃腸が疲れていては、消化機能が正常に働かず、体に十分吸収されません。

 また、消化しきれなかった食べものは、腸内で腐敗してアンモニアなどの有害物質を発生させ、血流に乗って全身にまわります。これも肌荒れやニキビの原因になります。体臭がきつくなるのも、この有害物質のせいです。

 胃腸の疲れがとれて消化機能が正常になると、食べものからきちんと栄養分を摂ることができるため、肌や髪にも必要なビタミンやミネラル、微量元素もしっかり補えるようになります。肌荒れも体臭も気にならなくなってくるでしょう。

■せっかくのダイエットも「むくみ」で台無しに

 腎臓が働きすぎて機能が低下すると、体に必要なタンパク質やミネラルまで排出されてしまったり、体内や血液内に老廃物がたまって血流が悪くなったりします。

 血流が悪くなると、体が活動するのに必要な酸素や栄養素が全身にいきわたらなくなります。これが、肌荒れ、シワ、シミ、そして「むくみ」の原因になります。ほかのダイエット法でせっかく体重を落としたのに、なぜか見た目がスッキリしないというひとは、体がむくんでいるのかもしれません。

 こんなときは、ぜひ「16時間断食」を実践してみてください。空腹の時間を作ることで、腎臓も休ませましょう。

 腎臓の疲れがとれて元気を回復すると、新陳代謝がよくなり、老廃物の排出がスムーズになります。これだけでも、むくみがかなり軽減されるはずです。

 「16時間断食」は、文字どおり、16時間の空腹の時間を作るだけ。カロリー計算も糖質制限も必要ありません。空腹の時間以外は、何を食べてもかまいません。

 オートファジーの仕組みを活かすためには、16時間以上の空腹の時間が必要ですが、睡眠時間を上手に組み込むことでムリなく行えると思います。

 毎日やるのが大変そうなら、まずは週末だけでも実行してみてください。それでも十分に細胞レベルでのリセット効果を実感していただけると思います。

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最終更新:5/6(月) 6:32

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