密度濃い時間を過ごすにはどうすればいいか。学習塾を経営する山中恵美子さんは「私はいつも人よりも3倍速く返事し、アイデアを3倍出すなど、『一石三鳥』を実現するため3倍行動することを心がけている。3倍速く動くと決めると、自動的にムダは減り迷いがなくなり、一年の密度は年々濃くなる」という――。
※本稿は、山中恵美子『人生が劇的に変わる「瞬読式」時間術 忙しさから解放され、本当にやりたいことに集中する』(三笠書房)の一部を再編集したものです。
■人よりも3倍速く行動すると決めると、自動的に迷いはなくなる
1年間という期間は誰にとっても同じ、世界共通です。
けれども、その感覚的な長さは人によっても年齢によっても違います。
たとえば、10歳の子どもは生きてきた人生の10分の1が1年間です。20歳の人は20分の1、70歳の人は70分の1です。
年を重ねるほど、1年間は短く感じるのかもしれません。私自身も1年間はあっというまに過ぎていく感覚がありますが、おかげさまでその密度は年々濃くなっている気がしています。
私はまわりから「よく、そんなにたくさんの活動ができますね」といわれます。
たしかに、塾を経営しながら瞬読のセミナーを定期的に開催したり、今年はメタバース上に通信制の高校を開校したりもしました。また、それぞれの仕事で各地を飛び回る合間に山中湖のマラソンにも挑戦しました。
私がいつも意識しているのは、「3倍の行動」です。
一石二鳥という言葉がありますが、私が目指すのは「一石三鳥」。一つのことをするときに3倍の行動を実現できるように考えて行動しています。
それは人よりも3倍の速さで行動すること、人よりも3倍速く返事すること、人よりもアイデアを3倍出すことなどです。午前中に仕事をすべて終わらせることができるのも、3倍の行動を心がけているからです。
人よりも3倍速く動くと決めると、自動的にムダなことは減っていきます。ほかの人が一つ考えるあいだに、その3倍アイデアを出そうと決めていれば、迷ってなどいられません。
■3倍速で満足いく服を買うための秘訣
「下手な鉄砲数打ちゃ当たる」ではありませんが、思いついたら即提案します。不思議なもので、数をこなしていると自然と質もついてくるのです。
人が1冊の本を読むあいだに3冊読むと決めれば、集中力も生まれます。そのような思考を常に持ち続けていると、すべてのスピードが速くなっていきます。
プライベートでは、人が1着の服を選ぶあいだに、私は3着選ぶようにしています。
アップルの創業者である故スティーブ・ジョブズはいつも黒のタートルネックにジーンズというファッションスタイルでした。これは、日々の決断の数を減らし、重要な決断に費やすエネルギーを節約するためだといわれています。
私もこれには同感です。
いろいろな服を試着しながら時間をかけて選ぶのが楽しい人には共感できないかもしれませんが、私にとっては「どれを買おうかな」と悩む時間はムダな時間で、「早く選んで次のことをしなきゃ」という気持ちになります。
ですから服のブランドも買うお店も決めています。自分の体形や自分に似合う服を知っていれば、迷う時間を最小限に抑えられるからです。
「安定よりも挑戦」がマイルールなので、今まで買ったことのない服を選ぶということだけを決めて、お店の人にそれを伝えれば、自分では選ばないような服を勧めてくれるので、満足する買い物ができます。
■1問を30秒以内で解ききるとまず決める
私は幼い頃から、母や祖母から「1分あたりでできることを増やせ」と教えられてきました。
私の実家はそろばん教室を開いていました。私もそろばん指導の免許を持っていて、学習塾を始める前はそろばん塾を開いて教えていました。
そろばんは、決まった時間内で何問計算できるかをトレーニングします。検定では、たとえばかけ算の場合、1問あたり30秒で、20問解かなくてはなりません。タイマーをかけて、30秒経ったら答えが出なくても次の問題に進みます。
答えが出たとしても、タイマーが鳴った瞬間に用紙に答えを書いていなかったら、アウト。次の問題に進まなくてはなりません。
このトレーニングは、短時間で考える習慣をつけるために効果的だといわれています。10分間を計って、「20問のうち、できるところまでやりなさい」ではなく、1問を30秒以内に解ききるという負荷をかけるところがポイントです。
このトレーニングをくり返すと、多くの子どもたちが大幅に成績を伸ばします。なぜなら、時間制限を設ければ「前倒し」で正確に答えを出そうとする習慣が身につくからです。
30秒で答えを出すのではなく、用紙に書く時間を考えたら、25秒で答えを出そうと少し前倒しにする習慣が生まれます。それが積み重なっていくと、学校のテストでもほかの人が8問解いているあいだに10問解けるようになり、結果的に点数アップや合格につながります。
また、そろばんは計算なので左脳を使うイメージがあるかもしれませんが、右脳も鍛えられます。そろばんに慣れてくると、そろばんを実際に使わなくても、頭の中でそろばんをパチパチとはじいて暗算ができるようになります。それがイメージ力を鍛えることになり、右脳を刺激するのです。
■1年の価値を2倍、3倍にできる人
前倒しは時間を奪われないための、最強の方法です。
塾では子どもたちにも、「提出物は締め切り当日ではなく前倒しで出す」ように教えています。これは限られた時間を自分の中でさらに短く設定すると、作業を速く効率的にできるようになるからです。
ところが、残念ながら、「1日くらい遅れても平気だよね」と遅れて出してくる生徒もいます。それは一番運気を逃す行動だと思うので、私はずっと「前倒しが大事だよ」といい続けています。
瞬読もそろばんのトレーニングを踏襲していて、「一つの文字のグループを1秒以内で見て、次の問題に進む」というルールにしています。読めるようになるまで文字を見つめるのではなく、読めなくても次に進みます。
解けるか解けないかが問題ではなくて、決められた時間内に終わらせることが大事だと体に覚え込ませるのが、その目的です。
本を読むときも、「1冊15分で読む」とまず決めることがコツです。
「今より速く読めたらいいな」といった漠然とした考えだと、なかなか速く読めるようにはなりません。「15分で読む」と具体的に負荷をかけると、「そのためにどうしたらいいか」と考えるようになります。
このようにすべてをスピードアップすれば、同じ1年という時間でも2倍、3倍に生きることができます。
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山中 恵美子(やまなか・えみこ)
株式会社瞬読 代表取締役社長
瞬読代表取締役、通信制高校EMI高等学院・メタバーススクール学院長、ワイイーエス代表取締役社長。1971年生まれ。甲南大学法学部卒業。大学在学中に日本珠算連盟講師資格取得。学生時代より、珠算指導を開始。卒業後、関西テレビ放送に勤務。2009年、我が子を通わせたい塾が見つからず、兵庫県西宮市に学習塾を開校。未経験で始めた学習塾は、開校8年でグループ30校に。子ども達の能力開発のため塾内で始めた「瞬読」と呼ばれる独自の読書法が評判を呼び、やがて塾生から保護者、ビジネスパーソンへと広まり、受講生は4200人以上。2023年4月、通信制高等学院EMI高等学院を開校。世界で活躍するメタバースエンジニアを育成するメタバースコースを開設。主な著書に『瞬読』(SBクリエイティブ)『見るだけで脳がよくなる1分間瞬読ドリル』(ダイヤモンド社)など。一連の「瞬読」シリーズは累計28万部超えのベストセラーとなる。
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プレジデントオンライン
最終更新:11/21(火) 17:17
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