トヨタ、「足場固め」で今期営業益2割減予想-市場予想下回る

5/8 13:57 配信

Bloomberg

(ブルームバーグ): トヨタ自動車は8日、今期(2025年3月期)営業利益は前期比20%減の4兆3000億円を見込むと発表した。トヨタはグループ会社の不正などを受けて足場固めに注力しており、減益なら2期ぶりとなる。

ブルームバーグが事前に集計したアナリスト20人の予想平均値(5兆3424億円)を大きく下回った。発表資料によると、為替の前提を前期実績と同様1ドル=145円としたことなどで為替変動による押し上げ効果が550億円にとどまる一方、サプライチェーン(供給網)の基盤強化に伴う費用や成長領域への投資拡大、労務費の増加などが大きな利益下押し要因になる。ダイハツ工業や日野自動車を含むグループ世界販売台数は前期比約1.3%減少すると見込んでいる。

トヨタは前期(24年3月期)営業利益が5兆円超と円安や半導体不足の緩和に伴う生産回復の追い風を受けて過去最高を更新した。そうした中でも子会社のダイハツ工業などグループ会社で相次ぎ認証不正が発覚したことや生産回復に伴い現場に高い負荷がかかったことを受け、会社側は時間とコストをかけて余力づくりや品質向上に向けた取り組みを進める方針だ。

トヨタの佐藤恒治社長は都内で開いた会見で、課題に向き合って足場固めに取り組むことが「将来の成長に向けた最重点事項であると考えている。ゆえに今期は意志を持って足場固めに必要なお金と時間を使っていく」と述べた。

同社はまた、発行済み株式総数の3.04%、1兆円を上限に自己株式を取得すると発表した。取得期間は9日から25年4月30日まで。自社株買いについては株価水準などを踏まえ、機動的に実施していき、今後、必要に応じて同社株式の売却要請に応えるために活用していくとしている。また、9日付で保有する自己株5億2000万株を消却することも発表した。

一連の発表を受け、前日比下落で取引されていたトヨタの株価は午後の取引で乱高下。一時上昇に転じる場面もあったが0.6%安の3579円で取引を終えた。

トヨタの今期業績予想

ブルームバーグ・インテリジェンスの吉田達生アナリストは、トヨタがグループを挙げて足場固めを重視する中、今期計画は「控えめな数字が出てくることは想定されていた」と指摘。減益要因となる投資は将来に成果を生むお金の使い方で、今後成果の刈り取りが進めばおのずと業績は会社計画を上振れることになるだろうと述べた。

今期の見通しについて、トヨタはステークホルダーとともに持続的に成長するため、モビリティーカンパニーへの変革に向けた投資を加速するとの考えを表明。仕入れ先や販売店を含めて人的資本への投資で3800億円、電気自動車やソフトウエア、人工知能など成長領域への投資が3200億円の減益要因になり、通期で減益見通しになるとしている。

電気自動車(EV)の成長に減速感が見られる中、トヨタが強みとするハイブリッド車(HV)の需要は堅調だ。高級車ブランド「レクサス」を含めたHV販売は前期比25%増の約447万6000台となることを見込む。26年に年間販売を150万台とすることを目指すEVは同46%増の17万1000台となる見通しだ。

会見に同席したトヨタの宮崎洋一最高財務責任者は、ラインアップの拡大に伴い北米市場では依然としてHV販売が堅調だと述べた。佐藤社長は、多様な選択肢を提供していくという同社のマルチパスウェイ戦略に変更はないと改めて強調し、26年のEV販売目標にはプラグインハイブリッド車(PHV)を含めて考えていいと思っていると話した。

フィリップ証券株式部トレーディング・ヘッドの増沢丈彦氏は、決算見通しについて、トヨタは為替感応度も高く保守的な計画を出しやすい企業であるため、市場予想を下回る利益予想は失望的な印象とコメント。1兆円の自社株買いについては発行済み株式の3%でトヨタ株への影響は大きいとは言えなさそうだとしながら、まれに見る規模の自社株買いは同業他社にも同様の期待が生じるため相場の支えとなりそうだ、と述べた。

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--取材協力:田村康剛.

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最終更新:5/8(水) 17:37

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