50万円のダブルベッドより8000円のシングル2台がいい…睡眠の質を高める「正しいベッドの選び方」

10/31 18:17 配信

プレジデントオンライン

夜間に熟睡するためにはどうすればいいか。上級睡眠健康指導士の角谷リョウさんは「寝る3時間前までには夕食を済ませたほうがいいが、空腹で眠れない場合は、ちょっとした甘いものを食べると寝付きがよくなる。また、非常に重要なのがベッドの大きさだ」という――。

 ※本稿は、角谷リョウ『超熟睡トレーニング』(Gakken)の一部を再編集したものです。

■胃が「消化中」だと眠りづらい

 スムーズな眠りに入るには、胃の中の状態がどうなっているかが重要です。

 胃の中に食べ物が入っていると、体は覚醒した状態になります。なぜかと言うと、胃液を出して消化した食べ物を、十二指腸に送る役割を果たさないといけないからです。

 いざ寝ようとしたときに、食事からあまり時間が経っていないと、胃が活発に活動している状態になってしまい、眠りづらくなるわけですね。

 だからスムーズな入眠をしたいのであれば、寝ようとしたときに食べ物がすでに胃を通過した状態であることが大事なんです。

 胃さえ通過してしまえばOK。なぜかと言うと、体内に栄養を摂り込む小腸や、排便に関わる大腸は、副交感神経優位で寝ているときのほうがスムーズに活動するからです。これらの臓器はむしろ、起きているときはさほど活発に活動しないんです。

 だから寝るタイミングで、食べ物が胃にあるのか腸にあるのかが重要なのです。

■焼肉を食べるときは夕方からスタート

 胃を通過する時間は食べ物によって異なります。肉や天ぷらなど消化の悪いものは、胃を通過するまでに3時間くらいかかりますし、逆に軽めの豆腐や春雨などは1時間程度で通過していきます。

 意識が高くて睡眠の質にこだわる人はこの理屈をよくわかっていて、自分の寝る時間を逆算して食べ物を選んでいます。そういう人たちの間では、肉を食べるんだったら、寝る3時間前に食べるというのは常識になっています。実は私も焼き肉が大好きなんです。だからできるだけランチで食べるようにしています。

 でも夜に食べたくなるときもありますよね。そんなときは夕方5時とか6時とかに、焼き肉屋さんに入ります。消化に時間のかかるヘビーなものを食べたいとき、夕食の時間を早めに設定するのは、快眠のためには必須です。

 食べ物が腸に滞在する時間は長いので、消化のいいものを食べたとしても、消化の悪い肉やてんぷらと同様に寝る3時間前までに食べておけば、寝たい時間には腸に食べ物がある状態にできます。よって食べ物によらず、寝る3時間前までに食事を済ませるといいでしょう。

■寝る30分前におススメの「快眠おやつ」

 早めに夕食を終えると、寝る前に空腹を感じることが増えます。あまりに空腹だと眠れないので、ちょっとした甘いものを食べたほうが寝付きがよくなるという実証データもあります。

 眠りのことを考えたら夕食は早い時間に軽めのものを摂るべきですが、お腹が空きすぎると眠れません。そこで、寝る30分くらい前にあったかいお茶と、少な目のスイーツを食べてほっとする時間を持つことで、睡眠の質が上がる方が実際に多くいます。

 さっきお話ししたこととは矛盾するようですが、あまりにストイックに食事の約束事を守り、胃腸をスムーズに通過させることだけを目的にしてしまうと、逆に眠りにくくなる場合もあるのです。

 具体的に挙げると、チョコレートを2~3個、クッキー2枚程度、和菓子ならたとえば饅頭半分くらいは許容範囲です。饅頭や大福などの場合、1個だと食べすぎになるので注意してくださいね。

■なんだかんだ「効く」ホットミルク

 科学的には「ホットミルクに入眠改善効果はない」と言われていますが、実際に私がアドバイスしているクライアントさんには、プラシーボ効果もあってか入眠時間が短縮される方が多くおられます。牛乳好きな人は、ちょっと温めたミルクを飲むことをおすすめします。白湯やカフェインの入っていないお茶でもかまいません。

 ただし飲む量には注意してください。せいぜい100mlにとどめることを推奨します。よく「寝ているときは汗をたくさんかくので、コップ1杯(200ml)の水を飲むとよい」などと言われますが、私はこれに対して疑問を持ってしまいます。

 確かに汗をかくので水分を摂る必要性はありますが、実際に寝る前に200mlも水分を摂取したら、夜中にトイレで起きる確率が格段に上がってしまうからです。

 まとめると、「温かくて安心感が得られ、ちょっとした糖質を含んだものを少量」がいいのではないでしょうか。

■寝酒をするなら、適量を把握しておく

 寝酒は基本的にはしないほうがいいと考えてください。睡眠中に下がるはずの心拍数が、お酒を飲むことで下がらず、深い睡眠が取れないことにつながる可能性が高いからです。

 とはいえ、長年の習慣で「どうしても寝酒をしないではいられない」と言う人もいるでしょう。そういう人は、自分にとって「深い睡眠を取るのに支障のないお酒の量」を把握し、その限界値を超えない飲み方をするようにしてください。

 その量を知るには、睡眠時に身に着けることで心拍数や睡眠の状態がわかるデバイスが必要です。

 まず、お酒を飲まずに寝て、その日の心拍数と深い睡眠が取れている時間を記録します。このときのデータがあなたの「基準データ」になります。

 翌日はいつも飲んでいるお酒を3分の1くらい飲んでみて、その日の睡眠データを基準データと照らし合わせてみてください。基準データと変わらなければ、その量はOKということになります。

 同じ要領で、一度はいつもの量の3分の2、次はいつもの量……、という具合にお酒の量を増減させながら基準データと見比べていきましょう。

 たとえば、3分の2のときは心拍数も深い睡眠の時間も変わらなかったけれども、いつも飲んでいた量になったとたん、心拍数が上がったり深い睡眠の時間が短くなったりしたとしたら、お酒が睡眠の質を悪くしているということがわかります。

 この方法で、自分にとっての「お酒の適正量」を知った上で飲むようにしてください。

■マットレスは材質や価格より「広さ」が重要

 マットレスの役割は「睡眠場所を確保すること」。つまり「広さ」が重要になります。

 実は高さや固さや値段は、さほど重要ではありません。多少固めぐらいがいちばん眠れるというデータもあるにはありますが、それよりも重要視すべきは「マットレスの広さ(特に幅)」です。

 「広くて寝返りが打てるか」というのが、最も注目すべきポイントになります。

■「2人で140cm」では疲労がたまってしまう

 結局、人は狭いとリラックスできないんです。たとえばダブルは2人で寝ることを前提にしていますが、その幅は140cm程度。シングルは100cmなのに、2人で140cmだと、1人あたり70cmなので狭すぎます。

 男性の場合、普通に寝たら100cm、つまりシングルいっぱいの幅が必要になります。そうすると、女性に残されるのはわずか40cmしかありません。40cmの狭さでは、自由に寝返りも打てません。寝返りを打たないと、血流が悪くなって疲労がたまってしまいます。

 だから、大事なのはマットレスの広さであって、高級かどうかはあまり関係がないんです。寝室で2人で寝る場合は、50万円の狭いダブルベッドよりも、8000円のシングルベッド2台のほうがはるかに睡眠の質はよくなります。

 見落とされがちな「広さ」ですが、これがいちばん重要なのです。

■「+20cm」の選択で人生は大きく変わる

 できればセミダブル(約120cm)に1人で寝るのが理想です。快適な寝返りを打つには、セミダブルくらいの広さがあったほうがいいからです。ちっちゃな布団はあくまでも、仮眠用と考えてください。

 「寝るだけだから狭くていいじゃん」と考えるか、睡眠は1日の3分の1も過ごすことになるから、それを快適にしたほうがいいと考えるか。ここにどういう価値観を持つかは、とても重要です。

 広いベッドは一見すると無駄に感じるかもしれません。ベッドが広くなると部屋が狭くなってしまいます。でも、シングルをセミダブルに変えることで、20cm分、寝返りを打てる幅を増やすことができれば、それで得られる快適さは相当なものがあります。

 部屋が狭くなることよりも快眠を優先するという考え方ができれば、人生が大きく変わっていくことでしょう。



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角谷 リョウ(すみや・りょう)
スリープコーチ
上級睡眠健康指導士、日本睡眠学会会員、日本認知療法・認知行動療法学会会員、日本サ
ウナ学会員。ライフリー株式会社を立ち上げ、NTTドコモ、サイバーエージェントなどの法人を中心に、14万人の睡眠改善をサポートしてきた実績をもつ。短期間かつ高確率(受講者の90%以上)で効果を感じられる実践法を得意とする。最近の趣味は瞑想。瞑想でアルコール依存症を克服し、月2回・適量飲酒にまで改善した。
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最終更新:10/31(木) 18:17

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