「雀の涙ほどのお金で責任を果たせ」…マンション管理組合「役員の報酬」受け取りの意外な盲点

9/19 8:00 配信

マネー現代

日本の法律上、マンションの所有者には管理組合の加入が義務づけられています。敷地及び共用部分の維持管理は所有者全員で行い、組合員は規約、使用細則、理事会、総会の決議に従うのが基本のルールです。

しかし最近はマンション管理に対する意識が薄い所有者が増え、立候補する組合員がほとんどいない現状が続いています。そのため同じ人が何年も続けて仕方がなく役員に就いているケースも珍しくありません。

この解消のために役員に報酬を支払うマンションも増えてきましたが、この報酬制が思いがけないトラブルに発展する場合もあります。そのトラブルについて<築30年「高齢者団地」で起こった、住民たちの理不尽な要求…役員報酬の導入に「役員経験者にも払え」と猛反発>に引き続きお伝えします。

こまごましたお金も自腹を切ってきた

「管理組合の役員は自宅で理事会資料を作成してプリントしたり、管理組運営で難しい問題に当たれば、管理会社の担当者や役所に相談の電話もしている。

先日は、有給を取って弁護士による無料相談会に行ってきたがこれには交通費も電話代もかかっているし、資料作成のプリンターのインク代や紙代もかかっている。これらの経費はどれも領収書を出ないことが多く、必要経費として管理組合に請求することは難しいので、いままで全部自腹を切っている。

知り合いの会計士に聞いたところ、管理組合の役員報酬は一般の企業の出張手当や旅費日当などと同様な扱いとなり、実費ではなく一律の金額を支払う日当と同じ扱いになり非課税の扱いでなるのではないのか」とアドバスを受けた。源泉徴収は必要ないと考えます。理解してほしい」

最終的には理事長がこう訴えてますが、税務処理の正しい方法は導き出せず、あいないなまま委任状と議決権行使書の賛成多数で報酬制が承認されました。

別件では、理事長に月額20万円、副理事長は15万円、理事と監事はそれぞれ12万円と役員報酬だけで月額50万円以上の支出している、100戸の自主管理のマンションの住人から「役員報酬が高すぎる」という不満の相談がありました。

役員は10年以上も同じメンバーで続いており、毎年、総会で承認しているので手続上は問題ありません。ですがこの場合、役員報酬をゼロにして管理会社に管理委託契約をお願いした方がもっと質の良い管理が可能になるのではとアドバイスをしました。

じつは役員報酬は「報酬を受け取ることができる」という規定なので、受取りを拒否することもできます。

役員の中には、「雀の涙ほどのお金をもらって、総会で組合員から報酬もらっているのだから責任を果たせ」と言われかねない、役員が公務員の場合は受け取れないなど辞退する人もいるのえ、役員のなり手がいないから、報酬制が一概にいいとは言い切れません。

報酬制の「最大の問題」

さらに、役員になれる資格を現に居住している組合員に限定するマンションも多くあります。そのマンションに住んでいない人が役員になっても、理事会に参加するためだけに、毎月電車やバスに乗るには負担がかかり、現実には難しいのでこのような管理規約を策定したのでしょう。

これらの人たち役員にはなれませんので、総会準備の負担もかからず、日常的な組合活動にも協力しません。しかしそれでは区分所有者の不満も溜まります。とくに輪番制を大事にしているマンション管理組合にとってはもってのほかです。

これらの不公平感を解消するため、居住していない区分所有者には「組合活動協力金」として管理費を割り増して請求するマンションも出始めていますが、このきっかけとなったのが、「不在区分所有者だけに金銭的な負担を課することは、その必要性があり、かつ、合理的な範囲内である金銭負担(管理費の15%程度)を課する」と認めた最高裁の判決でした。

これには公平性の確保、役員報酬・手当の財源確保、まじめに役員を引き受けている区分所有者の不満解消などのメリットがありますが、投資目的の所有者にとって利回りが低下する懸念があるためデメリットです。

居住していない区分所有者には「組合活動協力金」を徴収するには、管理規約の改正で組合員総数の3/4以上及び議決権総数の3/4以上の賛成が必要なため、1/4以上が投資家で占めるマンションは導入を否決される恐れもあります。

最近では、輪番制で廻ってきた役員就任依頼を辞退した組合員に「役員就任辞退金」の名目で制裁金を課す管理組合も増える傾向にあります。「役員就任辞退金」を課すことを理事会で検討している理事会へ陪席の要請がありました。そこでの議論では、

●このマンションに居住していない区分所有者の「組合活動協力金」月額2,500円の割り増しだが、「役員就任辞退金」は、月額2,500円だと低額なので「金さえ払えば、役員にならなくて済む。」という不心得な組合員もいるかもしれない。役員の任期は一年なので月額5,000円~10,000円管理費にプラスして徴収することにしてはどうか。いや、もっと高くないと……

●実際に、役員をして管理組合活動はしたい気持ちがあるがやむを得ない事情で理事会役員を拒否する場合も考慮すべきである。

75歳以上の後期高齢者や障害を持つ区分所有者が理事会役員を辞退した場合でも「役員就任辞退金」を課すことを免除してはどうか。

●「仕事が忙しい」「子供が小さいので」「介護があるので」などの理由で理事会役員を拒否した場合には、そういった状況が改善して5年以内に役員に就任した場合には「役員就任辞退金」を返金してはどうか。

など、色々な意見が交わされました。管理組合が、役員報酬を支払う場合、役員報酬辞退金を徴収する場合も管理規約の変更が必要です。

役員就任を拒否した区分所有者に役員報酬辞退金の制裁金を課すことは法律上認められないケースや規約を定めても、法律違反の場合には無効となる場合があります。

標準管理規約の規定にない条項をご自分のマンションの管理規約に加える場合には、弁護士などの法律の専門家にあらかじめ相談してから総会に上程する必要があることはいうまでもありません。

…つづく<66歳女性が青ざめた、築40年の「高齢者マンション」で起こった、住民たちの理不尽な要求…理事会で「管理員を辞めさせろ!」と怒鳴られて>でも、マンション管理組合のトラブルを具体例をあげて明かしています。

マネー現代

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最終更新:9/19(木) 8:00

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