「いつかメルカリで売ろう」と思う人はゴミ屋敷になりやすい…「ゴミ屋敷」から回収された大量の不用品はどこにいくのか? その“意外な行き先”
関西地方の一軒家に住む家族は、わずか2〜3年の間で3度、片づけの依頼をしていたーー。
本連載では、さまざまな事情を抱え「ゴミ屋敷」となってしまった家に暮らす人たちの“孤独”と、片付けの先に見いだした“希望”に焦点をあてる。
今回の依頼は「ゴミ屋敷」ではなく「不用品回収」。ゴミ屋敷と比べると軽い依頼のように思えるが、ゴミ屋敷に悩む人々の問題を解決する道筋は、実はここにある。YouTube「イーブイ片付けチャンネル」で多くの事例を配信するゴミ屋敷・不用品回収の専門業者「イーブイ」代表の二見文直氏は、「依頼の数としてはゴミ屋敷よりも不用品回収のほうが多い」と話す。
動画:【3度目の依頼】片付けをイーブイに依頼した理由は?
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■住人が片付けを3度依頼した理由
1度目の依頼は、台風21号が関西地方を襲った2018年9月のことだった。その被害は甚大で、街中では車両が横転し、電柱が倒れ、14人の死者が出た。また、暴風で流されたタンカーが関西国際空港の連絡橋に衝突。滑走路も閉鎖となり、「関空が水没した」とニュースになった。
一家はこの台風で被災。ベランダの物置が倒壊し、ベランダ自体も破損した。その片付けをイーブイに依頼した。
「そのときの作業がテキパキとやられていて。その時点で(娘が)引っ越しする予定があったので、イーブイさんにお任せしようと思いました」(依頼主である父親)
台風が襲った当時は、同様の依頼が殺到したという。倒壊によって物置に入っているモノが飛び出してしまい、ついでに不用なモノを処分してしまおうと考える人が多かった。
【写真】「倒壊したベランダの物置、引っ越しで出た大量のモノ」いらないモノであふれた自宅があっという間に片付いた! 【生まれ変わった部屋を見る】(22枚)
2回目は、大人になって家を出ることになった娘の引っ越しに向けた不用品回収だった。現場に行くとすでに回収するモノがまとめられていた。その量も少なく、作業はあっという間に終了。
それからしばらく経ち、今度は夫婦も家を引き払うことに。同じく不用品を回収してもらうべく、イーブイに依頼をした。
■不用品回収が「ゴミ屋敷」と「モノ屋敷」を解決する
1室90平米ほどあるマンションで収納も豊富だ。ゆえに普段からモノを減らす必要性を感じることがなく、モノが次第にたまっていった。
今回も、新居に運ぶモノ、現場に残しておくモノ、処分するモノと事前に仕分けが済んでいたため、作業はスムーズに進んでいったが、これを自力でやろうとすると大変だ。
「不用品回収はやはり引っ越しのときに頼まれる方が多いです。準備を始めたばかりのときに“3割だけ処分してほしい”という依頼や、引っ越し間近で“残置物を全部処分してほしい”という依頼など。大きな家具があっても引っ越しを機に買い替える方も多いですから」(二見氏、以下同)
引っ越し時のゴミ出しは気が遠くなるほど重荷だ。24時間、ゴミを出すことができるマンションや、ゴミ出しに曜日指定のないマンションなら、自力でできるかもしれない。しかし、そうではないマンションや一軒家になった途端、このハードルは一気に上がる。
一軒家の場合、ゴミ捨て場のほとんどは近所の歩道に設置されている。規模もそこまで大きくないうえ、曜日やゴミの出し方が細かく決められていることが多い。古紙は重ねてヒモで結び、資源ゴミが捨てられる日は週に1回しかないなど……。
そして、「ゴミ出しは朝8時まで」と時間まで決められているだけでなく、前日の夜に出すことが許されない場合も多い。少しでも破れば、指摘してくる近隣住民がいるかもしれない。そんな状況下で、急な引っ越しとなれば、気が遠くなるどころか気が狂いそうだ。
「そこに不用品回収のニーズがあるんです。僕らであれば、生ゴミは回収できないなど多少の制限はあるのですが、基本的にはゴミの種類にかかわらず、すべてまとめて引き取ります。それなら、曜日も近所の目も気にする必要がないので、ハードルが一気に下がります」
引っ越しに限らず、ゴミ出しができずに部屋が荒れてしまっている家庭も、不用品回収業者の有効活用がゴミ屋敷脱却のカギとなりそうだ。
■業者に頼む以外の方法はあるのか
不用品回収を依頼する以外の手立てとしては、自分で自治体が運営している施設に持ち込むという方法もある。「クリーンセンター」「自己搬入ヤード」「ストックヤード」などと検索をかければ、住んでいる自治体の施設がヒットするはずだ。
ここなら、自分で1つひとつ粗大ゴミとして出したり、不用品回収業者を呼んだりするよりも、費用を安く抑えられる。
「ただ、自分の車を持っていない人だとハードルは上がります。それに、自家用車に積める不用品の量って、たかが知れているんですよね」
不用品をメルカリなどのフリマサービスで売ってお金に換えるという策もあるが、これはおすすめできない。
「ゴミ屋敷やモノ屋敷の住人の中にも、“メルカリで売るから”と不用品を部屋の一角にためているケースはとても多いです。でも、メルカリでこまめに出品している人って、商品をよりよく見せる写真を撮ったり、購買意欲が上がるような説明を書いたり、出品作業そのものに楽しみを感じているんです」
その作業を苦に感じず、しかもその時間があるのなら、そもそもゴミ屋敷やモノ屋敷にはなっていない可能性が高い。また、自治体の施設に持ち込むにせよ、メルカリで売るにせよ、不用品を自分で家の外に運び出すという作業が必要になる。重量のあるモノだったり、2階や3階に眠っているモノだったりすると、さらに労力は増える。
「あとで売る」とは考えずに、不用品回収業者に来てもらうのが最も手っ取り早く、ストレスも軽減できるはずだ。
■回収された不用品の行き先
回収された不用品は、ゴミとして処理されるモノは、「パッカー車」と呼ばれる、一般ゴミや産業廃棄物などを収集するトラックに持っていってもらう。
リサイクルができるモノは、業者が保有している倉庫へいったんプールされる。その中でもまだ使えるモノは中古品として再び市場に流すこともある。
「冷蔵庫や洗濯機、扇風機などの家電や引き出物などのギフト系は、国内のリサイクルショップが競りを行う古物市場に出すことがあります。家具、食器、衣類は、海外に中古品を輸出する業者に。おもちゃ系はヤフーオークションに出すこともあって、うちでは出品専門のスタッフも雇っています」
回収品の2次利用については、事前に依頼者に伝えるようにしている。とはいえ、中には「売るならタダで持っていってほしい」と思う人がいるかもしれない。しかし、現場にトラックで向かう燃料費や作業スタッフの人件費はもちろんタダではなく、パッカー車を呼ぶのにも費用がかかる。
不用品の売却益で儲けているわけではなく、あくまで経費削減の一環だ。不用品を売却して得られる額は、売り上げの5%。かなり細かく仕分けをしても10%に満たない。
不用品の回収が終わると、依頼主の家は引っ越し目前の状態となった。「また必ず頼むと思います」と話していたので、4度目の依頼もあるだろう。ある程度不用品が溜まったら、その都度、業者に来てもらう。賢い業者の使い方を心得ている依頼主だった。
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東洋経済オンライン
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最終更新:1/25(土) 9:02