伝説の投資家・本多静六が指南「積立投資の王道」 悲観的な想定でも、無理なく「億り人」になれる

4/18 7:02 配信

東洋経済オンライン

 新入社員が初任給を手にするこの季節。新入社員や若手の皆さんに検討していただきたいのが、積立投資です。若い頃から積立投資を続ければ、さほど無理なく億り人(金融資産1億円以上)になることができます。さらに言えば、あなたが40代・50代であっても、決して遅すぎることはありません。その理由について、わかりやすく解説していきます。

■積立投資で無理なく億り人

 いきなり「積立投資で億り人」と言われても、実感が湧きにくいでしょう。そこで、積立投資の効果をシミュレーションしてみます。条件は以下の通りです。

① 23歳の4月から毎月の給料の4分の1を天引き貯金する。毎月の貯金額は、20代が5万円、30~49歳が7万円、50歳以降が5万円。
② 貯金を毎月、日経平均やS&P500に連動する投資信託に積立投資する。取り崩しはしない。
③ 月当たりの利回りは、悲観ケース・0.4%、標準ケース・0.6%、楽観ケース・0.8%。
 条件について少し補足します。①の「毎月の給料の4分の1を天引き貯金」というのは、伝説の投資家・本多静六が実践したやり方です。②の運用対象を日経平均やS&P500とした理由も含めて、後ほど解説します。

 また③の利回りについて、「悲観ケース・月0.4%」は日経平均の1994年から2023年(=失われた30年)の年平均利回り4.47%から、「楽観ケース・月0.8%」はS&P500の同じ期間の年平均利回り10.03%から設定しています。「標準ケース・月0.6%」はその中間です。

 なお、シミュレーションでは売却を想定していませんが、売却時の節税メリットなどを考えると、今年から拡充されたNISA口座を利用するのが賢明でしょう。

 シミュレーションの結果、年代ごとの4月時点の資産残高は以下の通りです。

 (※外部配信先では図表などの画像を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください)

 多くの個人投資家が目標としている億り人になるのは、悲観ケースで66歳、標準ケースで56歳、楽観ケースで51歳です。

 億り人というと、よほど幸運に恵まれた人か、類まれな才能を持つ株の達人と思われるかもしれませんが、そんなことはありません。シミュレーションから明らかなように、普通の会社員でも着実に積立投資を続ければ、無理なく億り人になれるのです。

 実にシンプルで効果が大きい積立投資。ただ、実際に億り人になったという成功者は限られます。積立投資を始めるのは簡単ですが、長く続けるのは容易ではないからです。

 急にお金が入り用になったり、給料が減ったりして、「今月はいったん休んで、時機を見て再開しよう」と考えたりします。また、株価が下落すると怖気づいて「いまのうちに売っておこう」と思います。

 しかし、「継続は力なり」。家計が楽な時も苦しい時も、株価が上がった時も下がった時も、淡々と機械的に買い続ける必要があります。早く始めて長く続けるのが、積立投資で成功するための鉄則です。

 下のグラフを見てください。どのケースも50歳くらいまでは資産残高が1億円未満でさほど大きな差はありません。ところが、1億円を超えるあたりから増え方に大きな差が出てきます。

 これは、複利効果によるものです。積立投資では、投資収益が残高に上乗せされるので、複利効果が働き、時間が経つほど、また利回りが高いほど資産の伸びが大きくなります。時間を味方につけて複利効果を得るのが、積立投資の本質です。

 世界一の投資家ウォーレン・バフェットは、11歳から投資を始めて現在93歳です。資産残高は52歳の時点で3.76億ドル、現在1369億ドルです(フォーブスより)。つまり、現在の資産のうち前半41年間の分はわずか0.3%、後半41年間で残り99.7%を積み上げました。バフェットは積立投資ではありませんが、複利効果の偉大さがわかります。

■株価がずっと下がり続けたらどうなるの? 

 ところで、「株価が上がり続ける前提になっているけど、株価が下がり続けたらどうなるの?」と疑問に思われたかもしれません。株価がずっと下がり続けたら、資産額は積立額より目減りします。積立投資なんてしなければ良かったという話になります。

 しかし、株価が下がっても、底値をつけて反転したら、素晴らしい運用成果がもたらされます。簡単な数値例を紹介しましょう。

 たとえば、毎年100万円を日経平均に投資するとします。いま4万円の日経平均が毎年2000円ずつ下がって、19年目に4000円になり、その後反転し、毎年2000円ずつ上がって27年目に2万円まで戻るとします。

 日経平均は、4万円から27年目に2万円に半減しましたが、さて、資産額はいくらになったでしょうか。

 答えは4026万円。積立総額2700万円(100万円×27年)の1.49倍に増えています。

 ちなみに37年目に日経平均が元の4万円に戻ったら、資産額は9390万円で、積立総額3700万円(100万円×37年)の2.53倍です。

 どうしてこういう魔法のようなことが起こるかと言うと、「資産額=株数×株価」で、株価が下がった時は株数を大きく増やせるからです。つまり、積立投資では、下がり続けない投資対象を選んで、とにかく買い続けることが大切です。

 個別株の場合、かつての日本航空のように下がり続けて最終的にゼロになってしまうことがあります。ゼロになることはない日経平均(日本)・S&P500(アメリカ)・MSCI(世界)といった指数に連動する投資信託を買うと良いでしょう。

■本多静六に学ぶ倹約・貯金と投資

 積立投資の有効性が頭ではわかったものの、「薄給で、生活するのがやっと。毎月貯金して、それを積立投資に回すなんて無理」という方が多いかもしれません。また、「若いうちからシコシコ貯金しているようでは将来大成しないぞ。しっかりお金を使って色んな経験を積むべきだ」と力説する先輩がいたりします。

 そういう人に知っていただきたいのが、本多静六(1866~1952)です。日本の元祖・億リーマンというべき本多の生き方や蓄財法は、現代の我々にとっても大いに参考になります。

 本多は明治32年(1899)に日本初の林学博士になり、東京帝国大学教授、林学の専門家として活躍しました。日本の造園学の基礎を築いたことでも知られ、日比谷公園など全国各地の公園を設計し、「日本の公園の父」と呼ばれています。

 本多は、裕福な農家に生まれましたが、9歳の時に父が急逝し、家計は困窮しました。苦学を経験した本多は、「経済の自立なくして自己の確立はない」「財産や金銭は、生きていく中で必要不可欠なものであり、それが安定しなければ、自分の信念を貫くことはできず、人は大成することはない」と考えました。

 そして、経済の自立を実現するために、独自の倹約方法と貯蓄方法を実践しました。

 本多が考案した倹約方法が「ツモリ貯金」。洋服や家具など欲しいものがあったら、それを買ったつもりになり、買ったものは一時的にお店に預けたと自分に言い聞かせたそうです。

 本多が考案した貯蓄方法が「4分の1天引貯金」。毎月の給料の4分の1を貯金して積み立てていくことです。本多は、東京帝国大学の助教授となった直後から、こうした倹約と貯蓄を実践しました。

 本多はその貯金で株や山林を買い、資産をさらに増やしました。投資の才能もあったようで、40歳のころには給料よりも株の配当金や貯金の利子のほうが多くなりました。巨万の富を築き、引退後はその大半を地元埼玉の育英事業に寄付し、苦学生を助けました。

■40代・50代は手遅れか? 

 ここまで読んで、40代・50代の読者は、「ああ、自分も若い頃から積立投資をやっておけば良かった」とため息をついているかもしれません。40代・50代は、すでに手遅れでしょうか。

 現在、日本人の平均寿命は男性81.05歳、女性87.09歳です(厚生労働省「令和4年簡易生命表」)。90歳を迎える人の割合は男性25.5%、女性49.8%です。「人生100年」と言われる通り、いま40代・50代の人は普通にあと40~50年生きるわけです。

 いま40歳の人が先ほどの条件で積立投資をしたら、悲観ケースで83歳、標準ケースで73歳、楽観ケースで67歳で億り人になれます。40代・50代でも「手遅れ」と決めつけず、積立投資を検討することをお勧めします。

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最終更新:4/18(木) 7:02

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