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1円で8LDKの不動産を買った男が教える「地方の格安空き家」を「優良物件」に変える方法

4/16 7:02 配信

東洋経済オンライン

安定した副収入の確保、老後の生活資金の足しにしたい――さまざまな理由から、収益物件を購入して賃料収入を得る、不動産投資がビジネスパーソンの間で注目されています。ただし、近年は資材価格や人件費の高騰を受け、とくに都心では物件価格が上昇しています。
そんな中で「地方の空き家」をターゲットにしているのが投資家・実業家の永野彰一氏です。どのように収益を上げているのかを聞きました。

■空き家を賃貸住宅として活用

 私が家投資を始めたのは2016年。250万円で売りに出されていた長野県岡谷市の戸建てを180万円で購入しました。以降、全国各地で数百件の家を買い進め、一部は別荘・事務所として使い、ほとんどは賃貸住宅として活用し賃料収入を得ています。

 最近は金融機関の融資も使い始めましたが、ほとんどの物件は現金で購入しました。それは、格安の空き家に狙いを定めているからです。

 総務省が5年ごとに発表している「住宅・土地統計調査」によると、2023年10月時点での国内住宅総数に占める空き家の割合は過去最高の13.8%。2018年の前回調査から0.2ポイント上昇し、その数は900万戸まで増えました。

 これらの多くは遺産相続による物件であり、離れた故郷にある、築古といった理由から、相続人が住むことはありません。

 一方、住まずとも固定資産税は発生するので、できるだけ早く処分したいと考える人はたくさんいて、これが価格下落に拍車をかけているのです。建物の解体費が土地代を上回るなどの理由から、なかには1円で売りに出され、所有者が購入者にお金を払う「マイナス物件」もあります。私はこういった空き家を手に入れてきたのです。

 家を買うには物件の売買代金に加え、登録免許税、不動産取得税、建物の状態によっては修繕費もかかりますが、仮に家屋が1円〜10万円くらいだとすれば、初期費用はおよそ100万円内に収まります。これなら頑張れば貯められる金額です。

 融資を使うと毎月の返済が生じ手元に残るお金はわずかですから、現金で始めるのがセオリーと考えています。また、管理費や修繕積立金がかかる区分マンションには手を出さず、戸建てに対象を絞っているのも私の家投資の特徴です。

 実際に私が買った家の例を挙げます。この物件は、福岡県の中央にある飯塚市にある築60年、2階建て8LDKの戸建て。交通の便がよく九州の拠点として使おうと考え、2020年11月に1円で購入しました。

■1年半後に420万円で売却

 1円だった理由は、相続と売却を繰り返した結果、土地と建物の所有者が複雑に入り組んでいたからです。知り合いの不動産会社から「解決してくれたら1円で売ります」と持ち掛けられ、弁護士を間に入れ権利関係をクリアにしたうえで、私が100%の権利を得ました。

 その過程では、権利者からコンサルタント料や処分代の名目で費用をもらい、それを他の人にわたすという調整を行っています。私の取り分はゼロですが、弁護士費用などはコンサルタント料から充て、実質的な持ち出しは9万円程度でした。格安には理由があり、こういった手間や知識は求められます。

 ちなみにこの家は突風により附属家が倒壊してしまったため、1年半後に売却しました。不動産会社に相談したところ、「家を解体して更地にしたら土地だけで840万円、現況のままなら420万円」とのことだったので、現況で売りに出したところ満額で買い手が付きました。

 図らずとも不動産投資の入り口から出口までを経験した物件ですが、最終的な利益はプラス。築古物件だとこういったリスクはありますが、安く買うことで回避できたというエピソードでした。

 いくら全国にたくさんの空き家があるとはいえ、そんな簡単に見つけられるのか。私は3つのアプローチを実践しています。

 1つ目は、不動産情報サイトの活用です。検索すると全国各地の格安物件を見つけることができます。なお、候補物件が必ずしも1円レベルで売られているわけではありません。数百万円の家も当然ながらありますが、その際は不動産業者と値引き交渉をするのも手です。自分から「〇〇円なら買える」と指し値をすると、応じてもらえることがあります。

 2つ目は、時間・手間はかかりますが、気になる地域に足を運び、地場の不動産会社に相談する。気になる家を見つけたら自治会長や近隣の人に持ち主は誰か、買うことができるかといったことを尋ねることです。空き家が増えており防犯や景観の面で課題を抱えている地域なら、親切に答えてくれます。

 現地に行くことでネットワークができると、電話やメールで最新の情報を聞けるようになり、先に挙げた福岡県の事例のように相談を持ち掛けられることもあります。

 3つ目は、全国各地の「無償譲渡物件」を探す方法です。日本の人口はすでに減少し始め、高齢者が子どもと同居したり、介護施設などに入居したりすると、それまで住んでいた家は空き家になります。また、高齢者が亡くなり親族が相続した実家が空き家になるケースも増加しています。

 こうした状況を受け、全国の自治体は土地・建物を0円で譲渡するためのプラットフォーム「空き家バンク」の運営に取り組み始め、インターネットで買い手を探したり、定住化を目指した説明会を開催したりするケースもあるようです。

■地元の不動産会社と良好な関係を築く

 私の場合、地元の不動産会社との関係構築に努めています。欲しい物件が見つかったとしても、その先には価格交渉や購入手続きが待ち構えています。個人でできないことはありませんが、地元の不動産会社に依頼して仲介してもらうのが無難です。また賃貸物件の入居者が家を買いたいというケースもあり、このときも不動産会社に仲介をお願いしています。

 これにより、少ないとはいえ仲介手数料が不動産会社にもたらされ、縁が深くなるのです。私の経験では、物件購入を機に知り合いになった不動産会社が、次の物件を安く紹介してくれたということが何度もあります。

 また、家を賃貸に出すと不定期で住民が入れ替わる可能性があり、入居者募集や日々の対応、修繕などの手間が生じますが、全国に数百件ある家を私が管理するのは不可能です。家の管理は地元の不動産会社に依頼しておくと安心です。毎月の管理手数料も支払うので安い仲介手数料の穴埋めになり、良好な関係づくりにも影響します。

 こういった関係構築が功を奏したのが、昨年12月に愛知県内で購入した、築7年の戸建てです。当初の売値はそれなりの価格でしたが、不動産会社が「これくらいの値引きであれば売主さんが応じてくれそうです」と言ってくれ、相場より格安で購入することができました。前の持ち主は地域の地主でしたが、親族間のトラブルで急に売り出す必要があり、安値でも手放したかったようです。

 空き家とは異なりますが、こういった事情に精通しているのは地元の不動産会社ならではのこと。購入後に入居者募集をお願いしたらすぐに決まり、利回りも10%を超える優良物件として稼働しています。

 (構成:大正谷成晴)

東洋経済オンライン

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最終更新:4/17(木) 8:24

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