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「出世を嫌がる若手社員」を理解しない中高年社員の意外な盲点 若手が「ワークライフバランス」を重視する納得のワケ

3/27 9:51 配信

東洋経済オンライン

現在の若手社員は給料や出世に固執せず、入社数年で辞めてしまう人もめずらしくありません。それはなぜなのでしょうか。著書に『多分そいつ、今ごろパフェとか食ってるよ。』などがある漫画家・イラストレーター・グラフィックデザイナーのJamさんが、自身の経験を基に解説します。

■「ワークライフバランス」重視する若者との向き合い方

 最近の若者は、給料や出世より「ワークライフバランス」を重視する傾向にあります。一世代前に重視された「昇進」や「高い給料」より、「仕事と生活を調和させる」ことのほうが大事だと思う人が増えているのです。

 ただ仕事をするだけではなく、やりがいが重要であるのに加え、趣味や休暇や育児など、生活とのバランスが大切だとしています。これは、政府広報の「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」でも策定されています。

 しかし、昇進や給料のために仕事中心で滅私奉公してきた中高年社員世代からすると、この考え方との間に溝が大きいようです。「ワークライフバランス」を重視する若者たちに、中高年社員たちはどのように向き合っていくべきでしょうか。

 今の若者たちはなぜ、出世や給料に執着しなくなってしまったのでしょう?  あるアンケートや調査によると、20代の7割以上が特に出世をしたくないそうです。

 理由は「出世をすると責任ばかりが増える、それに見合った給料が得られない。忙しくなればプライベートな時間がなくなる、上司を見ていて大変そうだから」などです。つまり、会社で働く上司や先輩を見て、「出世をしてもあまり報われない」と感じているのです。

 多くの企業は、一定の年齢を超えると給料の天井が見えてきます。そして、昇進のために残業や転勤などの滅私奉公を求める傾向にあります。これは、なかなか正社員を解雇できない労働関連の法律のせいもあります。

 企業側としては「簡単に人を増やしたり解雇したりできないから、忙しいときは残業してほしいし、転勤にも応じてほしい。定年まで雇えるようにするから、給料も生活できるレベルで納得してほしい」というわけです。

 また「そういった条件を飲むから、簡単に解雇しないでほしい」と、雇われる側も長い年月これを受け入れてきました。中高年社員世代は滅私奉公にあまり抵抗がないし、「激務=昇進&高収入」が当たり前の価値観の中で生きてきたのです。

 そのため、定時に帰ったり転勤を断る「ワークライフバランスを重視する若者」を、「わがまま」や「甘い」と感じたり、理解したりすることが難しいのです。

■いつの時代も働き方は変わっていく

 しかし、今は昔とは違います。大手企業でも大量解雇をしますし、定年までの安定した雇用が保証されていません。そして多くの企業は給料や昇進の基準が、昔とあまり変わらないままです。

 そんな世代を見て育った若者たちが、滅私奉公してまで出世したいと思うでしょうか?  プライベートを大事にしたり、給料や出世よりもやりがいのある仕事をしたいと考えたりするのは、おかしな話ではありません。

 最近は年功序列の昇進ではなく、能力によって評価をしたり、フレックスタイムやリモートを選択肢に入れたりする、新しい時代の要望にマッチした会社も増え始めています。いつの時代も働き方は変わっていきます。

 大正~昭和にかけては、サラリーマンは仕事に忠誠を尽くし、給料以上の働きをするのが当たり前でした。しかし、当時のサラリーマンたちが「安楽な家庭生活」を望んだため、仕事はそのための手段となっていきました。出世や給料は「安心して生活をするため」に必要だったわけです。

 望むところは、今の若者たちとあまり変わりないのではないでしょうか?  若者たちのワークライフバランスを重視する考えを、柔軟に受け入れてみるのもよいと思います。

■若手社員が入社数年で辞めてしまう理由

 入社して数年で「こんなはずじゃなかった」と、会社を辞めたがる若者が増えているそうです。こんなとき、上司は引き留めるべきでしょうか?  また、引き留めるなら、どう引き留めればよいでしょうか?  それにはまず、若者が「こんなはずじゃなかった」と感じてしまう理由について、考える必要があると思います。

 上司の立場からすれば、後から「こんなはずじゃ」と不満を言われれば、「なぜ、入社前に会社についてきちんと調べなかったのか」と思うことでしょう。しかし、それは言葉で言うのは簡単ですが、実行するのはなかなか難しいのです。

 平均3~6カ月といわれる就職活動期間に、自分の希望に合った企業をみつけて、知りたい情報のすべてを知るのは不可能に近いです。

 スケジュールが過密すぎるし、企業から情報が出るタイミングや、選考時期も各社ほぼ同時です。一度に大量に入って来た情報を処理しなければならないし、企業の開示した情報と自分が知りたい情報にズレがあることもあります。「就職活動を始める前から希望の会社が決まってた」など、ピンポイントで絞れないかぎり、深く調べ尽くすことは難しいのです。

 「思い違い」も生じると思います。そして、入社前に企業に抱いていた企業イメージと、入社してからの現実との間に大きなギャップを感じ、「こんなはずじゃなかった」ということになってしまうのです。

 これについて、企業側にできる対策があるとすれば、就活生向けの広報活動を行う際に、アンケート調査などを参考に、「就活生が本当に知りたい情報を、得やすいようにする」などでしょうか。結果には原因もあると考えて対処することで、多少はギャップを回避できるかもしれません。

■引き留めるかどうかは「理由次第」

 上司が入社数年で辞めたい若者を引き留めるべきかですが、辞めたい理由や状況によると思います。本人に克服する気がない、あるいは上司や周りのせいにして、社内で会社への不満や辞めたい意思をちらつかせている場合は、引き留めないほうがいいと思います。

 理由は、会社に不満や不信があって辞めたがる人がいると、周囲にも悪い影響が出るからです。また、辞める意思の強い人を無理に引き留めると、パワハラと取られてしまうこともあります。SNSなどで個人発信が旺盛な時代です。「辞めさせてくれない」などと拡散されれば、企業イメージがダウンする可能性もあります。

 逆に、本人がギャップを克服するために努力したい気持ちがあったり、上司や周りに相談する姿勢があったりするなら、しっかりと必要なフォローをしつつ、引き留めたほうがいいと思います。

 「こんなはずじゃなかった」は、情報不足や自信の足りなさが原因であることが多いです。不安要素さえ取り除くことができれば、「こんなはずじゃ」をネガティブなものから、ポジティブなものに変えることもできます。

 引き留めるなら、先に挙げたような若者の就職活動時の事情も考えたうえで、配慮してみてはどうでしょう?  今だけの問題ではないと理解するだけでも、説得する際に選ぶ言葉は変わってくると思います。ただ、その場合には、引き留めたい社員を特別扱いすると他の社員の反感を買うので、注意が必要です。

■辞める若者は「本当の退職理由」を言わないことも

 ちなみに、退職に関するアンケートでこんな話があります。退職理由のTOPは「人間関係」や「労働環境」ですが、退職時に上司に伝える際は、「家庭の事情」や「新しいことに挑戦したいため」と伝えるそうです。

 そして、上司の引き留めの言葉や、状況改善の提案に心動かされて、退職をとどまった人のほとんどが、最終的には退職や転職をする傾向にあるとか……。「こんなはずじゃなかった」と言いつつ、実際は別の問題が理由の可能性もあるわけです。

 退職希望者の大半は退職の意思を伝える時点で、次の職場や進路が決まっていることがほとんどです。「こんなはずじゃなかった」ということが何度も起きないよう、社内環境を見直すなど、就活生向けの広報の段階から対策を考えたほうがよいのかもしれません。

東洋経済オンライン

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最終更新:3/27(水) 9:51

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