日経平均株価をめぐる「2つの激しい攻防戦」とは何か?

5/27 7:32 配信

東洋経済オンライン

 日経平均株価は5月24日に反落、3万8646円で終えた。現在の日経平均はテクニカル面から見ると「2つの攻防戦」が展開されている。

■「2つの攻防戦」とは何か? 

 それはどういうことか。1つは売り買いのコストである移動平均線をめぐる攻防戦だ。特に、4月中盤から続いている「75日移動平均線を中値(高値と安値の中間値)とする攻防戦」は一段と激しさを増している

 日経平均は、今年序盤の急騰によって、短期の25日移動平均線からの乖離率は+7%超まで広がって過熱した。だが、その後はスピード調整で4月に入りマイナス乖離となった。

 そのため、投資家の目線は中期の75日移動平均線に移った。しかし、その75日移動平均線からの乖離率も4月相場ではプラスマイナスを繰り返すうちに、短期の25日移動平均線が上からかぶさる形でデッドクロスとなった。

 これは弱気シグナルのはずだが、直後に日々線(当日終値)がこのデッドクロスポイントを上抜けし、一転、買いシグナルに変わった。現在は25日と75日移動平均の狭間に入り込んで、両者のシグナルを消し合う攻防戦となっている。

 2つ目は自動売買に使われていると思われる上値・下値のポイントをめぐる攻防戦だ。日経平均終値ベースでの今年の高値4万0888円(3月22日)のスタートは、昨年10月4日の3万0526円である。

 このときの上昇幅は1万0362円という短期急騰相場だったが、その後は4月19日の1011円安の3万7068円で押し目を確認したあと、4月24日の3万8460円、5月7日の3万8835円、5月20日の3万9069円、5月23日の3万9103円と、激しく上げ下げを繰り返しながらも、じりじりと上値を取っている。

 しかし、やはり4万0888円を抜けて新しい上昇波動が確認されるまでは安心はできない。目先の攻防戦の上値は5月23日の3万9103円、下値はその前日の3万8517円となるが、下値は5月9日の3万8073円までがセーフティーゾーンと考える。これが2つの攻防戦の詳細だ。

■「弱気派」と「強気派」の見る景色がまったく違っている

 このような激しい攻防戦が展開されるのは、弱気派と強気派の見る景色がまったく違うからだ。

 内閣府が5月16日に発表した2024年1~3月期のGDP速報値は、物価変動の影響を除いた実質の季節調整値が前期比0.5%減、年率換算で2.0%減だった。2四半期ぶりのマイナス成長となり、日本経済の停滞を印象付けただけでなく、民間予測の中心値の年率1.5%減を大きく下回っていた。

 当然、これは株式市場にとって大きなマイナス材料だが、当日の日経平均は534円高となって、25・75日移動平均を一気に抜いた。なぜだろうか。株式市場は「名目値」を評価するからだ。メディアでは「GDP年率2.0%減」がタイトルだが、名目値で言うと「前期比年率換算+0.4%、前年同期比+3.4%でGDPは599兆円」となり、景色がまったく違う。

 不人気政権がデフレ脱却宣言を出すかもと言われる「GDP600兆円」がはっきり見えたとしたら、534円高も当然と言える。企業業績は名目値で記載され、当然税金は名目利益にかかる。国家(経済)は名目値で運営されているのだ。

 また、企業業績も見方によっては景色が違う。3月本決算企業による今期予想の発表が終わったが、東証プライム銘柄における、前2024年3月期決算の純利益は前々期比18%増と、予想以上の結果だった。

 今2025年3月期の純利益予想は現在のところ前期比約4%の減益になっている。この景色では当然買えない。

 だが、今期の減益予想の主な原因は、各企業が為替レートを読めないことで極端に慎重な予想を出したことによる。

 思い出してほしい。4月初めに出た日銀短観での企業の予想為替レートは1ドル=141円だった。そこから決算発表までさらに円安が進んだが、例えばホンダが1ドル=140円、トヨタ自動車は1ドル=145円で、為替予想は4月時とほぼ変わらない。

 その結果が今期の純利益予想4%減予想というわけだが、もしこのまま第1四半期決算を出す7月後半から8月前半まで、今のような150円台後半の円安のままだったら、「今期第1弾の上方修正」が出ると思われる。

 もちろん、第1四半期なので企業の多くは慎重な見方を変えないだろうと思われる。だが、急激に円安が進んだ前期も、当初予想は約3%増益だった。

 それが第1、第2、第3四半期と進むにしたがってその都度大きく上方修正され、結局18%増まで上昇したのだ。しかも、今期予想は慎重だと言われているが、それでさえ、日経平均の予想EPS(1株利益)は5月9日の2181円をボトムに、23日には2369円に上がっている。

■アナリストレポートを得た個別株は強い値動きに

前回の記事「5月の日本株は『セル・イン・メイ』ではなく買いだ」では、兜町筋はとりあえず決算発表後のアナリストレポートが出そろうのを待って、レポートによるマーケットの反応を確認してから攻めようとしている、という趣旨のことを書いた。

 早速24日には、みずほ証券が投資判断を「中立」から「買い」に格上げ、目標株価も4200円から6000円に引き上げた資生堂が、日経平均が一時700円安となった中で大幅続伸している。日経平均のせめぎ合いに、しばらくはアナリストレポートによる個別株の動きが加わるだろう。

 同日には日本の10年債利回りがついに1%に達し、前述の一時700円安にも若干の影響を与えたかもしれない。だが「長期金利1%ショック」は起きていない。これは2%に向かってゆるやかに上昇していく通過点、と考える投資家が多いためとみられる。逆に米欧は2%に向かって下降する体制入った。これから、市場はこの2つの流れを織り込みながらの展開となりそうだ。

 今週(27~31日)の予定を見ると、その流れに影響を与えそうなアメリカのいくつかの重要指標発表がある。ベージュブック(築連銀経済報告)や1~3月期のGDP改定値などにも注目だが、やはり週末・月末の31日に発表される4月の個人消費支出(PCE)はしっかりチェックしたい。この日は日本や中国の指標発表も多い。そして、それを携えて6月相場に突入して行く。

(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)

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最終更新:5/27(月) 7:32

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