私がいま中学生なら必ずそうする…東大卒の科学ライターが「東大合格を目指すなら塾には通うな」という理由

4/18 10:17 配信

プレジデントオンライン

東京大学に合格するには、どうすればいいのか。東大卒でサイエンスライターの竹内薫さんは「私自身は、塾通いが効率的とは思えず、塾には通わなかった。もし私がいま中学生なら、迷わず海外の高校に進学し、『外国学校卒業学生特別選考』で受験する。受験勉強は戦略的に考えたほうがいい」という――。(第3回)

 ※本稿は、竹内薫『東大卒エリートの広く深い学び方』(かんき出版)の一部を再編集したものです。

■高3から受験を始めて東大に受かった勉強法

 まず、私の大学受験について触れておきましょう。筑波大学附属高校で馬術の練習に明け暮れていましたが、高校2年生の3学期の終わりに退部し、完全に切り替えて入試対策に取り組むことにしました。

 まずは自分の学力がどの程度なのかを知るためにと模擬試験を受けたところ、結果はまったくダメ。「これはほんとにまずいな……」という強烈な危機感で焦り、そこから本腰を入れて受験勉強を始めました。

 英語は私の得意科目だったので大丈夫。問題なのは、国語と数学です。とはいえ、もともと科学少年だったので数学は実は結構好きな科目だったことと、いい参考書に巡り合えたことで、受験勉強を始めて割とすぐに成績が上がりました。

 私が使っていた参考書は、渡辺次男さんという当時の伝説的な塾の講師が書いた『なべつぐのひける数学I・ⅡB・Ⅲ』でした。辞書のように「ひける」構成のため、ランダムに項目を引いて見開き単位で問題を解くことができたので、楽しく効率的に勉強できたことを覚えています。

 あとは国語ですが、当時、どんな参考書を使っていたのか記憶にありません。それでも、現代文の解釈や古典を中心に勉強していたことは覚えています。

 当時の担任だった黒澤弘光先生は、筑波大学で修士号を取得した学者肌の国語教師だったのですが、参考書を何冊も執筆していたので、それらの参考書を使って勉強していた時期もありました。学校での授業は深掘りばかりでしたので、ちょっと不思議に思いますが……。

■勉強のリズムをつくって継続する

 このように独学ですが、参考書や先生の助けもあって成績が上がっていきました。その一方で、大事なことに気づきました。受験に打ち勝つには、勉強のリズムをしっかりつくるのがもっとも大切だということです。

 私の場合、夏休みに朝の時間を使って勉強する習慣を身につけました。毎朝5時に起きて自分で朝食をつくり、5時半から勉強を始めます。お昼までには一通りの勉強を終えるようにして、午後は気分転換に運動したり、息抜きしたりして一定のリズムをつくり、それを習慣にしたのです。

 習慣化した勉強のリズムをひたすら続けることで、受験という競争に打ち勝ち大きな壁を乗り越えて無事に東大に合格できたのです。「それだけ?」と思われるかもしれませんが、本当にそれだけです。勉強のリズムをつくって継続することこそ、受験にもっとも必要なことだと思います。

■なぜ最初に過去問から取り組んだのか

 受験とはまさに、私たちの前に立ちはだかる大きな「壁」ではないでしょうか。受験のためのカリキュラムに沿った授業もなく、塾にも通わなかった私には、大学受験を戦略的に考える必要がありました。

 自分の人生において、いかに目の前の壁を乗り越えるのかは、当時、高校生だった私に与えられた大きな課題だったのです。もちろん、大学合格は最終ゴールではありませんが、目の前に立ちはだかる壁であることに違いはありません。その壁を突破しないと、人生の次のステップへと進めないのですから必死です。

 私が最初にしたこと、それは受験に関する情報の「収集」です。まず、東大を受験するにあたって、「過去問はどんな傾向なんだろう」というところから始めました。

 東大の赤本で過去問の分析に取り組んだのです。赤本を開いたときの「ああ、こういう問題が出ているんだ」という感覚は、いまでもはっきり覚えています。

 次に、東大入試の過去問を解こうとしたのですが、まったく解けない。「なんで、解けないんだろう」と不安になりました。そこで、自分の弱点を洗い出して、それらを克服していく手段を考えました。

 具体的には、受験情報を収集して、過去問を解いて、結果を見て、それを評価する。これらの行程を繰り返して自分の課題を明確にしていきました。

■受験をひとつのプロジェクトとして捉える

 自分の課題がわかったら次はどうすべきかですが、自分ひとりの力ではさすがに限界があります。そのとき頼ったのが、塾ではなく参考書や問題集でした。東大入試の出題傾向を調べたうえで、書店に行って自分の弱点を補強するために役立つベストな参考書や問題集を探しました。

 このように考えて取り組んでいくと、受験とは目の前の壁を乗り越えるために解決すべき1つのプロジェクトと捉えることができ、受験に打ち勝って合格するというのはそのプロジェクトを完成させる作業でもあると思えました。それは、私が取り組んでいたピアノの練習と似たものでした。

 ピアノを本気で習得しようとしたら、教則本はまずバイエル、次にチェルニーというように、基礎から始めて徐々にレベルを上げていくのが一般的です。しかし、私はそうした王道の方法を選ぶことはしませんでした。

 「この曲を弾きたい」と思ったら、「どうやったら弾けるようになるんだろう」と考えて、自分の弾きたい曲の分析から始めるのが好きなやり方だったからです。実際に弾いてみて、「この指の動きができない」ということがわかると、そこから「こういう練習をすればいいのか」ということに気づく。興味があることを積み重ねていくという練習でピアノと向き合っていました。

 ピアノは、曲自体の構造を知ることで、演奏により深みが出るといわれています。自分が弾きたい曲の構造を理解するにはどうしたらいいのか、何の知識が必要なのか、それはコードの知識なのかといったことを一つひとつクリアしていく。まさに、1つのプロジェクトを完成させる作業に似ています。

■塾は効率的とも思えなかった

 話を戻しましょう。「合格を目指すなら塾に通って勉強したほうが、格段に成功率が上がるのでは?」と思う人もいるでしょう。ですが、受験を1つのプロジェクトと捉えていた私にとって、塾に通って勉強するのは好きな方法ではないし、効率的とも思えなかったのです。

 実は、私も夏期講習に通ったことがあり、そこで気づいたことがあります。それは効率の悪さです。私が受験勉強をしていた当時、いまのような個別指導をする塾はほとんどなく、学校の授業と同じ集合教育の延長のようなものでした。学校の授業で座っているのと同じように塾講師の話を聞き、ほとんどの時間を他人の弱点の克服法について授業を受けるというのは、時間がもったいないと感じたのです。

 それよりも、自分の弱点にフォーカスし、それを徹底的につぶしていくほうが、効果が2倍にも3倍にもなると、考えました。

 結果は一目瞭然でした。こうして私は受験というプロジェクトで成功を収めることができたのですが、1つ皆さんにお伝えしたいことがあります。それは、受験を1つのプロジェクトとして戦略的に捉えて挑戦した人ほど、その後の学びにおいても大きく伸びるということです。さらに、社会に出ても活躍し続けることができるようになります。

 勉強も仕事も、目の前の課題を解決すべきプロジェクトとして捉えると、自ら考えて工夫し、自力で乗り越える手段を身につける訓練になるからです。

■私が中3なら迷わず海外に行く

 私が受験をした当時といまとでは、受験を乗り越えるというプロジェクトの形も大きく様変わりしたといえます。いまは、ネットでさまざまな受験情報をすぐに得られますし、勉強法もたくさん紹介されています。本当に便利な世の中です。

 たとえば、YouTubeでもさまざまな勉強法が公開されていますので、私が受験勉強で取り組んだ情報の収集も、弱点の克服も、それらを活用すれば効率が格段に上がるでしょう。受験に打ち勝つ戦略の立て方は多様化しているのです。

 もう1つ、私が受験をした当時といまとで大きく違うのが、入試制度の仕組みです。現在、大学受験の方法は国公立・私立ともに「一般選抜」「学校推薦型選抜」「総合型選抜」の大きく3つに分けられています。

 大学入試センター試験から大学入試共通テストに変わった2021年度入試から、一般入試は一般選抜、推薦入試は学校推薦型選抜、AO入試は総合型選抜へと名称が変更されています。こうした大学入試制度を把握したうえで、私がこれから東大を目指すなら、どのような制度を利用して勉強するか? 間違いなく、4つめの「特別選抜」です。

 私がいま中学3年生だとして、そこから東大を目指すなら、迷わず海外の高校に行くでしょう。たとえば、東大の2023年の世界ランキングは39位ですが、たとえば40位にいるブリティッシュ・コロンビア大学(カナダ)を目指すならペーパーテストの入学試験はありませんから、塾に通う必要もありません。

■入試に打ち勝つには、まずは受験情報の収集から

 世界ランキング30位から100位あたりの「東大クラス」の大学の多くは、東大よりもはるかに入りやすいのが現実です(英語ができればの話ですが……)。前ページで紹介したように、大学入試には一般選抜、学校推薦型選抜、総合型選抜があるので、必ずしもいまは一般選抜で受験する必要はありません。

 そこで留学から戻った私が狙うのが、社会人選抜や帰国子女選抜などを対象に特別枠を設けて選抜する「特別選抜」という枠です。

 実は、東大には一般選抜のほかに、共通テスト(旧センター試験)を受験しなくても、IB(国際バカロレア機構が提供する教育プログラム)を取得することで入学できる方法があるのです。それは、「外国学校卒業学生特別選考」というものです。東大のウェブサイトには、次ページのような記載があります。

 私がいま受験生なら、この入試制度を利用して東大を目指すでしょう。留学して高校の3年間を海外で勉強することで英語力が身につくうえ、東大に限らずこうした特別選抜での受験オプションが格段に増えるからです。

 大学のウェブサイトには、学部・学科ごとに入試情報が掲載されています。入試情報のページで、入試制度に関する詳細を調べてみると、複数の入試制度が用意されていることを知ることができます。

 また、入試制度の仕組みに加えて、出願要項や募集要項も確認しておくことで、自分に合う入試制度を利用することができます。入試に打ち勝つには、まずは受験情報の収集からです。



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竹内 薫(たけうち・かおる)
サイエンスライター
1960年、東京都生まれ。東京大学教養学部教養学科(科学史・科学哲学専攻)、東京大学理学部物理学科卒業。マギル大学大学院博士課程修了(高エネルギー物理学理論専攻)。理学博士。大学院を修了後、サイエンスライターとして活動。物理学の解説書や科学評論を中心に100冊あまりの著作物を発刊。物理、数学、脳、宇宙など、幅広いジャンルで発信を続け、執筆だけでなく、テレビやラジオ、講演など精力的に活動している。
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最終更新:4/18(木) 10:17

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