個人投資家が日本株買い積極化か、「反応関数」変化-NISA効果も

3/28 14:14 配信

Bloomberg

(ブルームバーグ): 日本株市場で長年売り手になることの多かった個人投資家が最近は買い手となることが増えており、投資姿勢が変化している可能性がうかがえる。日経平均株価が史上最高値を更新するなど高値圏にある日本株にとって、個人の売り圧力が減れば新たな援軍となりそうだ。

新しい少額投資非課税制度(NISA)開始で積み立てによる継続的な買いが入りやすくなっている。日経平均がバブル期につけた高値を上抜けたことで、デフレ的な経済環境が終わったとの見方も広がっている。こうしたことが、姿勢の変化につながっていると見られる。

「個人の売り越しが少なくなっている。スタンスの変化が表れてきた」とBofA証券の圷正嗣チーフ日本株ストラテジストは語る。「株主還元が明らかに増加している。それが個人の資金を呼び込むファクターになる可能性があり、その兆候が表れ始めている」という。

個人は長年「相場が上がれば売り、下がれば買う」という逆張りスタンスに徹してきた。個人の売買動向と東証株価指数(TOPIX)の値動きを週間ベースで比べると両者の間には強い逆相関があり、関係の強さを測る決定係数は0.8前後と極めて高い水準で安定している。2023年で見るとTOPIXが週間で1%ポイント上昇した場合、平均すると個人の売りが1800億円程度増加するとの関係性が見られる。またTOPIXがほぼ横ばいだった場合は個人の売り買いもほぼ中立だ(チャート右図)。

しかし同じ比較を22日までの直近9週間のデータで行うと、少し違った姿が見える。トレンドラインは右肩下がり、つまり相場が上がれば売りが増えるという逆張りスタンス自体は変わらないが、トレンドラインの位置が過去と比べて大幅に上方にシフトしているのだ。これは以前はTOPIXがほぼ横ばいだった時は個人の買い越しもほぼゼロだったのに対し、直近では2400億-2500億円程度の買い越しになる傾向があることを意味する。角度を変えて見ると、個人が売り越しに回るのはTOPIXが1.3%程度上昇してから、とも言える(チャート左図)。

もちろん、たった9週間のデータをもってトレンドが変わったと断定的に言えるわけではない。年初に1兆円を超える大量の売りを出した後で、売り過ぎたポジションを再構築しているに過ぎないと解釈することも可能だろう。

とはいえ、日本株が底打ちした09年から昨年までの15年間のうち12年で個人は日本株を売り越しており、合計の売越額は38兆円に及ぶ。もし個人のスタンスが変わったとすれば、市場の需給構造に与える影響は少なくない。

ニッセイ基礎研究所の前山裕亮主任研究員は「新NISAの影響は無視できないだろう。これまでより確実に買いが入りやすくなっている」と指摘。前山氏は、逆張り傾向は変わらないものの3月第2週に日経平均が4万円の大台を割り込んだ局面ではしっかりとした買いが入ったことに注目し、「足元の株価上昇には半信半疑ながら、買いの目線が切り上がってきているようだ」との見方を示した。

BofA証券の圷氏も、以前のデフレ的な環境では名目国内総生産(GDP)はほぼ横ばいで企業収益の伸びも限られたことから、景気が良く相場が上がった局面では株を売るという行動パターンにそれなりに合理性があった、と話す。その上で「インフレが定着する世界になれば企業業績は上昇しやすく、従って株価も上昇しやすい」として、インフレ動向が鍵を握るとの考えを示した。

(c)2024 Bloomberg L.P.

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最終更新:3/28(木) 18:42

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