「この年齢なので、私の年収より低くて構いません」 年収900万40代美人の「婚活市場価値」切ない現実 それでも「結婚をつかんだ」女性に共通することは?

7:32 配信

東洋経済オンライン

「上方婚」「下方婚」という言葉をご存知だろうか。
「上方婚」は社会的地位、収入、学歴などのステータスが自分より高い相手と結婚すること。対して「下方婚」は社会的地位、収入、学歴などのステータスが自分より低い相手と結婚することだ。
仲人として婚活現場に関わる筆者が、婚活者に焦点を当てて、テーマ別にリアルな声をお届けする連載。今回は、上方婚と下方婚が婚活にどう影響を与えているかを考えてみたい。

■多くの女性が望む「上方婚」

 あるネットの番組で、日本の多くの女性が望んでいるのは上方婚で、自分よりも学歴や収入の高い男性と結婚したいと願っている。 女性の社会的地位が上がり、高学歴、高収入の女性が増えたことで、彼女たちは、そもそも”結婚をしたい“と思わなくなってきている。それが、婚姻率を下げている一因につながっているのではないか、と論議されていた。

 仲人をしている経験則でいえば、これまでお世話してきたほとんどの女性たちが上方婚を望んでいたし、それをしてきた。

 もちろんなかには、女性大卒・男性高卒のカップルもいたし、自分よりも年収が低い男性を選んで結婚した人もいたが、下方の振り幅は狭かった。

 年収の場合は、男性が低いといっても差が100万円程度。年収600万円の女性が、自分の年収の半分である300万の男性を選ぶことはなかった。

 では、男性は、結婚する女性に何を求めるのか。これは番組でもやっていたが、“若さ”だ。

 年収600万円の男性は自分よりも若い年収300万円の女性を選ぶし、1000万円超えの男性は、そもそも女性に経済力や学歴を求めていない人が多い。若くて見た目がタイプなら、“家事手伝い”でも結婚したいと思って、お見合いを申し込む。

 日本社会がこうした状況下にあるので、高学歴、高収入の女性が、結婚をしづらくなっているのは事実だ。ことにアラフォーが結婚しづらい。

■1年以内に相手が見つかれば…

 きよみ(40歳、仮名)は外資系に勤め、年収が900万円あった。これまでいくつかの恋愛をしてきたが、結婚をしたい気持ちのタイミングが相手と合わず、歳を重ねてしまった。

 仕事は日々忙しい。しかし、40歳になり、“もしかして1年以内に相手が見つかり結婚できたら、子どもも望めるかもしれない”と、婚活をスタートさせることにした。

 入会面談のときにこんなことを言った。

 「この年齢なので、ぜいたくがいえないのはわかっています。ただ、子どもを授かることを考えたら、なるべく歳の近い方と結婚がしたいんです。収入に関しては、私は外資なので福利厚生が手厚くないし、退職金もない。男性は日本の企業に勤める方なら、私の年収より低くても構いません」

 そして、サイト登録をした。

 美人のきよみには、登録するやたくさん申し込みが来たのだが、年齢が近い(年下も含め)と、男性の年収は400万円台、500万円台が多かった。きよみと同等、それよりも年収の高い男性になると50代の申し込みが多く、年齢的にお見合いしてみたい相手ではなかった。

 「まだ始めたばかりなので、できれば45歳くらいまでで年齢を区切りたいです。自分から申し込んでみます」

 こう言って、年収は750万円以上、年齢を45歳までで区切り、見た目もタイプの男性に20件申し込んだのだが、1つも受諾されなかった。

 「やっぱりこの年齢になると厳しいのですね」

 先にも記したが、年収が1000万円近い、またそれ以上稼いでいるアラフォー男性は、同世代の女性を結婚の対象として見ていない人が多い。それだけの年収があれば、30代前半の女性、ときには20代ともお見合いが組めるからだ。

 そこで、少し年齢の幅を広げ、49歳までの男性の申し込みは受けることにして、49歳・年収900万円の男性、48歳・年収850万円の男性、47歳・年収750万円の男性と、3つのお見合いをした。このうち、49歳と47歳にはお断りを出した。

 「こちらの質問に一言答えると黙ってしまって、話が続かなかった。時間が過ぎるのをとても長く感じて、座っているのが苦痛でした」

 3人の中でも48歳の男性とは「普通に話ができた」というので、「ピンとくるものはなかった」というが、交際希望を出した。しかし、交際になり一度デートしたものの、話がはずむわけではなく、その後、男性側からの連絡も来なくなった。

 「もう2週間以上音沙汰がないので、交際終了にしてください」

 きよみが筆者に伝えてきた。

■結婚したいが見合う相手がいない

 冒頭のネットの番組で、「女性の社会的地位が上がり、高学歴、高収入の女性が増えたことで、彼女たちは、そもそも”結婚をしたい“と思わなくなってきている」と見識者たちが語っていたのだが、”これは少し違う“と、仲人をしている筆者は思う。

 高学歴、高収入の女性たちも、“結婚はしたい”とは思っている。ただ、自分に見合う相手がいないのだ。

 彼女たちは20代、30代と仕事に没頭し、キャリアを磨く。40歳という年齢が見えてきたときに、出産できる年齢のタイムリミットを考え、結婚を急に現実のものとして捉えるようになる。そして、婚活市場に参入してくる。

 しかし、年収が自分と同等、もしくは上方の男性は、同世代の女性を結婚する相手として見てはいない。そうした男性たちも、結婚はイコール、子どもを授かり家庭を築くことなので、出産できる年齢の幅が広い女性を選びたいからだ。

 また高学歴、高収入でコミュニケーション能力も高く、人当たりも見た目もそれなりにいい男性は、20代、30代前半のうちに、自分のキャリアを磨くことより上方婚を望んでいる若くて可愛い女性たちに捕まえられ、婚活市場に出ることなく、結婚へと導かれてしまう。

 一方で、アラフォーを過ぎ、40代後半、50代になっても独身、初婚の高学歴、高収入の男性は、これまで女性との恋愛した経験がほとんどなく、女性とはうまく会話できないタイプが多い。

 面白みはないけれど、真面目。そうした男性の良さに気づければいいのだが、バリキャリで恋もそれなりにしてきた女性たちは、こうした男性たちに魅力を感じない。

■下方婚したバリキャリの結末

 かつて入会面談に、外資系企業に勤めていて年収は3000万円超えという40歳の女性がいた。

 30代前半で結婚したが、当時の彼女の年収は2500万円、男性は年収が400万円程度だった。趣味を通じて出会ったのだが、優しい彼を好きになって結婚し、間もなく海外赴任になった。

 現地で働きながら、子どもを2人授かった。それからは夫が専業主夫をし、子どもたちの面倒を見ていた。そして、上の子が小学生、下の子が幼稚園児のときに帰国した。

 女性が働く、男性が主夫をするという形態のまま、日本での生活がスタートしたのだが、次第に夫の様子がおかしくなっていった。

 「名の通った私立幼稚園だったので、送り迎えにくるのは気位の高い母親ばかり。彼女たちの会話を聞いていると、夫のステータスの高さや住んでいる高級住宅の話など、さりげなく自慢話をひけらかしている。そんな母親たちを横目に娘の送り迎えをしているうちに、彼がどんどん卑屈になっていったんです」

 些細なことでけんかになると、「俺には発言権はないからな」「お前はすごいよ」「どうせ俺は食わせてもらっている立場だから」。そんな劣等感の塊のような言葉を吐くようになり、夫婦関係もギクシャクしていった。

 日本は、“男性が経済的にリードするべき”という伝統的な結婚観が根強い。海外ではうまくいっていた夫婦の形も、日本では、専業主夫をする男性を偏見の目で見る人たちも多い。

 男性が下方であると、周りの目によって自尊心が傷つき、劣等感を抱き、夫婦間のコミュニケーションに摩擦や軋轢が生まれることにつながる。

 「それで、昨年離婚しました。そこから元夫は職を探し出した。離婚してからも職が決まるまでは私の家に居候していたのですが、やっと決まったので、来月出ていくことになりました。だから、私も再婚することを決めたんです」

 彼女は、「専業主夫になってくれる男性を探したい」と言っていた。ただ結婚相談所のサイトでは、専業主夫になる男性を探すのは、難しいことを、筆者は告げた。

 「入会は考えます」と帰っていったが、その後の連絡はなかった。

■バリキャリ女性は結婚できないのか? 

 では、このような日本社会では、高学歴、高年収のバリキャリ女性は、結婚できないのだろうか? 

 これも、仲人の経験則からいえば、婚活を諦めずに続けていた女性は、振り幅の狭い下方婚、同等婚、上方婚のどれかで結婚できている。上方婚の場合は、再婚者で別れた妻側に子どもがいるケースが多い。

 前出のきよみも、現在年収900万円の男性と真剣交際中だ。

 結婚は10人とするわけではない。1人とすればいいので、お見合いをしていくうちに、確率は少ないが、条件も内面も好きになれる相手と出会えるチャンスは訪れる。

 上方婚、下方婚が話題にのぼる昨今だが、婚活に大切なのは、鋼のメンタルを持ち、諦めずに続けることなのだ。

東洋経済オンライン

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最終更新:11/21(木) 7:32

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