都心5区は「年収1500万」ないとキツい…中古マンション暴騰の末路《楽待新聞》

10/11 19:00 配信

不動産投資の楽待

マンション価格の高騰が続いているが、ここへきて中古マンションに関しては下落の兆しが見えるようになってきた。

1年前に比べると依然として高い上昇率を示しているが、3カ月前と比べるとマイナスとなったエリアが出てきた。それも、これまで高い上昇率を示してきた都心部で下がり始めているようだ。

さて、この先はどうなるのだろうか。今回は中古マンションの価格推移について、データをもとに確認していこう。

■中古マンション上昇率は新築より高い

とにかく首都圏のマンション価格高騰の勢いには凄まじいものがある。図表1は首都圏の新築マンションの発売価格の平均の推移と、首都圏中古マンションの成約価格の推移を示している。

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民間調査機関である不動産経済研究所のデータによると、首都圏新築マンションの平均価格は2018年度には5927万円だったのが、2024年度は8135万円。6年間で37.3%上がったことになる。

東京23区だけに限ると、2018年度の7320万円が2024年度は1億1632万円と、6年間で58.9%も上がった計算だ。

新築マンションだけではない。公益財団法人の東日本不動産流通機構の調査では、首都圏の中古マンションの成約価格は2018年度には3354万円だったのが、2024年度は4939万円。6年間の上昇率は47.3%と、新築の上昇率を上回っている。

東京23区では2018年度は4162万円だったのに対して、2024年度は6804万円で、6年間の上昇率は63.5%だ。

新築は発売時の平均価格、中古は成約事例の平均価格であるため、厳密には単純に比較できないものの、傾向としては中古の上昇率が新築を上回っていると読み取れそうだ。

■都心マンションは10年で2.4倍以上に上昇

新築マンション価格が高くなり過ぎたため、そちらを諦めて割安感のある中古マンションを購入する人が増え、それが中古マンション価格を大きく押し上げているー。

そう言われているが、ここへきて中古マンション価格も上がり過ぎ、都心部などでは平均的な会社員の年収ではとても買えなくなりつつある。

マンション情報の「マンションレビュー」を運営するワンノブアカインドでは、毎月首都圏主要エリア別の中古マンション価格を調査している。

それによると、2025年7月の中古マンション70平米換算価格は首都圏全体の平均で5513万円だが、図表2にあるように都心5区は1億5532万円だった。

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10年前の2015年7月は6418万円だったため、10年間で2.4倍以上となっている。

何とも凄まじい上がり方だが、1年前の2024年7月は1億1087万円だったから、1年前に比べても4割以上上がっており、上昇の勢いが止まらないように見える。

■都心での購入には1500万円以上の年収が必要に

しかし、直近に目を向けると様相が異なるのだ。

ワンノブアカインドのデータでは、マンション価格の騰落率(上昇率、下落率)を、10年前、5年前、3年前、1年前、6カ月前、3カ月前と比較できるようになっている。

それを折れ線グラフにしたのが図表3だ。

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都心5区(千代田区、中央区、港区、新宿区、渋谷区)は1年前との騰落率は40.1%だったのが、6カ月前との騰落率は9.7%に縮小し、3カ月前との比較では、ついに-1.6%とマイナスになっている。直近では下落が始まっているわけだ。

何しろ70平米価格が1億5000万円台ともなれば、相当な年収がある高額所得者か、かなりの資産家などでないと買えないレベルだ。買えなくなる人が増えて、価格が下がるのも当然のことかもしれない。

1年前の1億1087万円であれば、仮に約1000万円の頭金で1億円の住宅ローンを、35年元利均等・ボーナス返済なし・金利2%で購入すると、毎月の返済額は33万1262円となる計算だ。

この場合、返済負担率(年収に占める年間の返済額の割合)を、銀行融資の上限35%とした場合の必要年収は約1136万円だった。

それが、2025年7月の平均価格1億5532万円のマンションを購入するのに、1億4000万円のローンを組むとすれば、毎月返済額は46万3767円で、必要年収は約1590万円に増える。

購入を諦める人が増えて、価格が下落に向かうのも仕方のないところだろう。

■23区でも城東エリアは1.1%の下落

都心に比べれば周辺エリアの価格帯は低くなるものの、それでも価格が上がり続けると、購入が難しくなる人たちが出てくる。

都心部のマンションだと、年収1000万円以上の人でないと購入は難しいが、都心以外の23区なら5000万円台から7000万円台の価格で購入できることも多い。

買い手としては年収1000万円以下の人たちが多くなるが、価格が高くなると買えなくなる人が増える事情は都心と変わらない。そのため、都心以外のエリアでも価格低下の気配が強まっている。

3カ月前との騰落率は、城北(文京区、豊島区、北区、荒川区、板橋区、足立区)は9.1%の上昇、城南(品川区、目黒区、大田区、世田谷区)は5.5%の上昇、城西(中野区、杉並区、練馬区)は1.6%の上昇だが、上昇率はそれまでに比べて小さくなっている。

しかも城東(台東区、墨田区、江東区、葛飾区、江戸川区)は-1.1%で下落となっている。

城東エリアは、豊洲などのタワーマンションの高騰により上昇が続いてきたが、それが曲がり角にきているのかもしれない。都心以外でも、下落エリアがみられるようになってきたわけだ。

また、首都圏の東京都以外の周辺3県でもじわじわと下落が始まろうとしているのかもしれない。

都心や23区に比べて価格帯が低い分、購入層の年収は低めになるので、価格上昇の影響を受けやすくなる。価格上昇で売れ行きが鈍れば、価格を引き下げないと買主が現れないようになるのだから、それも当然のことだろう。

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図表4にあるように、埼玉主要エリア(さいたま市、川口市)の3カ月前との騰落率は-3.1%で、神奈川県川崎市は-2.6%と、下落が始まっている。

千葉主要エリア(市川市、船橋市、浦安市)は+0.9%、神奈川県横浜市は0.0%の横ばいだが、1年前、6カ月前の騰落率よりかなり低くなっていて、早晩マイナスになりかねない情勢だ。

中古マンションの価格動向は曲がり角に近づきつつあるのかもしれない。

居住用にしろ、投資用にしろ、売り買いには慎重な判断が求められるようになりそうだ。

山下和之/楽待新聞編集部

不動産投資の楽待 編集部

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最終更新:10/11(土) 19:00

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