「黒か白のボールが1つ入っている箱に白いボールを1つ追加し、よく振ってボールを1つ取り出すと、白だった。箱に残ったボールの色を当てるには黒と白、どちらと答えるべきだろう?」
これは知識や計算はいっさい不要で、「考える力」のみが問われる「論理的思考問題」のひとつ。論理的思考問題はGoogle、Apple、Microsoftといった超一流企業の採用試験でも出題され、「スティーブ・ジョブズ超えの天才」と言われたあのピーター・ティールも自社の採用試験に取り入れた。これまでの正解が通用しない時代に必要な「思考力」を鍛える「最高の知的トレーニング」でもある。
そんな論理的思考問題の傑作を世界中から収集し、解説した書籍が『頭のいい人だけが解ける論理的思考問題』だ。「論理的思考」「批判思考」「水平思考」「俯瞰思考」「多面的思考」が身につく67の問題を紹介。「頭のいい人の思考回路」がわかり、読むだけで、一生モノの武器となる「地頭力」が鍛えられると話題。この記事では、本書より一部を抜粋・編集し、「確率の罠を見抜ける人」だけが解ける問題を紹介する。(構成/石井一穂)
● 「確率」の罠を見抜けるか?
目には見えない可能性を数値化して考えるのが「確率」ですが、これもまた思い込みの罠にはまりやすいので要注意です。
「白いボールの箱」 箱の中に、黒か白のボールが1つ入っている。
この箱の中に白いボールを1つ追加し、箱をよく振ってボールを1つ取り出したところ、白だった。
箱の中に残ったボールの色を当てるには、あなたはどちらの色を答えるべきだろうか?
イラスト:ハザマチヒロ
次のページで、正解と考え方をお伝えします。
<正解>
残っている確率が高い「白いボール」と答える
「どっちを答えても確率は同じなのでは?」と思ってしまうような問題です。
ですが、確率というものは見た目以上にやっかいです。
たいてい直感を裏切ってきます。
そう、今回のように。
● 五分五分に見えるけれど……?
“箱の中に、ボールが1つ入っている。
ボールの色は、黒か白のどちらかである。
この箱の中に白いボールを1つ追加して、箱をよく振ってボールを1つ取り出したところ、白だった。”
……ということは、
「中に残っているのは白か黒のボール」
「ならば箱の中のボールが白い確率は50%」
ふつうに考えると、そうなります。
ですが、答えは違います。
結論から言ってしまうと、箱の中にあるのは「白いボール」である確率の方が高いのです。
それも……
その確率は3分の2(約66%)です。
なぜ白いボールである確率がこんなに高いのでしょう?
● 論理的思考の極致「確率」
さて、本格的な解説に入る前に「確率」についておさらいしておきましょう。
それほど難しくはないので、「確率」と聞いた瞬間に拒否反応が出ている方も大丈夫!
ビジネスなどの日常(プレゼンとか稟議とか)でも使う機会は多いので、この機会に復習しておきましょう。
基本的に「何かが起こる確率」は、
(それが起こる場合の数) ÷ (起こりうるすべての場合の数)
で計算できます。
「場合の数ってなんだっけ?」という人は、「パターンの数」と読み換えてください。
サイコロを振って1の目が出る確率は「1÷6=1/6」みたいな話です。
さて、今回の問題に戻りましょう。
仮に箱の中に残っているのが「白いボール」である場合の確率を求めるなら、
最後に残っているボールが白である確率
=(最後に残っているボールが白であるパターンの数)÷(最後に残るボールの色のすべてのパターンの数)
で表されます。ここまでが前提です。
● 全体のパターンを確認してみる
では、問題文のシチュエーションから発生するパターンを洗い出してみます。
白を追加してそれを取り出したのだから、追加した白いボールは無視して、起こりうるパターンは、
・最後に残ったボールは白
・最後に残ったボールは黒
の2パターン……ではありません。
考慮すべき点があります。それは、取り出した白いボールが、
「最初から箱の中にあったもの」「追加したもの」のどちらだったのか。
これを考えないと、正しい確率に辿り着けません。
「最初から箱に入っていたボール」を「白1」あるいは「黒」
「追加した白いボール」を「白2」
として考えると、問題文のシチュエーションから発生するパターンは次のとおりです。
<パターンA>
・最初から箱に入っていたボール=白1
・追加したボール=白2
・取り出したボール=白1
▶箱に残ったボール=白2
<パターンB>
・最初から箱に入っていたボール=白1
・追加したボール=白2
・取り出したボール=白2
▶箱に残ったボール=白1
<パターンC>
・最初から箱に入っていたボール=黒
・追加したボール=白2
・取り出したボール=白2
▶箱に残ったボール=黒
ありえるパターンは3通りです。
パターンAの場合、最後に箱に残っているのは「白2」です。
パターンBの場合、最後に箱に残っているのは「白1」です。
つまり、可能性は3パターンあり、うち2パターンで「最後に白いボールが残っている」という結果になります。
よって、白いボールが残っている確率は2/3(約66%)になるので、白いボールと答えるのが賢い選択です。
● この問題をややこしくしているもの
わかりづらいかもしれませんので、補足します。
最初から箱に入っていたボールの色がどちらだったかは、白が50%、黒が50%。ここは動きません。
そこからボールを1つ追加したあとも、箱の中が「白1&白2」である確率は50%、「黒&白2」である確率は50%。ここも大丈夫です。
わかりにくいのは、次のステップ。
「箱の中からボールを1つ取り出したら白だった」という状況です。
箱の中のボールの色は2パターンしかありませんが、そこから白いボールを取り出すパターンは3つあるのです。
ボールの取り出し方における確率を出したいわけなので、必然的に「3パターンの取り出し方」を軸に考えないといけないのです。
● 「思考」のまとめ
確率は直感では理解しにくいため、なかなか難しいジャンルです。
ですが、事実を武器にできるため、論理的な説得材料としてビジネスで活用されるシーンは多く見受けられます。
ただし「なんか本当のことを言ってるっぽい」という納得度の高さゆえに、嘘やごまかしの手段としても成立します。
「集客成功率100%」のフタを開けてみたら、開催されたのは1回だけで、それがうまくいっただけだったり。
相手が吹聴している確率が「箱の中のボールの色」の話なのか「ボールの取り出し方」の話なのか、その違いには注意しておきたいところですね。
・「確率」は不確実な可能性を論理的に考える便利な手段
・結果と手段、どちらに目を向けるかで確率は変わるので注意
(本稿は、『頭のいい人だけが解ける論理的思考問題』から一部抜粋した内容です。)
野村裕之(のむら・ひろゆき)
都内上場企業のWebマーケター
論理的思考問題を紹介する国内有数のブログ「明日は未来だ!」運営者。ブログの最高月間PVは70万超。解説のわかりやすさに定評があり、多くの企業、教育機関、テレビ局などから「ブログの内容を使わせてほしい」と連絡を受ける。29歳までフリーター生活をしていたが、同ブログがきっかけとなり広告代理店に入社。論理的思考問題で培った思考力を駆使してWebマーケティングを展開し、1日のWeb広告収入として当時は前例のなかった粗利1,500万円を達成するなど活躍。3年間で個人利益1億円を上げた後、フリーランスとなり、企業のデジタル集客、市場分析、ターゲット設定、広告の制作や運用、セミナー主催など、マーケティング全般を支援する。2023年に現在の会社に入社。Webマーケティングに加えて新規事業開発にも携わりながら、成果を出している。本書が初の著書となる。
ダイヤモンド・オンライン
最終更新:4/17(水) 6:02
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