子どもは「やる気のない大人」をよく見ている…日本の若者が「自分自身に満足できない」根本原因

4/18 7:17 配信

プレジデントオンライン

自己肯定感が高い人になるにはどうすればいいか。心理カウンセラーの中島輝さんは「自己肯定感とは、自分に欠点があっても『わたしのままでOK』と信じられる気持ちのことだ。子どものほうが、自己肯定感は早く育ちやすいが、思春期を過ぎても、大人になっても遅すぎることはない」という――。

 ※本稿は、中島輝『何があっても「大丈夫。」と思える子に育つ 子どもの自己肯定感の教科書』(SBクリエイティブ)の一部を再編集したものです。

■「自分自身に満足している子」は半分以下

 いきなりですが、日本の子どもはいま、危機的な状況に陥っています。

 「自己肯定感ってそんなに大切なの?」

 と思われるお母さん、お父さんたちに、ちょっとショッキングなデータがあります。

 内閣府が行った調査によると、「自分自身に満足している」という項目に対して、「満足している」「どちらかといえば満足している」と答えた13歳から29歳の日本の若者の割合は45.8パーセントで、2人に1人にも満たない結果でした(平成26年版 子ども・若者白書 全体版)。

 この数字は、他の諸外国(韓国、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、スウェーデン)のなかで最下位でした。諸外国がいずれも71~86パーセントだったことを考えると、日本の若者たちはかなり自己肯定感が低い状況にあるということは明らかです。

■「うまくいくかわからないこと」にも消極的

 さらには、

 ・自分には長所がある
・うまくいくかわからないことにも意欲的にとり組む
・社会現象が変えられるかもしれない
・将来への展望

 といった項目も7カ国中最下位となっています。

 本当に深刻だと思ったのは、ここにある「うまくいくかわからないことにも意欲的にとり組む」について、「質問の意味がわからない」という子が、わたしが見ているお子さんのなかに多々見られたということ。つまり、「うまくいくかわからないなら、やらないほうがいい」と考えているお子さんがたくさんいたのです。

■自己肯定感の力があれば乗り越えられる

 それは子どもだけでなくまわりの大人たちも、コスパ(コストパーフォーマンス)やタイパ(タイムパフォーマンス)を重要視している行動のせいかもしれません。

 たとえばSNSで、「この洋服かわいいから買おう!」と画像を見てすぐ決めたり、「30秒で情報を知りたい」というとき、ちょうどいい動画があったりします。

 インターネットを使えば、早く、確実に、そして楽に、必要な情報だけをすぐに手に入れられますし、本人がコントロールできます。それ自体は悪くないことですし、むしろ効率的で生産的です。でも、これに慣れ、これだけに頼ってしまうと、都合よくいかないことがあったときに、すぐあきらめてしまいかねません。

 わたしたちの人生、仕事や人間関係など、そんなに都合よくうまくいかないことのほうが多いもの。そんな自分でコントロールできないことにぶち当たったとき、それでもがんばろうと思えたり、違う方法はないかなと考えたりすることができるのが、自己肯定感の力です。コスパやタイパ重視の現代だからこそ、自己肯定感を育(はぐく)むことが重要なのです。

■「自分はダメな人間」と思う高校生は3倍に

 日本の子どもたちの状況がいまいかに危機的か。別の調査では、日本の高校生は、「自分を価値ある人間だ」という自尊心をもっている割合が、アメリカ、中国、韓国の高校生に比べて半分以下でした。

 また「自分はダメな人間だと思うことがある」という項目に「よく当てはまる」と答えた高校生の割合は、1980年の調査では12.9パーセントでした。しかもその割合は増えつづけ、2011年の調査では36.0パーセントと3倍になっているのです〔(財)一ツ橋文芸教育振興会、(財)日本青少年研究所「高校生の生活意識と留学に関する調査報告書 2012年4月」〕。

 この結果から学ぶべきは、「いまの高校生には夢や希望がない」などと嘆くことではなく、わたしたち親世代がいままで教わってきたこと、やってきたことが本当に子どもたちにとってよかったのかどうか、もう一度冷静に考える必要があるということかもしれません。

■大人の“やる気のなさ”を子どもは見ている

 自己肯定感と社会状況はリンクしています。

 この本を手にとってくださっているお母さん、お父さんが子どもだった時代は、どんどん新しい商品が生まれ、いまよりは将来の夢や希望が見える時代だったと思います。それに比べて、いまは先の希望が見えにくい時代です。ものは豊かになり、便利になったものの、どこか疲れた大人の姿を、子どもはよく見ています。

 ちなみにアメリカのギャラップ社が2017年に発表した調査では、日本は「熱意あふれる社員」の割合が6パーセントで、調査対象139カ国中132位と、日本の大人たちの“やる気のなさ”は統計にも表れています。

 また、子どもに目を向けると、追い打ちをかけるようなデータですが、東京、北京、ソウルの3つの都市の小学校4~6年生約1500~2000名に「リーダーになりたいか」「勉強できる子になりたいか」「人気のある子になりたいか」「将来のためにがんばりたいか」という質問を投げかけたところ、いずれも東京の子どもが最下位という結果でした(日本青少年研究所2006年調べ)。

■日本の子どもは伸びしろだらけ

 この子たちが大人になるころには、職場で海外の人と一緒に仕事をすることが増えるでしょう。そのときに、「リーダーになりたい」「将来のためにがんばりたい」と答えた率が低い日本人は、どうなってしまうのでしょうか。

 さらには、ユニセフ「レポートカード16」が発表した「子どもの幸福度ランキング」では、日本の子どもの精神的幸福度は38カ国中37位。あらゆる統計でショッキングなデータが示されています。

 と、ここまで、一気にデータを紹介してしまいましたが、何がいいたいかというと、ここまで日本の子どもの数字が低いということは、逆に、希望しかないということです。むしろ伸びしろが大きいですから、気づいたわたしたち大人が、自己肯定感を上げていく工夫をはじめれば、子どもは大きく変わっていけるということです。

■自己肯定感のターニングポイントは9~12歳

 ここで紹介したもの以外にも、さまざまな機関が小中高生向けに「自分のことが好きですか」という調査をしています。どの調査でも、4~6割の子どもが「自分のことが嫌い」と答え、いずれも自己肯定感のターニングポイントが9~12歳くらいであると報告されています。このことから、親御さん自身がわが子の自己肯定感の低さに気がつくのも、9~12歳くらいが多いことが推測されます。

 自己肯定感はお子さんが小さいうちからこころがければ、どんどん育っていきます。もちろん、思春期を過ぎても、大人になっても遅すぎることはありません。ただ、子どものほうが、自己肯定感が早く育ちやすいことは事実です。

 お母さん、お父さんたちはわが子のことになるとどうしても感情が先走ってしまいがちですが、まずは冷静にこの数字を理解し、子どもと向き合っていきましょう。

■「自己肯定感が高い=ポジティブ」?

 自己肯定感という言葉は、ここ数年でかなり一般的になりました。

 子育て中のお母さん、お父さんからも「うちの子、自己肯定感が低いんです」というご相談を当たり前のようによく聞くようになりました。

 それにともなって自己肯定感について、誤解されることも多くなったと感じています。

 自己肯定感が高い子はいつでもポジティブで前向きで、自分のことが大好き。だから失敗しても気にしないし、悩んだりしない。

 そんなふうに思っていませんか。

 また、いつも前向きで元気な子を見たときに、「あの子は自己肯定感が高い」と思ったことがあるのではないでしょうか。

 一方で、いつももの静かで、じっくりものごとを考えるような子、目立たない子に対して、「あの子は自己肯定感が低い」と感じたこともあったかもしれません。

 自己肯定感が高いことと、ポジティブになることは、けっしてイコールではありません。

 陽気で明るくて目立つお子さんの自己肯定感が低いこともあれば、人見知りでおとなしくて目立たないお子さんの自己肯定感が高いこともあります。

■親がポジティブ信仰に陥ってはいけない

 「自己肯定感が高い子どもに育ってほしい」と思うとどうしても、ポジティブ信仰に陥ってしまいがちです。

 「ものごとはすべてポジティブに考えなくちゃダメ」
「嫌なことがあっても、すぐに前向きにとらえ直せる子にしなくちゃ」

 こんなふうに親御さん自身がポジティブ信仰でがんじがらめになってしまうと、お子さんも苦しくなってしまいます。

 なぜなら、ネガティブになることが許されないからです。

 どんな人でも落ち込むことってありますよね。大人でもそうなのですから、子どもならなおさらです。

 ものごとをポジティブにとらえることはとてもすばらしいことですが、それだけになってしまうと、親子関係にもひずみができてしまいます。

 そもそも人間の思考は、ネガティブが優位になっています。

 なぜなら、進化の過程で恐怖や不安が優先されなければ、命を奪われる危険があったからです。太古の昔、生きるか死ぬかの狩猟時代、いつ襲われるか、食料を奪われるかわかりません。つねに緊張と不安のなかで生きていたのです。

■ネガティブもひっくるめて、あなた自身

 アメリカで行われた心理学の研究によると、わたしたちは1日に6万回の思考を行っているそうです。その6万回の思考のうち約80パーセントの4万5000回は、身を守るためのネガティブな思考になることもわかっています。1日24時間、8時間の睡眠をとっているとして、3秒に2回は身を守るためにネガティブな考えがよぎっていることになります。つまり、放っておけば人間はネガティブなことを考えてしまう生きものなのです。

 そのこと自体は問題ではありません。ネガティブな思考は、失敗や危険から遠ざけ、身を守るために必要なことだからです。

 自己肯定感は、ネガティブを否定するものではありません。ネガティブもひっくるめて、あなた自身だからです。

 自己肯定感をわかりやすくいえば、

 「わたしはわたしのままでOK」
「わたしはわたしのままで幸せになる価値がある」

 と信じられる気もちのことです。

 ダメな部分があってもいいし、欠点があってもいい。自信マンマンじゃなくたっていい。いつもポジティブになれなくたっていいのです。

 どんな自分も丸ごと受け入れて、「これが自分なんだ」と認めて、自分自身にOKを出して生きよう、幸せになろう、とする源の感情こそが、自己肯定感なのです。



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中島 輝(なかしま・てる)
心理カウンセラー
自己肯定感アカデミー代表、トリエ代表。困難な家庭状況による複数の疾患に悩まされるなか、独学で学んだセラピー、カウンセリング、コーチングを10年以上実践し続ける。「奇跡の心理カウンセラー」と呼ばれメディア出演オファーも殺到。著書に『何があっても「大丈夫。」と思えるようになる自己肯定感の教科書』『書くだけで人生が変わる自己肯定感ノート』『自己肯定感diary 運命を変える日記』(すべてSBクリエイティブ)、『1分自己肯定感 一瞬でメンタルが強くなる33のメソッド』(マガジンハウス)、『習慣化は自己肯定感が10割』(学研プラス)などがある。
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最終更新:4/18(木) 7:17

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