焦点:勢い衰えない米株上昇、過熱の兆候も市場の大勢に逆らえず
Saqib Iqbal Ahmed
[ニューヨーク 9日 ロイター] - 米株価は高水準に達し過剰な投機の兆候も見られ、いつ調整があってもおかしくないと懸念されているにもかかわらず、年末に向けて上昇の勢いが衰える気配はほとんどない。
S&P500種指数は6日、終値で今年57回目の過去最高値を更新した。堅調な米経済、利下げ観測、トランプ次期大統領が公約した減税・規制緩和への期待を背景に、2024年は28%近く上昇している。
上昇の勢いは力強く、S&P500は13カ月以上、過去最高値から10%以上の下落を経験していない。これは過去3年近くで最長記録だ。BofAグローバル・リサーチによると、歴史的に10%以上の調整は平均して年に1回起きている。
インタラクティブ・ブローカーズのチーフストラテジスト、スティーブ・ソスニック氏は「勢いこそが市場を動かす要因だ。現在の市場は基本的に貨物列車のようなもので、誰も邪魔をしたくない」と語った。
力強い上昇傾向にある市場に対し逆張りするのは歴史的に見てリスクが高い。ロイターがLSEGのデータを分析したところ、S&P500は1928年以降、2年連続で20%以上の年間上昇率を記録したことが5回ある。いずれの場合もその後の3カ月でさらに上昇し、平均上昇率は6.3%だった。S&P500は昨年24.2%上昇した。
株式をオーバーウエートにしているというカーソン・グループのグローバルマクロストラテジスト、ソヌ・バルギーズ氏は「勢いは勢いを生む」と述べ、誰も市場の大勢に逆らうような取引はしたがらないと指摘した。
<過熱の兆しも>
一方で、一部の熱烈な強気派の間でも株価上昇は一服する時期に来ているとの見方が浮上している。
バンク・オブ・アメリカのマイケル・ハートネット氏は6日、S&P500の株価純資産倍率(PBR)は5.3倍で2000年3月のピークを上回っていると指摘し、25年第1・四半期に「オーバーシュート」のリスクがあると警告した。また、暗号資産(仮想通貨)ビットコインが先週、史上初めて10万ドルを突破するなど、より幅広い市場でのフロス(泡)の兆候にも言及した。
同社の来年のS&P500の目標は6666と、現在の水準より9%以上高い。
11月の米消費者信頼感指数によると、過去最高となる56.4%の消費者が今後12カ月で株価が上昇すると予想している。ヤルデニ・リサーチの創設者エド・ヤルデニ氏は、現時点では強気に傾き過ぎている可能性があるとする一方、短期的な株価下落は安値拾いのチャンスになるとの見方を示した。
RBCの米株式調査責任者ロリ・カルバジーナ氏は11月下旬に、投資家のポジションの集中と高いバリュエーションにより、S&P500が5─10%下落する恐れがあると警告した。
S&P500の予想株価収益率(PER)は現在、22.6倍と過去平均の15.77倍を上回っている。
しかし今のところ、こうした懸念が市場全体に波及している兆候はほとんど見られない。投資家の不安心理を示すシカゴ・オプション取引所(CBOE)のボラティリティー・インデックス(VIX)は、8月に市場が一時的に動揺した際に4年ぶりの高水準を記録した。しかし6日は12.75とほぼ5カ月ぶりの低水準となった。
経験則に基づくと、VIXは市場の落ち着きがしばらく続く可能性を示唆している。VIXが14を下回ると、中程度のボラティリティーを示す20を超えるには平均136営業日を要する。
12月は歴史的に株価が好調であることも投資家の信頼感を高めている可能性がある。
LPLファイナンシャルによると、S&P500は12月に平均約1.6%の上昇を記録している。月間ベースでは74%の確率で上昇しており、これは他の月と比べて最も高い。
もちろん、ある時点で市場が反転することは避けられない。その引き金となる可能性があるのは、米国の貿易相手国に高関税を課すというトランプ氏の脅しによって引き起こされるボラティリティーだ。
ストラテジストは、貿易戦争が本格化すれば、減税や規制緩和などの政策がもたらす影響が帳消しになる可能性があると警告している。
しかし、多くの投資家は当面は現状を維持することに満足しているようだ。
ファンドストラット・グローバル・アドバイザーズのテクニカル戦略責任者マーク・ニュートン氏は、短期的な「買われ過ぎ」の状態にあることは、売りに転じる十分な理由にはならないとし、「ここで売るのは難しい」と語った。
ロイター
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最終更新:12/10(火) 8:24