ケンタッキー、新アプリの「歴史的改悪」が占う未来コロナ禍以降、業績は順調だがDX面で「新たな課題」が

4/17 15:32 配信

東洋経済オンライン

■コロナ以降、順調に売上像のKFC

 JR四ツ谷駅のすぐ近く、四谷見附交差点のケンタッキー・フライド・チキン(以下、KFC)によく行く。和風チキンバーガーセットをよく注文する。昼頃は人で賑わっている。

 正直にいえば、コロナ禍以前はKFCをほとんど利用したことがなかった。ただ、コロナ禍になってから、「持ち帰りができ」かつ「店舗滞在時間が短い(感染リスクを考え長時間いたくない)」という条件からKFCを利用しだした。注文から完成までのオペレーションがすぐれている。コロナ禍は収束しつつあるが、店舗の利用習慣がついた。

 そこでKFC全店の売上高を前年比実績で見てみよう。

 ・2020年度:111.8%

 ・2021年度:106.6%

 ・2022年度:103.8%

 ・2023年度:110.5%

 上記のように順調に伸び続けているのがわかる。

 なお、全店であれば、新規出店の影響を受ける。そこでKFC既存店の売上高を前年比実績で見てみても、2020年度から2023年度まで、すべてプラスで推移している。

 コロナ禍でいえば、2023年5月に新型コロナは5類に格下げ指定された。しかし、それ以降、月度実績で見ても100%を上回っており、月によっては110%をも超えている。

 私は、さきほどコロナ禍によって来店の習慣がついた、と述べた。しかも、それはオペレーションの巧みさにあった、とも述べた。しかし、同社の強みを毀損するような“事件”が起きた。

■チームラボ「24年3月末まで提供」の意味深

 チームラボ(デジタルアートのイメージがあるが、システム開発と運用がメイン)が扱ったアプリを紹介するページ「ケンタッキーフライドチキン 公式モバイルアプリ、公式Webサイト(2024年3月末まで提供)」がある。ここに“(2024年3月末まで提供)”と追記されているのが面白い。

 同ページでは「公式モバイルアプリと公式Webサイトの更新方法を一元化し、フロントエンドからバックエンドまで、一貫した設計・管理・運用とデータ更新を双方で共通化することで、日々の運用負荷を軽減し、ユーザーに素早く情報を届けることを可能にしました」としたうえで、太字で「*2024年3月末まで提供。現行ver.(2024年4月以降)は弊社開発事例ではございません。」とした。

 ここでは、現在のアプリが悪いとは書いていないし、書く必要もないが、なにか含みがある。それも、4月から刷新されたアプリに不満が噴出していたためだ。

 なお、これはwebもそうだが、画面を確認すると画面上部から3本の赤いラインが下りてくる。ネットオーダーと書いているけれど、店内がない(ああ、そういうものなのか、と納得するしかない)。

 また支払いが難しく、個人情報やメールアドレスなどを入力せねばならない。

 これは原稿執筆時点の状況であり、アプリやwebは改修・改良されるかもしれない。

 ただKFCをよく利用する人間(私)からしても、「これは……」と感じるので、ライトユーザーは途中で注文をやめてしまう、頓挫してしまうケースもあるだろう。ライバル店舗は、かなりのUI(ユーザーインターフェース)がサクサク動くことでも知られる。

 ネットではかなりひどい言葉にあふれている。また、私が経験した事象以外のエラー、たとえばログインエラー等も生じているようだ。

 「2023年3月期 決算説明会資料」では、「KFCアプリ 2600万ダウンロード達成」との文字があり、「アプリとネットオーダーの連携」は同社としても重要施策のようだが、今回は紛れもない「改悪」になったと言ってよさそうだ。

 なお、これから書くのはKFCの話ではなく、一般論だ。これまでタッグを組んだシステムベンダー、アプリサプライヤーを変更するときには、さまざまな目論見がある。

 もちろん、コスト、デザイン、インターフェース、独創的なアイデア、保守や管理のやりやすさ……のようなものに加え、役員人事や組織の改変によって、ITベンダーを変更することで「新しさ」を出したい目論見もある。

 少なくとも、アプリの使いやすさは注文や訴求性に直結するので、KFCの操作性向上を望みたい。

■KFCの次なる課題

 なお、全社の業績としては2023年度も順調な向上を見込んでいる。前節で売上推移をあげたが、営業利益(前期比+57.4%)、経常利益(前期比+33.5%)ともに2桁%増加だ。

 これは2023年4月から2024年3月までを指すため、さきほど紹介したアプリの不具合は範囲に入っていない。そこで、さきほど説明したアプリの向上は繰り返さないが、その他にもいくつかの課題が待ち構えている。

 ・現時点でも日本ではまだ実質賃金がマイナスのまま続いている。これまでKFCは強気の値上げを重ねてきたものの、消費者は節約志向をむしろ強めている。このなかで消費者に訴求性を保ち続けることができるか

 ・原材料・エネルギーや食品の価格が読めない、あるいは高止まりのなかで、これ以上の価格転嫁ができるか。また地政学的なリスクによって物流の停滞やさらにコストの上昇がありえる。さらに昨今では国内で人手不足が続いている

 ・チキンフィレの特別商品やクリスマスなどハレの日へのご褒美としてこれまで需要を創出してきた。しかし、他のイベントも復活するなかで、どれだけ需要を創出し続けられるか

 もちろん、その他、健康志向の高まりのなかでファストフードチェーンとしてどのように対応していくか、などさまざまな課題を提示することはできるだろう。

 KFCは、コロナ禍以降のファストフード店の行方を占い、さらにDX(アプリによる顧客体験)をいかにオペレーションしていかねばならないかを象徴しているように思われるのだ。

東洋経済オンライン

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最終更新:4/17(水) 15:32

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