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恐怖のマンション“乗っ取り”制度「第三者管理方式」の導入が静かに進んでいる…!【マンション管理クライシス】

4/8 11:32 配信

マネー現代

(文 週刊現代) 「これはとんでもない制度ですよ。こんな制度がうちのマンションで導入されたら、不要な工事がどんどん行われ、ゆくゆくは管理費や修繕費も上がってしまうでしょう。しかし、住民は理事会負担がないと喜んでいるだけで、問題点には全く気付いません」

 こう言うのは、関東の築20年のマンションを所有する男性だ。管理会社からは理事会負担のない「第三者管理方式」の導入を提案されているという。なお、国交省では「第三者管理者方式」という呼称について、3月末に「外部管理者方式」に修正している。(*記事内容は編集部が保証するものではありません。実際のマンションの状況に合わせて考え方を参考にしてください)

「第三者管理方式」とは

 この方式の主流のケースでは、これまでマンション管理組合による自治活動の運営を行っていた理事会を廃止し、理事長が兼任していた管理の責任者である「管理者」ポストを、委託先の管理会社社員が“第三者”の立場となって務める、というものだ。

 以前から、所有者が居住しない投資用マンションやリゾートマンションでは採用されていたが、理事会負担や理事のなり手不足の解消のためとして、近年では、一般的なファミリータイプのマンションでも第三者管理方式への切り替えが徐々に進んでいる。すでに管理物件の3割に達する大手の独立系管理会社や、分譲時から第三者管理を採用する財閥系の新築マンションも増え始めている。

 別所マンション管理事務所の別所毅謙氏が言う。

 「今までの理事会方式では、管理会社が提案する小さな工事を実施したり、備品一つを購入する場合でも、理事会の承認が必要でした。第三者管理の方式は複数ありますが、主流の“理事会廃止型”は、理事会業務の負担回避を目的に、理事会自体を設置しないということなので、普段の運営に関しては住民側のチェック機能がありません。管理者ポストに就く管理会社は、実質的に独断で、顧客マンションの管理運営に対する意思決定ができるようになるのです」

 管理会社は、工事業者などからの事実上のキックバックで工事からも利益を得られる。つまり、管理組合のお金の使い道を自ら決めることで、「利益をあげ放題」ということになる。

 そう。『中立的な利害関係者以外』を意味する”第三者”を冠した制度名称だが、実際にはサービスの売り手側の利害関係者にあたる管理会社が、顧客である管理組合予算の執行権を掌握する管理方式になってしまっているのだ。制度名称と、中身は完全な真逆と言っていいだろう。

管理会社にとってはオイシすぎる制度

 この管理方式の問題点は、なんといっても「管理者」ポストを握った管理会社による、こうした利益相反の懸念だ。住宅ジャーナリストが言う。

 「管理会社の営利的目線でこの管理方式を見ると、管理会社が導入をしきりに働きかけてくる理由がわかります。

 第三者管理方式では、管理会社にとって目の上のタンコブだった理事会がなく、従来の管理組合が有していたマンション自治における“自己決定権”も同時に喪失してしまいます。そして、今まで管理業務の委託先に過ぎなかった管理会社が管理の権限を手中にし、お金の使い道と使い先を自由に決めることができる制度となる。こんなにオイシイ制度はないのです。

 導入理由は、管理組合の理事会負担軽減は5%くらいで、残りの95%は、管理会社が管理組合からより簡単に儲けやすくなるから、ということでしょう。

 大きい出費は組合員による総会での承認の必要がありますが、従来の理事会方式ですら組合員は管理に無関心でノーチェックの人が大半です。理事会が廃止されれば、理事経験者もいなくなり、管理への無関心さに拍車がかかるのは目に見えています。大規模修繕に関しては、修繕委員会の設置が国交省のガイドラインでも推奨されていますが、第三者管理のマンションで住民がそれを求めるかも疑問です」

導入してしまうと、後戻りができない制度

 しかも、この制度に移行してしまうと、のちに理事会方式に戻すことが絶望的に困難になる。管理組合の意思決定機関である理事会自体がすでにないため、制度変更を主導する存在がないためだ。

 前出の別所氏が解説する。

 「理事会がなくても、理屈上は問題提起している組合員が主導して臨時総会を開催し、管理会社側が務める管理者の解任と理事会復活の議案を可決できれば戻ります。

 ですが組合員による臨時総会は、一般的に開催すること自体の実務上のハードルが極めて高い。まず、全区分所有者の1/5の賛同者を集める必要があって、これが戸数の多い中規模以上のマンションだと難しい。

 ようやく臨時総会開催にこぎ着けても、臨時総会成立の定足数に足る、組合員の半数以上の招集通知を管理会社側の管理者に請求することになりますが、当然、管理会社側が務める管理者が自分がクビになる臨時総会の招集に協力する訳がない。

 そうなると自力で過半数を集める必要があり、これがさらに難しい。大規模マンションなどでは賃貸に出している所有者も多く、不動産登記情報などを調べて住所を割り出して招集通知を発送する必要があります。もちろん、管理会社側の反発も予想されることから、現実には絶望的に困難といえます」

 もはや、第三者管理を一度導入すると後戻りはできず、管理組合の運営権は事実上、管理会社に”乗っ取られた”ようなものだ。

管理会社への権限集中に、国交省も危惧

 第三者管理の導入を提案する管理会社は、理事会負担の回避を大義名分に、管理組合の運営を差配できる「管理者権限」が欲しいだけなのか。

 国交省の公表資料「第三者管理者方式の各論点に関する検討」では、以下のように重大な懸念を示している。

 「現在、理事会がない第三者管理者方式における管理組合の運営については、管理組合の運営方法や管理者の担う業務の範囲に関する標準管理規約や指針となるガイドラインがないため、管理業者が独自に検討した案に基づく管理規約で定められたルールにより行われており、管理者に権限が集中しているケースが見られる」

第三者管理方式が導入されると、一体、どうなってしまうのか。前出の別所氏がいう。

 「新築時からの第三者管理のマンションは、維持費が元から高額な設定です。ただ、この制度はまだ歴史が浅く、管理組合の反発を考慮してなのか、第三者管理に切り替えた管理組合でも、管理費や修繕積立金が露骨に値上げされた例は目立っていません。

 しかし、途中からの値上げは難しくても、物価高などを口実に、管理員の勤務日を減らしたり、清掃の頻度を減らしたりといった、サービスカットによる『ステルス値上げ』は時間をかけて進んでいく可能性が高い。そもそも、第三者管理方式は解約自体の手続きが非常に難しく、契約更新が安泰の管理会社にとっては、努力してサービスの質を高める必要性がありません。

 住民間のトラブル解決や、意見、要望など、管理会社にとって収益になりにくい課題についても、積極的な対応は期待できないでしょう。また、新築マンションの場合では、アフターサービスで不具合を10年間は無償で直すことができますが、第三者管理の場合、売主の子会社の管理会社の管理者が、管理組合の立場で親会社に権利を請求できるのかも疑問です。しかも管理者ポストを管理会社サイドが務めるので、管理組合の通帳も印鑑も管理会社が保管することとなり、これは厳密にはマンション適正化法に触れる可能性もある」

住民の意見はおざなりに

 前出の別所氏がつづける。

 「また、総会の場はあくまで、管理会社側の管理者が上程した議案に賛否を投じるだけで、提案ができません。意見や要望を伝えることくらいはできますが、それを管理者が取り合ってくれる担保がないのです。

 例えば工事費が高いと文句を言っても、『物価高だし、監事が問題視していない』など、もっともらしい理由をつければ、住民の要望は簡単に拒絶されるか、握り潰されてしまい、その事実も管理組合で問題として共有される仕組みもありません」

 こうした不満はどんどん溜まっていくだろう。それでも第三者管理方式の物件が良いのか、よく考えるべきだ。

 マンション管理に詳しい弁護士が言う。

 「第三者管理方式は、あくまで理事会負担の軽減が目的であるべきで、これ自体は悪い制度ではありません。問題は管理会社が自社に都合よく、不適切な利益相反的な取引ができてしまうことが良くない。やはり、ガイドラインではなく、強制力のあるマンション適正化法で、禁止事項を明確にしておくことが望ましいと思います」

 国交省は近くガイドラインの改訂版を公開する見通しだ。

 つづく記事『“高かろう悪かろう”のマンション「第三者管理方式」! “毒薬条項”で一度、契約したら最後、解約もできず泥沼化へ』では、深刻なこの問題について、さらに詳しくお伝えします。

マネー現代

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最終更新:4/12(金) 16:21

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