「ラグビーは最高だ!」 ゴールドパンツがまぶしい90代のラガーマン 勉強欠かさず「衰えない向上心」が常識を超える
40歳以上のラグビークラブ「不惑倶楽部」の最高齢メンバー永山隆一さんは92歳。ラガーマンでも医師でもあり、かつては東芝府中ラグビー部のチームドクターとしてその躍進を支えた人物です。なぜ永山さんが90代になっても気力に満ちた生活を送っているのか。永山さんの著書『92歳のラガーマン ノーサイドの日まで』より一部を抜粋し、ご紹介します。
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■90代で医者のアルバイト
70代以降は自宅に開業した永山クリニックの院長と、ラグビーのマッチドクター(試合会場で対応する医師)を担当していました。
永山クリニックは時間を絞って開業しており、実はクリニックとマッチドクター以外にも、医者として出かけていく先がありました。健康診断など短期で医師を必要としている場や、知人の病院の手伝いなどで、声がかかるとアルバイトとして出向いていました。
行き倒れになると危険だし、まわりにも迷惑だからと、子どもたちにはたびたび止められていたのですが、頼まれるとやはり断りづらく、90歳ごろまで続けていました。
アルバイト先には初めて降りる駅もあり、ヤフーの乗り換え案内でルートを調べ、電車で出かけます。リュックを背負い、速足で移動すれば、またそれもラグビーのためのトレーニングになるのです。
そんなときの帰りには、スーパーでちょっとした食材や総菜を見つくろい、夕飯のときに楽しみました。スーパーでは新しい食材や新商品などがちょくちょく登場するので、いろいろ試してみるのも楽しいものです。
【写真】90代でのラグビーを可能にする体づくりの様子など(4枚)
ついでにお伝えすると、お酒とたばこはやめたほうがいいですよ。ぼくは若いときから両方とも縁がなく、それが健康や長寿につながった面もあるかもしれません。不惑倶楽部にはどちらも好きな人がいるので、一概に否定できないのですが……。
ほかに、医者としてというか、医学の勉強のために各種の講習会へ出かけていました。不整脈、脳、神経、遺伝子治療など、新しい情報はどんどん出てくるので、勉強することは尽きません。妻との結婚前の約束「常に勉強をし続ける」というのを、図らずも実践できています。
忙しい中でも、もちろん第一優先はラグビー。
練習も試合もできるだけ参加し、仲間との懇親会も楽しんでいます。
そういえば、2019年にラグビーワールドカップが初めて日本で開催されたとき、試合も見に行きました。日本チームの決勝トーナメント進出にも感動しました。長生きしてよかったです。
ところが、楽しむ以外にもオマケがついてきました。ワールドカップの3カ月前に、ロイター通信の記者が不惑倶楽部の練習の取材に来たのです。世界でもっとも古いシニアラグビーチームが日本にあるということを聞きつけて、高齢ラガーマンの撮影に来たと言います。
取材記者のインタビューを受けると「まだ働いているんですか?」とますます驚かれる。86歳でラグビーをして、医師として仕事もしている、そんな人間がこの世にいるとは思っていなかったのでしょう。自宅にまで取材に来られました。
ただただラグビーが好きで続けてきただけの人間です。でも、長くやってきたというだけで、このように注目してもらえたことはうれしいことでした。また、これでラグビーや不惑倶楽部に少しは恩返しができたのではないか、と思ったのです。
しかし、そのあと残念ながら世の中はコロナ禍に突入。思ったようにラグビーも楽しめない日々になりました。練習や試合もこれまで通りとはいきませんでした。
長女の気持ち
90歳ごろにもなっての医者のアルバイトは、ほんとにやめてほしかったですね。知らない場所で行き倒れになったら、どなたにご迷惑をかけてしまうかわかりません。その対策のため、区で配布している「高齢者見守りキーホルダー」をカバンにつけてもらいました。
勉強会については、永山クリニックの診療に関係なさそうな内容も多く、ムダじゃない? と聞くと、知識として知っていて悪くないと。遺伝子治療の講習を受けてきた日には、どんな話だったか電話で聞くと、ちゃんと内容を理解しており、感心しました。
■家の中でもトレーニングを欠かさない
新型コロナウイルス感染症の大流行は、ラグビー界にも大きな影響を与えました。試合が中止になったり、無観客になったり。
それでも不惑倶楽部はさまざまなルールを徹底して、少しでも多く練習や試合ができるよう努めてくれました。ぼくも体がなまってはいけないと、自宅でのトレーニングを続けていました。
朝は6時ごろ起き、6時25分から必ずNHKの「テレビ体操」。朝食をすませたあとは、家の中でエクササイズ。柔軟体操やストレッチをしたり、ダンベルを使って首や肩の筋肉を鍛えたり。首を痛めないよう、ソファに首を押しつけるようにしてダンベルを持ち上げるスタイルです。
子どもたちには「階段が危ないから、寝室を1階に移したほうがいいんじゃないか」と言われるのですが、階段の上り下りもぼくにとってはトレーニングの一つなのです。階段を上ることで、足の筋肉を鍛えることができます。
■トレーニングの失敗も
ぼくの場合、ほとんどが自己流のトレーニングです。でも素人考えには失敗もつきものですから、注意が必要です。
数年前、足を鍛えるためのトレーニングに夢中になった時期があります。「片足を上げて地面をたたくように下ろす」というものです。筋トレに効果があるとともに、骨に刺激を与えて骨粗しょう症の予防にもなると聞き、「これはいい」とトレーニングに加えました。
そこまではいいのですが、「もっと強く足を打ちつけると、もっと鍛えられるんじゃないか」と考え、駅の階段などを上るときにも、足をガンガンと力いっぱい地面に打ちつけていたのです。
若い人ならそれでもよかったのかもしれませんが、ぼくの場合はダメでした。ひざに血がたまってしまい、歩くことができなくなってしまったのです。大反省です。
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長男の気持ち
父のひざが腫れあがったのは、たしか89歳の誕生日の夜だったと思います。実家に泊まっていた姉から連絡があり、(ぼくは整形外科医なので)とりあえず冷やすよう伝えました。
翌朝、注射器持参で出向き、父のひざにたまった血を抜きました。昔のスポーツマンは、どうしても「体を痛めつければ痛めつけるほど、強くなれる」と思い込んでいるふしがあります。でもそれで、ひざを壊してしまったら意味がありません。年齢的にも寝たきりになってしまうかもしれない。
無事にひざが元に戻ったので、ひと安心でしたが。そのときも、腫れあがったひざの父にまず聞かれたのは、「いつからラグビーができる?」でした。
父は常に「もっと向上したい」と思っているのです。以前、いっしょにラグビーの試合をテレビで見ていたら、「このプレーはこうやるのか?」とこまかく質問されました。
思わず「おやじ、もしかしてまだうまくなろうと思っているの?」と聞いたら、「当たり前じゃないか!」と強く言われました。父はもう90歳近かったと思います。わが父ながら、その衰えない向上心には驚くばかりです。
東洋経済オンライン
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最終更新:1/13(月) 13:02