この時期は新年度の予算を立てたり、2月中旬から始まる確定申告の準備を進めたりと、お金と向き合う機会が多い季節です。2026年度の年金額は物価高騰の影響を受けて4年連続のプラス改定となりましたが、実際の生活費を賄うには十分なのでしょうか。
65歳以上で無職となった夫婦世帯は、毎月どのくらいの生活費で暮らしているのでしょうか。
現役時代と比べて収入の柱が「年金」中心に変わるため、家計の実態が気になる人も多いはずです。
総務省の家計調査などを見ると、無職夫婦世帯の生活費や家計収支、貯蓄額、受け取っている年金月額には一定の傾向が見られます。
本記事では、公的データをもとに65歳以上の無職夫婦世帯における1カ月の生活費の平均額をはじめ、収入と支出の内訳、貯蓄の状況までを分かりやすく解説します。
※編集部注:外部配信先ではハイパーリンクや図表などの画像を全部閲覧できない場合があります。その際はLIMO内でご確認ください。
【65歳以上・無職夫婦世帯】老後の1か月の「家計収支」はどうなっている?
総務省統計局の「家計調査報告〔家計収支編〕2024年(令和6年)平均結果の概要」によれば、一般的な65歳以上の無職夫婦世帯では、月あたりおよそ3万4000円の収支不足が生じていることが分かります。
毎月の実収入:25万2818円
■うち社会保障給付(主に年金):22万5182円
毎月の支出:28万6877円
■うち消費支出:25万6521円
・食料:7万6352円
・住居:1万6432円
・光熱・水道:2万1919円
・家具・家事用品:1万2265円
・被服及び履物:5590円
・保健医療:1万8383円
・交通・通信:2万7768円
・教育:0円
・教養娯楽:2万5377円
・その他の消費支出:5万2433円うち諸雑費:2万2125円うち交際費:2万3888円うち仕送り金:1040円
■うち非消費支出:3万356円
・直接税:1万1162円
・社会保険料:1万9171円
毎月の家計収支
・3万4058円の赤字
65歳以上の無職夫婦世帯における平均的な家計をみると、月々の収入は25万2818円で、そのうち約9割にあたる22万5182円を公的年金などの社会保障給付が占めています。
一方、支出総額は28万6877円となっており、内訳は消費支出(生活費)が25万6521円、非消費支出(税金や社会保険料など)が3万356円です。
その結果、家計は毎月3万4058円の赤字となり、貯蓄を取り崩しながら生活している世帯も少なくないことがうかがえます。
ただし、この調査では住居費が1万6432円と比較的低く計上されています。
これは、高齢者世帯では持ち家比率が高いことが背景にあります。
そのため、賃貸住宅に居住している場合は、家賃分を上乗せしたうえで家計を考える必要があるでしょう。
また、ここで示されている支出には介護費用は含まれていません。
介護サービスの利用が始まれば、平均的な家計収支よりも赤字がさらに拡大する可能性があります。
なお、この家計収支には見落とされやすい項目も含まれているため、次章で詳しく確認していきます。
【意外と多い】老後の家計を圧迫する「見えにくい支出」
前章で触れたとおり、65歳以上の無職夫婦世帯における月々の支出は平均28万6877円で、このうち消費支出は25万6521円となっています。
支出項目を詳しく見ると、食料費や光熱・水道費といった生活に欠かせない費用に加え、「教養娯楽費」や「その他の消費支出」といった把握しづらい項目が目立ちます。
教養娯楽費は月2万5377円と、趣味や余暇活動に関する支出が一定の割合を占めています。
さらに、その他の消費支出は5万2433円に達しており、その内訳には交際費2万3888円、諸雑費2万2125円が含まれています。
これらの支出は個々では大きく感じにくいものの、積み重なることで家計への負担となりやすく、管理が難しい点が特徴です。
老後の家計を安定させるためには、こうした見えにくい支出にも意識を向け、全体の支出構造を把握しておくことが欠かせないでしょう。
次章では、世帯主が65歳以上の二人以上世帯における貯蓄額について見ていきます。
【65歳以上の世帯主がいる二人以上世帯】シニアの「平均貯蓄額」はどのくらい?
総務省の「家計調査報告(貯蓄・負債編)2024年(令和6年)平均結果の概要(二人以上の世帯)」をもとに、世帯主が65歳以上の二人以上世帯における貯蓄状況を見ていきましょう。
●【65歳以上の世帯主がいる二人以上世帯】貯蓄現在高の「平均値・中央値」をチェック
・平均値:2509万円
・貯蓄保有世帯の中央値:1658万円
世帯主が65歳以上の二人以上世帯における貯蓄額は、平均で2509万円となっています。
一方、実態に近いとされる「貯蓄保有世帯の中央値」を見ると、平均値より851万円低い1658万円です。
老後に必要な貯蓄額は各世帯の状況によって異なりますが、賃貸住宅で家賃の支払いが続く場合や、介護費用や医療費といった支出が生じる場合には、中央値である1658万円では不足する可能性も考えられます。
続いて、貯蓄額の分布状況について確認していきます。
●【65歳以上の世帯主がいる二人以上世帯】貯蓄200万円未満はどのくらいいる?
続いて、先述のグラフから、貯蓄額ゾーンごとの世帯割合も見ていきます。
・100万円未満:8.1%
・100万円~200万円未満:3.6%
・200万円~300万円未満:3.1%
・300万円~400万円未満:3.6%
・400万円~500万円未満:3.3%
・500万円~600万円未満:3.3%
・600万円~700万円未満:2.9%
・700万円~800万円未満:2.8%
・800万円~900万円未満:3.3%
・900万円~1000万円未満:2.5%
・1000万円~1200万円未満:4.8%
・1200万円~1400万円未満:4.6%
・1400万円~1600万円未満:5.1%
・1600万円~1800万円未満:3.3%
・1800万円~2000万円未満:3.3%
・2000万円~2500万円未満:7.4%
・2500万円~3000万円未満:5.8%
・3000万円~4000万円未満:9.4%
・4000万円~:20.0%
貯蓄額が2000万円を上回る世帯は全体の42.6%を占めており、そのうち3000万円以上を保有する世帯も29.4%にのぼります。
その一方で、貯蓄額が200万円未満にとどまる世帯も11.7%存在しており、世帯ごとの資産状況には大きな開きがあることが分かります。
続いて、「65歳以上で仕事をリタイアしている二人以上世帯」の貯蓄状況について確認していきましょう。
【65歳以上の無職二人以上世帯】リタイア世帯が保有する「平均貯蓄額」はどのくらい?
本章では、世帯主が65歳以上の「無職世帯」に対象を絞り、貯蓄額の推移や資産構成の内訳を確認していきます。
●【65歳以上の無職二人以上世帯】シニアの「平均貯蓄額」の推移を見る
・2019年:2218万円
・2020年:2292万円
・2021年:2342万円
・2022年:2359万円
・2023年:2504万円
・2024年:2560万円
世帯主が65歳以上の無職二人以上世帯における貯蓄額は、2019年から2020年にかけて2200万円台で推移していました。
その後、2021年には2300万円台に増加し、2023年には2500万円を超え、2024年にはさらに2560万円に達していることが分かります。
2024年時点の資産内訳を見ると、最も割合が大きいのは定期性預貯金の859万円(33.6%)で、次いで普通預金などの通貨性預貯金が801万円(31.3%)、株式や投資信託などの有価証券が501万円(19.6%)となっています。
続いて、貯蓄と並び老後の生活を支える重要な収入源である「公的年金」が、平均でどの程度受給されているのかを見ていきましょう。
【最新データで分かる】国民年金・厚生年金の「平均月額」はいくら?
実際に受け取る年金額は、現役時代の加入状況や収入の水準などによって大きく差があります。
ここでは、厚生労働省年金局が公表した「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとに、全体および男女別の平均年金月額を確認していきましょう。
60歳から90歳以上までの全受給権者における平均的な年金月額は、次のとおりです。
国民年金(老齢基礎年金)
・〈全体〉平均年金月額:5万9310円
・〈男性〉平均年金月額:6万1595円
・〈女性〉平均年金月額:5万7582円
厚生年金+国民年金
・〈全体〉平均年金月額:15万289円
・〈男性〉平均年金月額:16万9967円
・〈女性〉平均年金月額:11万1413円
※国民年金の金額を含む
国民年金のみを受給している場合、月々の年金額は概ね5万~6万円台にとどまっています。
一方、国民年金に加えて厚生年金も受給しているケースでは、平均的な月額は男性が16万円台、女性が11万円台となっており、男女間でおよそ5万円の差が見られます。
老後の「平均」を知り、自分の状況に当てはめて考えることが重要
本記事では、公的データをもとに65歳以上の無職夫婦世帯における1カ月の生活費の平均額をはじめ、収入と支出の内訳、貯蓄の状況まで解説していきました。
65歳以上の無職夫婦世帯の家計を見ると、年金を主な収入源としながら、毎月約3万4000円の赤字が生じているのが実情です。
平均的な貯蓄額は2000万円超ある一方で、資産状況には大きなばらつきがあり、生活意識も「苦しい」と感じている世帯が半数を超えています。
また、見えにくい支出や住居費、将来の医療・介護費用によって家計は変動しやすくなります。
大切なのは、こうした公的データを目安として把握したうえで、自身の住居形態や貯蓄額、年金額に照らし合わせ、早めに老後の家計を見直していくことだといえるでしょう。
参考資料
・総務省統計局「家計調査報告(貯蓄・負債編)-2024年(令和6年)平均結果-(二人以上の世帯)」
・総務省統計局「家計調査報告(貯蓄・負債編)2024年(令和6年)平均結果の概要(二人以上の世帯)」
・厚生労働省年金局「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
・総務省統計局「家計調査報告〔家計収支編〕2024年(令和6年)平均結果の概要」
・厚生労働省「2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況」
・厚生労働省「2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況」用語の説明
川勝 隆登
最終更新:2/5(木) 16:10