「トランプ関税」による世界の株価下落は終わった、次はいよいよ「トランプ減税で世界株高」の番だ

4/28 7:32 配信

東洋経済オンライン

前回の「関税戦争『終結』を先読み、日本株の反撃が始まる」(4月14日配信)でも指摘したように、日経平均株価は2024年8月5日と2025年4月7日の「見事な2点底」を形成した。

■日本株に「大きな援軍」が出現した

 その後も日経平均は順調に値を伸ばし、4月11日時点で-6.7%もあった25日移動平均からの下方乖離率は、前週末4月25日時点では逆に+2.22%の上方乖離と、大きく景色を変えている。

 もちろん、まだ75日移動平均線が位置する3万7335円、200日移動平均線の3万8089円と、突破しなければならない関門が複数存在しており、これらの株価に近づけば「やれやれ売り」という実弾が飛んでくるところだが、「大きな援軍」が出現した。それは、3月後半からの急落、「トランプ関税問題の本家」であるアメリカ株の底入れだ。

 例えば多くのグローバルファンドのベンチマークになっているS&P500種指数は、急落の底と言える4月7日の終値5062ポイントから同月9日には終値5456ポイントまで戻った。しかし、ドナルド・トランプ大統領の「二転三転発言」の不安は消えず、同月21日には再び5158ポイントまで下げた。

 それが、トランプ大統領のマーケットフレンドリーな発言への変化で、同25日には5525ポイントと、9日の戻り高値を抜いた。これで7日の1番底、21日の2番底が完成し、テクニカル面では、典型的な底入れの形となった。

 また、ナスダック総合指数も、ほぼまったく同じチャートの形で底入れを完成している。NYダウ工業株30種平均だけは戻り高値更新に若干足りず、底入れ完成とは言えないが、トランプ関税のせめぎ合いの勝敗の見えない中で、株式相場としては「混乱は終わった」と言えるのではないか。

■外国人買い越しが証明、円高も「悪材料」とまでは言えず

 世界のベンチマークであるS&P500種指数だけでなく、ハイテク系の銘柄構成比率が似ており、日経平均にいちばん近い指数と言われるナスダック総合指数が底入れをした可能性があることは、日経平均にとって大きな材料だ。

 また、日経平均も今回の「トランプ関税急落相場」で、3月26日の3万8027円から4月7日の3万1136円まで下げたが、その下げの半値戻り水準である3万4581円すでに超えており、有名な「半値戻しは全値戻し」と言われる相場格言の実現が期待されている。

 株価への期待値とも言える、日経平均の予想PER(株価収益率)は、3月26日の15.51倍が4月7日には12.58倍まで低下したが、期待値の天井を15.5倍と考えたとしても、25日現在のPERは14.54倍まで戻し、上値指向も高まっている。

 
さらに需給面も後押し、日本株の水準に大きな影響力を持つ外国人投資家も、直近の財務省ベース(4月13〜19日)では7056億円(その前の週は1兆0449億円)、東京証券取引所ベース(4月14〜18日)でも1503億円(同1582億円)の連続買い越しとなっている。ドル円を中心とした為替も不安定だが、グローバルファンドは、通貨が弱い国には投資しない。円高は必ずしも日本にとって悪材料ではないようだ。

 その一方では、米中2大国の対立は、中国からインドへの資金移動となって、インド株を押し上げている。代表的な指標であるSENSEX指数は、昨年9月26日に史上最高の8万5836ポイントを付けたが、人気先行の咎めか、今年3月4日には7万2989ポイントまで下げていた。しかし、再び資金が入りはじめ、8万ポイントを回復した。また、世界的な景気減速が言われる中で、欧州も4月9日に底を付けた気配だ。

 株価のテクニカル的アプローチはこの辺にして、ここからは、トランプ大統領の次の一手を考えてみたい。トランプ大統領は、大統領専用機の中で、記者団に上乗せ関税に関して聞かれ、「再度延長する可能性は低い」と言明した。

 退路を断ち、この90日のディール期間中に、各国を個別撃破し、自分流の数字を積み上げて関税問題を成功裏に終了させようとする腹づもりだろうが、果たして、来年11月の中間選挙に勝つだけの評価を得られるだろうか。

 トランプ大統領が、選挙当選前から唱えていた「所得税率の引き下げ」「控除額の拡大」「中小企業支援強化」「キャピタルゲイン税の見直し」等の一連の減税政策は、いまのところ、まったくと言っていいほど表面化していない。

 唯一というべきか、直近ではジェローム・パウエルFRB(連邦準備制度理事会)議長に利下げ圧力をかけたが、失敗した。とすると、今後は、やはり減税政策で支持率の上昇を目指すのではないか。こうした減税政策は、日本においても夏の参議院選挙を踏まえた与野党のせめぎ合いと同次元の問題で、日米ともに株高の材料だ。

■台頭する建設株、銀行株の再人気化も

 筆者は、デフレ脱却からソフトインフレに進む日本の株式市場の柱は「銀行と建設」とかねてから唱えて来た。このうち、建設については、日本株が2023年以降大きく上昇した割には人気の盛り上がりはなかった。しかし、今年4月に入り、大成建設は年初来高値を更新し、清水建設も業績のサプライズ上方修正で先週急騰するなど、動きが変わって来た。もちろん、筆者が強く推している大林組なども、長期上昇後の調整安は終わったとみる。

 また、トランプ関税の影響による景気減速懸念で調整に入っていた銀行株も、金融庁の新たな運用指針で、2026年にも始まる「企業価値担保権」によって、資金が今後動きやすくなることが考えられ、再び人気化に向かうとみる。

 これについては、筆者だけの印象かもしれないが、平成バブルはゴルフ会員権が銀行担保と認定されたところから始まったことを思い出す。ハイテク技術もゴルフ会員権も「銀行担保」と考えた場合は同一のものだ。「アメリカ一国主義」で、今は世界の自由貿易が崩壊する不安の中にあるが、やはりインフレからバブルへの流れもしっかりみて行きたい。

(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)

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最終更新:4/28(月) 7:32

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