箱根や熱海も「消滅可能性」、若年女性人口の減少が止まらぬ744自治体《楽待新聞》

6/5 11:00 配信

不動産投資の楽待

民間の有識者らで構成される「人口戦略会議」は2024年4月24日、全国の4割に当たる744の自治体で人口減少が深刻化し、将来的に「消滅の可能性がある」との分析結果を発表した。

自分が住んでいる自治体が該当している人は、心中穏やかでないかもしれない。本記事では、消滅可能性があるとされた自治体の一覧や、その対策を推進している自治体を紹介する。

■20代から30代の女性が2050年までに「半減」

発表によれば、2050年までの約30年間で、20代から30代の女性人口が半数以下になる自治体は全体の4割にあたる744自治体にのぼる。

20代から30代の女性が「減っていく」ということは、将来的に子供を産み育てる存在が減少することを意味する。それは結果的に地域の人口減少につながり、さらには「消滅の可能性」にもつながる、というわけだ。

一方、今のところ消滅可能性自治体に該当しておらず、人口流入も多いものの、将来的に人口が減少する可能性があるとされる「ブラックホール型」の自治体も存在するという。

出生率が低く、他の地域からの流入で人口が増えている自治体はこのように呼ばれ、例えば東京の新宿区や文京区、台東区など16の区がこれに該当する。

ブラックホールのように人を飲み込む一方で、出生率が低く子供が増えないため、長期的には人口が減少する自治体だ。このような自治体では出生率を向上させる対策に力を入れなければならない。

なお、人口移動がないと仮定した場合にも、減少率が20%未満にとどまる「自立持続可能性型」の自治体は65あり、100年後も若年女性が多く残るとされている。

消滅の可能性がある都市を地域別にみていくと、東北地方が最も多く、165の自治体が該当する。

次に多いのは北海道で、179市町村のうち約65%に当たる117市町村が消滅の可能性があるとされ、衝撃が走った。歌志内市、当別町が特に深刻な状況である。

消滅可能性自治体のなかでも、特に深刻な状況とされている自治体の一覧は以下の通りである。

(外部配信先では図表、グラフなどの画像を全て閲覧できない場合があります。その際は楽待新聞内でお読みください)

15の県で、消滅する可能性があるとされる市町村が存在する。これらの地域は人口の移動の有無にかかわらず、 減少率が50%以上の自治体だ。

千葉県銚子市もそのうちの1つ。銚子市は2014年の「消滅可能性都市」リスト(日本創成会議)にも入っていた。越川信一市長は「25~34歳女性の減少が止まらず、未婚率が他の自治体と比べて高い」と危機感を持っている。

■若い女性が減少している都市ランキング

若い女性が少ない地域では、子供の数が増える見込みはない。子供を産む中心の年代とされる20~39歳までの若い女性が減少するとされている都市のランキングは以下の通りだ。2020~2050年までの人口移動を考慮した人口増減率を出している(▲はマイナス)。

(外部配信先では図表、グラフなどの画像を全て閲覧できない場合があります。その際は楽待新聞内でお読みください)

1位は群馬県南牧村で、88.0%の減少率だ。以降、青森県外ヶ浜町(87.5%)、北海道歌志内町(86.7%)と続いている。

群馬県南牧村は高齢化日本一の村であり、3人に2人が高齢者だ。現在、南牧村では移住で若い人たちを呼び込もうとさまざまな取り組みを行っている。

■女性にやさしい街づくりを推進する自治体

女性や子供、高齢者が住みやすい街をつくることで、消滅するリスクを低減する試みもある。以下では、そうした女性にやさしい街づくりをしている自治体をいくつか紹介しよう。

1.東京都豊島区 誰もが子育てしやすい街づくりを推進

東京都豊島区は2014年、日本創生会議で「消滅可能性都市」であると発表された。これをきっかけに同区は、「子どもと女性にやさしい街づくり」に取り組んでいる。

その努力が実ってか、「日経xwoman」と日本経済新聞社が実施した「自治体の子育て支援制度に関する調査」において、2022年版「共働き子育てしやすい街ランキング」で総合1位に選ばれた。

出産前から、女性一人ひとりのライフプラン形成を支援するなど、子供を育てやすい街にすることに注力している。

2020年4月には待機児童ゼロを達成。としま区民センターには「パパママ☆すぽっと」を設置するなど、若い世代が子育てを楽しみながらお出かけできるようなサポートを実施している。

女性だけでなく、子供や高齢者、障害者、外国人などすべての人が住みやすく、働きやすい街を目指している自治体である。

2.愛知県豊橋市 とよはしハーモニープラン 2023-2026

愛知県内でも7市町村が「消滅可能性自治体」として認定され、自治体の存続が危ぶまれている。減少率が最も高いのは設楽町で減少率が69.2%だった。

豊橋市では、若い女性の人口減少率が30.2%となっていることからも、「とよはしハーモニープラン 2023-2026」を策定。このプランでは、さまざまな困難を抱える⼥性に対する⽀援にも取り組むとしている。

プランの基本目標は、「あらゆる分野での男⼥共同参画の促進」「男⼥が働きやすい環境づくり」「健康の保持と安心できる生活環境の整備」の3つ。

男女が働きやすい環境づくりでは、女性のスキルアップへをサポートし、希望する就業形態での就職を応援。子育て・介護サポートを充実させるなどして、女性がワーク・ライフ・バランスを実現できる働きやすい環境整備を推進している。

3.宮城県大衡村 子育て支援策を強化

宮城県でも19市町が消滅可能性自治体に該当した。大衡村(おおひらむら)は「消滅可能性自治体」から脱却し、「自立持続可能性自治体」に入った数少ない自治体のひとつである。減少率15.2%で、宮城県では最も少ない地域である。県庁所在地である仙台市でさえも、県内で5番目に減少率が低い25.6%だ。

大衡村では10年前、「消滅可能性自治体」と指摘されたことをきっかけに、若い世代向けに子育て支援などを強化している。

例えば、出産時や入学時の祝い金、オムツや粉ミルクなどの購入に使えるクーポン券の配付、子育てなどの悩みにボランティアが対応するチーム「むらっこ」の立ち上げ、最大150万円の住宅購入補助、などだ。

企業誘致にも成功し、村には多くの企業が工場を建設し、半導体工場の建設も予定されている。大衡村の小川ひろみ村長は、女性ならではの目線を活かして、メディアに対し、「今後も女性から選ばれるようなまちづくりをしていきたい」と話している。



少子高齢化の波は高まる一方であり、地方では多くの自治体が存続の危機に瀕している。

特に若い女性の減少率が高いと出生率が下がるため、消滅可能性自治体 として指摘された自治体では、「女性が住みたくなるやさしい街」を形成することが必要だ。

宮城県大衡村のように、消滅可能性自治体から自立持続可能性自治体に進化する自治体も存在するため、各自治体は女性が子育てしやすい街づくりを実現することが重要な課題である。

矢口ミカ/楽待新聞編集部

不動産投資の楽待

関連ニュース

最終更新:6/5(水) 11:00

不動産投資の楽待

最近見た銘柄

ヘッドラインニュース

マーケット指標

株式ランキング