「若者の結婚離れ」は大ウソ!未婚男女の8割超が「いずれ結婚するつもり」なのにできないワケ

4/20 18:02 配信

ダイヤモンド・オンライン

 生涯未婚率の上昇への対策は日本における喫緊課題の一つだ。結婚することに否定的な意見が一部であるものの、8割の男女は「できたらしたい」と考えている。日本の未婚社会の実態とは。※本稿は、『パラサイト難婚社会』(朝日新書、朝日新聞出版)の一部を抜粋・編集したものです。

● 経済的観点から見ると 結婚のメリットは高くない

 「未婚」と一口に言ってもその状況は様々です。「おひとりさま」になるのか、「実家同居」になるのか、または「パラサイト・シングル」になるのか「引きこもり」になるのか、十人十色の現実がそこには存在します。

 ただし、「経済的自立」と「精神的自立」という分岐が最も無視できない要因となるのは、共通して言えることでしょう。

 既婚と未婚の善し悪しを比べているのではありません。手垢がついた表現になりますが、「独身貴族」という言葉もあります。正直、現代日本で「今を豊かに生きる」ためには、「しっかり稼いで自分ひとりで消費する」のが、一番贅沢に過ごせると言えなくもないのです。

 仮に年収500万円を稼ぐ男性がいたとして、それをひとりで消費できる独身貴族生活と、「妻と子ども2人」を養い、4人家族で消費する生活とでは、当然前者の方が「経済的」には豊かに生活できます。

 住みたいエリアに住み、食べたいものを食べ、着たいものを着て、趣味も娯楽も我慢せず、なおかつ貯蓄もできるでしょう。

 でも同じ500万円で家族4人が暮らすとなれば、家族のために購入したマンションや戸建て住宅のローンを払い続け、4人分の食費と光熱費を捻出し、保険に加入し、高額化する教育費にお金をかけ続ける毎日では、自分の好きな服や趣味に回すお金はごくわずかになるでしょうし、貯蓄や投資などの余裕はほとんどないかもしれません。

 つまり、単に経済的観点から見れば、「結婚のメリット」は少しも高くないのです。そして、育った子が自分の面倒を見てくれるどころか、成人後もパラサイトされて生活の面倒を見続けるリスクと隣り合わせです。

 女性の場合はどうでしょう。仮に年収500万円を稼ぐ女性がいた場合、男性とはまた少し事情が異なってきます。相手も同程度に稼ぐ男性と結婚すれば、年収はシンプルに2倍になり、いわゆるパワーカップル家庭として「経済的」にも「結婚のメリット」はあるかもしれません。ただ、子どもを持つとなると、男性とはまた別の問題が生じてきます。

 日本企業の大部分はいまだに、「働く男性+専業主婦の妻」という大前提で職場環境を維持しています。「女性活躍」「ジェンダー平等」といくら口では言ったとしても、日本の企業戦士たち(既婚男性)が毎日深夜まで働き長期のバカンスも取らずに出世を目指せるのは、家で家事全般をこなし、育児を担ってくれる伴侶の存在があるからなのです。

● 日本人が陥っている根本問題 「結婚のメリットって何?」

 しかし、同じことを女性が目指したらどうなるでしょう。つまり朝から晩まで時間を気にせず働き、残業も厭わず、休日出勤もして、会社への貢献と、昇進と、自らの成長を全力で目指し続けたとしたら。

 特に、課長クラスの「中間管理職」の状況はたいへんです。収入はそれほど増えないのに上に気を使い、部下に突き上げられ、休む暇もありません。日本でも、ワークライフバランスや育児休業などが言われていますが、それも、平社員まで。日本で女性管理職の割合が少ないのも、この中間管理職を会社が「働かせ放題」だからではないでしょうか。

 現在の日本社会で、女性がキャリアの仕事と同時に数人の子育てをすることは不可能ではないかもしれませんが、相当の覚悟と労力とコストがかかってくるはずです。

 男性が自分に代わって専業主夫をしてくれたり、完全に家事育児を折半できたり、子育てを頼める父母が近くにいたり、あるいは香港やシンガポールのように家事代行サービスをフルタイムでやってくれるメイドさんがいれば話は変わってきますが、仕事にフルコミットしてキャリアを目指しながらの「結婚・育児」の選択は、今の日本社会では至難の業であることは否めません。

 「出世」か「子育て」か。残念ながら、多くの日本女性は、いまだこのレベルで足踏みをしているのが現状です。

 では、非正規雇用者など低所得層はどうでしょう。年収250万円程度の男性が家庭を持ち、専業主婦と複数の子どもを養う。これも、現実的には厳しいケースです。

 実際、妻も働きダブルインカムにならないことには、子どもを持つという選択ができない。となると、それ以前に「結婚」自体のハードルも高いままです。

 「結婚するメリットって何だっけ?」

 結局のところ、こうした根本的な問いに、現代日本人は陥っているのではないでしょうか。

 「結婚=イエのため」のものとして、有無を言わさず「万人がするもの」という縛りが解けた近代社会において、昭和時代までは「結婚=生活を豊かにするため」というメリットが存在しました。

 人口が増加して多くの家族がぎりぎりの生活をしていた時代には、実家に「パラサイト」したり、「引きこもり」をしたりもできません。どれほど収入が低くても「ひとりよりは結婚して二人」の方が、男女共により安定した生活を望めたのです。

● 未婚男女8割は「いずれ結婚するつもり」 それでもできない理由とは

 しかしながら今、「結婚しなくても、頼れる実家がある」若者にとって、「結婚」のメリットとは何でしょう。しかも「今貧しければ、将来も貧しいまま」が容易に想像できる社会で、どうして「結婚」をあえて望むでしょうか。

 しかも、家庭を新たに築くことが将来にわたりさらに経済的なリスクを負うことが予想される今日の社会においては、ますます「結婚」のインセンティブは低下していくのです。

 すると、こんな声も聞こえてきそうです。

 「結婚したくない人々に、『結婚』をむりやり勧めなくてもいいんじゃない?」

 たとえ「未婚」だとしても、その状態に不満足なわけでもないんだろう、と。

 ですが、ここに次のようなデータが存在するのです。

 厚生労働省の国立社会保障・人口問題研究所が、18~34歳の未婚者に実施した調査です。それによると、男性未婚者の81.4%、女性未婚者の84.3%が、「いずれ結婚するつもり」と答えています(2021年実施)。

 今なお「独身でいる理由」の最多は、「適当な相手にまだ巡り合わないから」(24~34歳の男女)であり、次いで多い理由が「結婚する必要性を感じないから」「結婚資金が足りないから」なのです。

 つまり若年「未婚」者の8割以上が、実際は「結婚」を望んでいるのです。彼らは自ら未婚を選んでいるわけではなく、結果的に未婚になってしまっているのです。この母数には既婚者が含まれていないので、結婚した同年齢の人数を加えれば、今でも9割以上の若者が結婚を望んだということになります。

 「適当な相手」が見つかり、「結婚する必要性を実感」すれば、そして「結婚資金・生活資金が十分にあれば」、彼らはいつでも「結婚したい」のです。

 でも、その状況がなかなか手に入らない。現在同居中の父母が面倒を見てくれる便利で安心な生活を放棄してでも「結婚したい」と思える相手に巡り合わないし、結婚してやっていけると確信が持てるような経済的基盤も得られない。だから結婚しない。それが、日本の「未婚社会」の実態です。

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最終更新:4/20(土) 18:02

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