四季折々の景色を楽しめる日本有数の高級リゾート地、軽井沢。
清涼感に包まれる「白糸の滝」や、旧軽井沢銀座通りでの食べ歩きなど、多くの観光客で賑わいを見せている。観光地としてだけでなく、別荘地としても人気の場所だ。
そんな軽井沢の玄関口、軽井沢駅の北口側に新たな複合施設が誕生する。この場所は廃線遊休地を活用したもので、新たに商業施設などを設けることで地域の活性化を目指している。
今回の記事では、本再開発が軽井沢町にもたらす効果について考えていきたい。
■2026年春に新商業施設が開業予定
三菱地所は3月1日、「(仮称)軽井沢駅北口東側遊休地活用事業計画」の新築工事に着手した。
今回の事業計画地は、1997年の北陸新幹線開業により廃線となった旧信越本線の線路跡地を活用するもので、現在はしなの鉄道株式会社が所有している。
軽井沢駅から徒歩1分という立地の良さを生かし、地域社会との連携を進め、軽井沢だけでなく信州全体の活性化を目指すとしている。
約1.3ヘクタールの敷地に、計6棟の商業施設を整備する予定。建物は鉄骨造で、平屋建ておよび2階建て(一部3階建て)で、延床面積は約5400平米の規模だ。
主な用途としては、温浴施設や宿泊施設、飲食・物販店舗などとなるようだ。開業は2026年春を予定している。
■旧信越本線の線路跡地を活用
先述の通り、今回の事業では旧信越本線の線路跡地を活用している。
その敷地を三菱地所が賃借して、軽井沢駅自由通路直結の商業施設の開発に取り掛かっている。JR北陸新幹線・しなの鉄道「軽井沢」駅から徒歩1分という好立地だ。
旧信越本線は、1893年に横川(群馬県)と軽井沢(長野県)間に開通。
群馬県と長野県の境に位置する碓氷峠(うすいとうげ)は、水平距離9.2キロメートルに対して高低差は553メートルと、その急峻な地形で通行する人々を苦しめていた。
そのため、開通後は地域の輸送に欠かせないインフラに。
だが、赤字路線であったということもあり、1997年、長野(北陸)新幹線の開通により廃線。104年間の歴史に幕を閉じた。
遊休地となっていたこの線路跡地に複数の商業施設ができるとなれば、駅前に活気ある空間を創出できるはずだ。
すでに観光地として多くの人を集めている軽井沢だが、駅前に新たな観光スポットの誕生となり、開業後はより多くの人が訪れるようになるかもしれない。
■地域活性に注力している企業が参入
再開発を手がける三菱地所は、長野県のトップバンクである八十二銀行・三菱グループの金融機関との間で、長野県の地方創生に関する連携協定を締結している。
今回の再開発でも、軽井沢駅前という立地特性を踏まえ、事業のコンセプトである「信州らしさの発信」や「好奇心をくすぐるゲートウェイ」を実現できるように詳細な計画を検討中とのことだ。
温浴施設・宿泊施設、飲食・物販店舗を運営するのは、株式会社アクアイグニスおよびカルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社だ。
アクアイグニスは、2012年三重県菰野町湯の山で複合温泉リゾート施設を手がけるなど、「癒し」と「食」を通じた地域活性を行っている。
カルチュア・コンビニエンス・クラブは、2018年に軽井沢書店を開業し、町の書店として軽井沢町民から親しまれている存在だ。インターナショナルスクールや、ワインショップなどの運営も行っている。
これまでも地域の活性化に力を入れてきた両社の事業展開によって、軽井沢町にも活気を呼び込むことが期待されている。
■地域住民には開発反対の声も
一方で、地域住民の中には再開発に反対する人もいるという。
1つ目は、碓氷峠の鉄道事業復活が永久にできなくなる点。現在、信越本線は廃線になっているが、沿線住民の中には碓氷峠の鉄道復活に期待する声が多い。
今回の再開発で跡地を活用するため、将来的に信越本線が復活する可能性が限りなく低くなってしまうと考えられているのだ。
2つ目に、上記に付随して群馬県など旧信越本線沿線地域との交流が不可能になる点だ。長野県・群馬県の県境を挟む峠の鉄道事業が廃止されていると、各県の住民の交流が活発にならないという声も挙がっている。
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旧信越本線の線路跡地で行われている今回の再開発は、軽井沢駅から徒歩1分という抜群の立地を生かすものだ。
商業施設の開業も2年後とそう遠くなく、軽井沢エリアのさらなる賑わいが予見されれば、地域経済や不動産市況にも変化が出てくるかもしれない。
ただ、旧信越本線の沿線住民の線路跡地に対する思い入れは深いものがある。
工事は着手されているが、長野だけでなく群馬の沿線住民からも計画を不服とする声が上がっているため、企業が住民に対して今後も丁寧な説明をする必要が出てくるかもしれない。
今後、新しい複合施設がもたらす経済効果に注目していきたい。
矢口ミカ/楽待新聞編集部
不動産投資の楽待
最終更新:4/17(水) 19:00
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