米大統領選、投資家が迫られる戦略見直し-ハリス氏に勢いで景色一変

8/28 0:00 配信

Bloomberg

(ブルームバーグ): 波乱含みの米大統領選を巡り、ウォール街は見通しの変更を急いでいる。バイデン大統領の選挙戦撤退までは共和党候補トランプ前大統領が優位とみられていたが、民主党候補となったハリス副大統領の支持率上昇が続いているからだ。

「短期的に最も起こり得るシナリオはボラティリティーの上昇だろう」と、ザックス・インベストメント・マネジメントのクライアントポートフォリオマネジャー、ブライアン・マルベリー氏は指摘。「それによってプライシングにアノマリーが生じ、アクティブ運用者にとってはリスクバランス再調整の機会が訪れるかもしれない」と述べた。

先週の民主党全国大会後にリアル・クリア・ポリティクスが集計した世論調査の平均支持率は、ハリスが48.4%で、トランプ氏の46.9%を上回った。バイデン氏が撤退を表明した段階での支持率はハリスが46.2%、トランプが48.1%だった。

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こうした変化は市場の動きにも表れている。両党の政策などに絡んだ取引戦略を追跡するゴールドマン・サックス・グループの指数では、バイデン氏の選挙戦撤退直後から、民主党バスケットが共和党バスケットを上回るパフォーマンスを見せている。

大手金融機関では、UBSグループの資産運用部門が先週、連邦議会がねじれた状態でハリス氏が勝利するのが最も可能性の高いシナリオだと予想。ゴールドマン・サックスは選挙関連のトレーディング戦略の構成銘柄を入れ替え、共和党が大勝する確率が低くなったとの見方を反映させた。JPモルガン・チェースは今月に入り、米大統領選でどちらが勝つかは五分五分だと指摘。以前はトランプ氏勝利の可能性の方が高いとみていた。

トランプ銘柄失速

「トランプトレード」の崩壊は幅広い指数ではなく、セクターや個別銘柄から見て取れる。

その一例が民間刑務所運営会社だ。GEOグループの株価は、バイデン氏が散々な結果に終わった6月27日の第1回討論会前は13.50ドル前後で取引されていたが、7月中旬には18ドルまで急伸。現在は13.50ドル付近に戻っている。コアシビックの株価は討論会前には12ドル前後だったが、7月半ばに15ドル超に上昇し、足元では13.50ドル前後まで下げている。

銃メーカーでも同様の動きが見られる。スターム・ルガーとスミス&ウェッソン・ブランズの株価は討論会後に急伸し、7月を通じて上昇基調にあったが、その後はほぼ元の水準まで後退した。

タトル・キャピタル・マネジメントのマシュー・タトル最高経営責任者(CEO)は「大統領は市場全体に影響を与えることはないが、セクターには影響を与える」と語った。

ハリストレード

一方、ハリス氏勝利の場合には、再生可能エネルギー企業やそれに関連するメーカー、電気自動車(EV)メーカーや電力会社など、幅広い業界にとって追い風が吹くと予想される。

しかし、ハリストレードでより大きな要素として意識されているのは、むしろトランプ氏が中国との貿易戦争に火をつけるリスクだ。そのためアジア経済に大きく依存する業界の株価は、民主党が政権を維持すれば安心感から上昇する可能性がある。全体として、ハリス氏の勝利は政策の混乱が最小限にとどまることを意味し、通常は投資家に歓迎される結果となるだろう。

選挙が熱を帯びること自体が追い風となる銘柄もある。パイパー・サンドラーのアナリスト、マット・ファレル氏は、今年の政治広告費は予想を上回る規模になると予想。同氏はオンライン広告会社のトレードデスクが「明らかな受益者」になるとの見方を示した。

有権者は気まぐれ

現時点では、米大統領選を巡る取引で態度を決めるのは時期尚早というのが結論かもしれない。季節が夏から秋に移る中、有権者の気分も変わり得るからだ。そのためストラテジストは投資家に対し、ポジションを固めるのではなく待つよう助言している。確かにハリス氏の支持率は急上昇しているが、最終的にはかなりの接戦が見込まれ、市場関係者の多くは「写真判定」になるとみている。

ウェルス・アライアンスの社長兼マネジングディレクター、エリック・ディトン氏は「われわれは選挙を巡るトレードはしない。あまりに接戦だからだ」とし、「バイデン氏は世論調査で差を付けられていたので、相手がバイデン氏だった時はトランプトレードには大いに意味があった。しかし今はハリス氏が勢いを増しており、再び予想が難しくなっている」と語った。

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原題:Wobbling Trump Trades, Harris Rise Have Street Rethinking Bets(抜粋)

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最終更新:8/28(水) 0:00

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