人間の足は50年で「耐用年数」を過ぎるという、50代になったら要注意「足を守る」正しい歩き方
靴底のすり減り方で、歩き方のクセがわかる。そんな話があるように、歩き方は人によって個性があります。もしもあなたが「間違った歩き方」をしていたら早めに改善した方がいいでしょう。なぜなら、健康を損なう恐れがあるからです。正しい歩き方について、足の専門医として4万足(2万人)の足を治療してきた菊池守医師がレクチャーします。
※本稿は、菊池守医師の著書『1日3000歩 歩きたいのに歩けない人のための すごい足踏み』から、一部を抜粋・再編集してお届けします。
■「歩き方」のせいで頻発する健康トラブル
あなたは歩く時に、前を向いて、堂々と背筋を伸ばして歩けていますか。
「あまり自信がない」という方も多いのではないでしょうか。
猫背気味だったり、歩く時にひざが曲がっていたり、腰が曲がって少し前かがみになっていたりする方はけっこういます。皆さんの中にも、心当たりのある方がいませんか?
単なる見栄えの問題であれば、さほど心配はいりません。しかし、その歩き方が、あなたの健康を害する可能性があるのであれば、放置しない方がいいでしょう。
歩くことは、健康を維持したり増進したりするうえで、とても有効な手段になります。ただし“歩きさえすれば、どのように歩いても体にいい”というわけではありません。実は、普段の歩き方がよくないと、体に悪影響を及ぼすことがあるからです。
例えば、筋肉の量がそんなに多くない人が大股で歩くと、せっかく歩いても筋力が落ちてしまう可能性があります。なぜなら、ふくらはぎの筋肉(腓腹筋)を過度に使うことによって、むしろ早く疲れてしまうからです。
反対に、前傾姿勢の小股でトボトボ歩くと、足の前側だけに体重の負荷が過剰にかかり、その部分にトラブルが発生する引き金になってしまいます。やみくもに歩けば、健康効果が高まるわけではなく、人によっては8000歩以上歩くとかえって関節を傷めたりするなど、逆効果になるケースもあります。
こうして、足に負担がかかり、歩くことがしんどくなるとさらに健康に悪影響があります。歩かないことは、高血圧や認知症、糖尿病、うつ病などの症状を誘発する可能性があることが、研究の結果わかっています。運動不足になるだけでなく、筋力低下により血流が悪くなることも要因の1つです。
■「足の耐用年数」は50年しかない
では、どうすればいいのか。まず、最初にやるべきことは、あなたの足が今どのような状態にあるのか、把握することです。
足は、人体の他の部位よりも早く消耗する傾向があります。なぜなら、常に全身の体重を支え、過剰な負荷がかかっているからです。足には、歩くたびに体重の2~3倍の負荷がかかっています。にもかかわらず、多くの人はあまり足を大事にしていないように思えます。
ここで、ちょっとクイズを出してみましょう。あまり知られていませんが、人間の足には寿命があるのです。それは、次のうちどれでしょう。
A 50年
B 60年
C 70年
おわかりになりましたか。答えはなんと、Aの50年です。実は、人間の足は50年で耐用年数を過ぎると言われています。50年を過ぎると、足のどこかに少しずつ異常が出始め、60歳、70歳になるとだんだん歩くのが辛くなっていきます。
あなたは今、十分に歩けていますか? 「買い物くらいは自分で歩いて行っている」という方でも知らぬ間にだんだんと足が衰えて、運動量も落ちているかもしれません。下のチェックリストを試してみてください。あなたの現状がわかります。
※外部配信先では図表を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください
●チェックが1~2個
現時点では、大きな心配はありませんがチェックが1個でもあれば、将来に向けての危険信号かもしれません。
●チェックが3~4個
おそらく、歩行不足・運動不足を自覚されていることでしょう。
このままだと筋肉量が落ちて、ますます歩けなくなる悪循環に陥ります。
●チェックが5個以上
現状を放置しないことが大事です。無理は禁物ですが、正しい歩き方を身につけ、できる限り運動量と筋肉量を増やしましょう。
いかがでしたか。ご自身の足の状況がわかったら、無理のない範囲でできるだけ歩くことをおススメします。足に負担をかけないために大事なのが「正しい歩き方」です。
■歩くときに「これだけは意識したい3つのポイント」
普段の歩きを健康の維持・増進に役立てるには、「歩く量」だけでなく、「歩く質」にもぜひ目を向けてください。
歩く質を高めるためには、いくつかのポイントがあります。とはいえ、すべてのポイントを網羅した歩き方をここで説明したとしても、皆さんが実践できなければ意味がありません。そこで、歩くときに「これだけは意識したいポイント」を3つに絞り、以下にご紹介します。
①「歩幅」は大きすぎず小さすぎず
歩幅の目安は、身長によって変わります。専門的には、「身長(cm)×0.45」とか「身長(cm)-100」を目安にする説がありますが、いちいち計測したり計算したりするのは面倒でしょう。ですから、毎日普通に歩くときには、「無理に大きすぎず、極端に小さくならず」と意識すればOKです。
②「目線」を上げて姿勢よく
地面ばかり見て歩いていると、いつのまにか前傾姿勢になります。すると、体のさまざまな部位によけいな負荷がかかり、悪影響が連鎖してしまいます。まずは目線を起こし、しっかり前方を見るようにしてください。そしてできれば、自分の体が上からつり上げられているかのように、背筋を伸ばすようにしてください。
③「横断歩道を渡りきれる」ぐらいのスピードで
専門的には「秒速1メートル」が目安とされていますが、これを日常生活に当てはめるなら、「信号が青のうちに横断歩道を渡りきれる速度」となります。その速度をできるだけキープできるように意識しましょう。
中高年以降の方は、歩くときの姿勢が崩れているケースが少なくありません。非常によく見られるのは、ひざが曲がったままの歩行姿勢です。
これは、「加齢が原因でひざが曲がった」と思われがちですが、実は「腰が曲がった」前傾姿勢が原因なのです。前傾姿勢を正すために上半身を起こすと、体のメカニズムとしてひざが曲がるからです。ですから、特に高齢の方の場合では、「腰が曲がっている」または「ひざが曲がっている」というパターンで姿勢が崩れていくことが多いのです。
■足の筋肉の状態をよくできるのは運動だけ
年齢を重ねるにつれ、歩き方に変化が起こるのは珍しいことではありません。「腰が曲がり、ひざが曲がる」姿勢のまま歩こうとすると、両足が広がった姿勢になっていきます。すると、「歩幅が狭くなる」「歩隔(左右の足の間隔)が広がる」「つま先が外を向くようになる」という「歩き方の変化」につながるからです。
また、ギッコンバッタンと歩いてリズムが崩れている場合は、足などになんらかの障害があることが原因と考えられますから、その障害のケア・治療をする必要があると思われます。
また、多くの患者さんたちと接してきた中で、とてもよくある「やり取り」があります。さまざまな疾患や不調をよくするために、「歩くなど、運動をして、筋肉を元気にするようにしていきましょう」と私が言うと、少し不満げな顔をされる方がかなりいらっしゃるのです。
おそらく、そうした反応をされる方のほとんどは、すべてを薬で解決してほしいのでしょう。
しかし、ここではっきり言っておきます。運動による作用や効果は、薬で補えるものではありません。筋肉を増やしたり、筋力を向上させたりするには、やはり運動をするしかなく、運動の代わりに薬で補うことはできないのです。
■プロテインを「飲んだだけ」では筋肉は増えない
また、念のために言っておくと、サプリメントやプロテインを摂取しても、運動と同等の健康効果を得ることはできません。
筋肉を増やすには、筋肉を1度破壊してから修復・回復させる過程が必要です。プロテインは、その過程で飲むことによって、効率よく修復・回復=筋肉をつきやすくするというだけなので、プロテインを飲んだだけで筋肉が増えることは決してありません。
つまり、運動不足の人がただプロテインを飲んでも、なんの意味もないのです。それどころか、なにも知らずにプロテインを大量に飲めば、腎臓に余計な負荷をかけることになってしまいます。
筋肉を増やしたり、筋力を向上させたりする唯一の手段が運動であるなら、誰にとってもいちばん身近な「歩くこと」をできるだけ実践するべきです。
歩くのがおっくうだったり、なんらかの事情で歩くことができなかったりするならば、歩く代わりになる運動が必要です。有酸素運動であることはもちろん、歩くのと同じように足の筋肉を適度に刺激する運動が望ましいと考えています。私は、「すごい足踏み」という室内でできる運動を開発し、「歩くのがしんどい」というみなさまにおすすめしています。みなさまの、運動不足解消の一助になれば幸いです。
東洋経済オンライン
関連ニュース
- 5度克服した男性が語る「がん治療が残した障害」
- 日常生活が「いつの間にか筋トレ」になる方法7つ
- 1日1万歩は意味がない?10歳若返る歩き方のコツ
- ゆるいのにやせる!効率よく脂肪を燃やす走り方
- 226kmを走破「世界一超人の91歳」その驚く肉体
最終更新:11/13(水) 5:21